【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『手袋を買いに』のあらすじです。
読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『手袋を買いに』のあらすじ要約
- 考察と解釈
- 学校教育にまつわる情報
- 参考文献
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『手袋を買いに』のあらすじを簡単に短く要約
あらすじと作者紹介です。
物語:きつねの親子が抱く人間への思い
寒い冬が、きつねの親子の森にもやってきました。
そこで母さんぎつねは、夜になったら町まで行き、子ぎつねに毛糸の手袋を買ってあげようと考えます。
町のそばまで来たとき、母さんぎつねは、「片手を出して」と、子ぎつねの手を、可愛い人間の手に変えてみせました。
そして帽子屋を探すように言います。
「戸を叩くと、中から人間が少し戸を開けるからね。その開いた戸の隙間から、この人間の手を見せて、「この手にちょうどいい手袋をちょうだい」って言うんだよ」
さらに母さんぎつねは次のように言います。
「人間はね、相手がきつねだとわかると、手袋を売ってくれないんだよ。それどころか、捕まえて檻の中へ入れちゃうんだ。人間は本当に恐ろしいんだよ」と言いました。
「絶対にこっちの手を見せちゃいけないよ。人間の手のほうを見せるんだよ」と、母さんぎつねは子ぎつねの人間の手の方へお金を握らせました。
子ぎつねは町まで行き、目指していた帽子屋を見つけます。母さんぎつねに言われた通り、戸を叩きました。
でも、子ぎつねは間違ってきつねの手の方を、戸の隙間から見せてしまいました。
「この手にちょうどいい手袋を下さい」
帽子屋はきつねの手を見て、「(きつねがイタズラで来たんだな…)」と思ったので、「先にお金を下さい」と言いました。
しかし、子ぎつねが帽子屋に渡したお金は本物だったので、帽子屋は子ども用の手袋を子ぎつねの手に持たせてあげました。
母さんぎつねは、心配しながら子ぎつねの帰りを待っていました。
今か今かと震えながら待っていました。
そのため、子ぎつねが帰って来ると、泣きたいほど喜びました。
「母ちゃん、人間って、ちっとも恐くないよ。間違えて本当の手の方を見せちゃったんだ。でも、帽子屋さんは捕まえようとはしてこなかったもの。ちゃんと、こんなにいいあたたかい手袋をくれたんだよ」と帰り道に子ぎつねは言って、手袋のはまった両手を嬉しそうにパンパンとやってみせました。
心配して待っていた母さんぎつねは呆れましたが、「人間って本当はいいものなのかしら…本当はいいものなのかしら…」と、つぶやきました。
(おわり)
作者:新美南吉
作者:新美南吉(1913~1943年)
現在の愛知県半田市に生まれた後、児童文学作家として活躍。
本作:『手袋を買いに』はそんな作者が20歳のとき(1934年(昭和9年))の作品になりますが、発表されたのはそれよりも後のことでした。
南吉の二十歳のときの作品だが、発表されたのは、南吉の死後に刊行された童話集『牛をつないだ椿の木』の中である。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』100ページ 手袋を買いに より)
子供の頃から創作活動に意欲的で、半田中学校に在学していた14歳の頃から、童話や童謡、小説、詩、俳句、劇作などの創作をしていました。
十四歳の頃から、童話や童謡を盛んに創作し始めた。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)
なお、『ごんぎつね』は作者が18歳のときの作品になります。
その後、半田小学校の代用教員をしながら、復刊した児童雑誌:『赤い鳥』に投稿。童話4編、童謡23編が掲載されました。
上京して東京外国語学校を卒業してからは、安城高等女学校で教員などの仕事をしながら、数々の作品を発表し続けています。
作品:1,500を超える作品を残した
(前略)童話の他、童謡、小説、戯曲、詩、俳句、短歌など、千五百を超える作品を残した。
それは、創作を始めたのが早かったおかげといえよう。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)
その他の代表作の一部
当サイトでご紹介させていただいたその他の代表作の一覧です。
作風:善意溢れる詩情を讃えた作
庶民の子どもの生活や喜び、悲しみを、物語のなかにたくみにとけこませて、ユーモアのある独特な語りくちで、清潔で善意あふれる詩情をたたえた作である。
(『学習人物事典』332ページ より)
評価:1960年代に評価され始めた
生前にはあまりみとめられなかったが、1960年代にいたって評価されはじめ、『新美南吉全集』全8巻が出版された。
(『学習人物事典』332ページ より)
『手袋を買いに』のあらすじの考察と解釈
最後は『手袋を買いに』のあらすじの考察と解釈です。
物語への理解を深める参考にしていただければと思います。
きつねには”化ける(変身)”ことができるという言い伝えがある
きつねにまつわる伝承には、”化けること(変身)”があります。
作中では、母さんぎつねが子ぎつねの手を人間の手に変える場面がありますが、それはおそらくこの伝承が由来しているものと考えられます。
当時は帽子屋で手袋が売られていることが多かった
また当時、手袋は帽子屋で売られていることが多くあったとされています。
『手袋を買いに』と学校教育
最後は童話:『手袋を買いに』の学校教育にまつわる情報です。
小学3年生の教科書に掲載
まず本作は小学校3年生の教科書に掲載されたことがあるようです。
小学三年生の教科書に採録された。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』100ページ 手袋を買いに より)
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ちなみに本作と同じ作者で、なおかつ、きつねが登場する『ごんぎつね』は、小学校4年生の教科書に掲載されていたとのことでした。
『ごんぎつね』のあらすじを簡単に短く【読み聞かせOKの要約版】
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実際に行われた指導例
なお、実際の学校教育の現場では、本作は次のような2つのことに着目した指導が行われていたそうです。
<1>『場面ごとに登場人物の気持ちを考えながらの朗読』
その一つが『場面ごとに登場人物の気持ちを考えながら朗読する』です。
授業で行われた指導は、次のようなもの。
・場面の移り変わりに即して、登場人物の気持ちを考えながら朗読する。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』100ページ 手袋を買いに より)
本作では特に母さんぎつねの気持ちが大きく揺れ動いていました。
よってまずは母さんぎつねの気持ちを考え始めてみることがわかりやすいのかもしれません。
<2>『最後の場面についての感想を考える』
二つ目が、『最後の場面についての感想を考える』です。
授業で行われた指導は、次のようなもの。(中略)
・最後の場面について感想を書いたり、話し合ったりする。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』100ページ 手袋を買いに より)
本作の最後では、母さんぎつねが人間に対して持っていた考えを、疑い始めた様子が描かれていました。
そのため、個人的にはそのことを「素直にどう思ったか?」、「なぜ、そう考えたのか?」などと深堀りしていくと、本作への見方が深まるのでは…と思いました。
『手袋を買いに』のあらすじを簡単に短く要約&考察まとめ
童話:『手袋を買いに』は、きつねの親子の視点から、人間の優しさが垣間見える物語でした。