【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『不思議の国のアリス』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『不思議の国のアリス』のあらすじ要約
- 作者が伝えたいこと(教訓や解釈)の考察&解説
- 雑学
- 参考文献
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『不思議の国のアリス』あらすじ内容を簡単に短く要約
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:不思議な国へと迷い込んだ少女アリス
アリスはお姉さんと一緒に、草の茂った土手に座っていました。
お姉さんは本に夢中です。
そのため、アリスは退屈していました。
「何か面白いことないかな…」
アリスはそう呟きます。
すると、そんなアリスの目の前を、チョッキを着た白いウサギが走っていきます。
その白ウサギは、自身が手にしていた時計を目にしながら、「これは困った…遅刻だぞ…」と呟いていました。
それを見たアリスは興味をひかれ、その白ウサギの後をすぐに追いかけます。
白ウサギは野原の穴にピョンと飛び込みました。アリスもすぐ後からその穴に飛び込みます。
ヒューと、どこまでも落ちていきました。
そしてトン、と着いたのは、細長い部屋です。
そこにはドアがたくさんあります。
白ウサギはそのなかの一つのドアを開いて、外へと出ていきました。
「ちょっと待ってよ!」
アリスはすぐに追いかけようとしましたが、どのドアも小さく、外に出ることができません。
そこで周りを見渡すと、テーブルの上にビンがあることに気づきます。
『私を飲んでごらん』
ビンにはそう書いてありました。
そこでアリスは試しにそれを飲んでみました。
すると、アリスは体がしゅーんと、小さくなっていきます。
そのため、アリスはドアを通って外に出ることができるようになりました。
でも、いざ外に出てみると、遠くからとても大きな声が聞こえてきます。
「裁判の始まり!」
アリスは、「何だろう…?」と、その声の元に近づいていきます。
するとそこは裁判所で、着飾った王様と女王様が裁判官をやっているようでした。
周りにはトランプの兵隊たちがいて、にらみをきかせています。
どうやら女王のタルト*を盗んだ犯人を裁いているようでした。
でも、よく話を聞いてみると、犯人と思われる人は無罪に思えてなりません。
無理矢理、有罪にされているようです。
そこでアリスは思わず声に出してしまいます。
「ちょっと!こんな裁判おかしいわよ!!」
途端にみんなの視線がアリスに向けられます。
女王様は、アリスを指指しこう言いました。
「誰だお前は!みなの者!あの子を捕まえろ!!」
トランプの兵隊たちが、一斉になってアリスに襲いかかってきます。
アリスは驚き、「助けて!」と叫びました。
すると、一体何が起こったのでしょう。
不思議なことに、アリスが気がつくと、そこはあの野原なのでした。
「どうしたのアリス?夢でも見ていたの?」
お姉さんは笑いながら、アリスにそう尋ねます。
するとアリスはちょっと恥ずかしそうに、こう答えたのでした。
「うん!とっても面白い夢だったよ!」
(おわり)
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[用語の説明]
*タルト:パイ生地が使われた焼き菓子のこと
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作者:ルイス・キャロル
作者:ルイス・キャロル(1832~1898年)
イギリス出身の童話作家であり数学者。詩人や写真家としても活動しました。
本名は、チャールズ・ルドウィッジ・ドジスン。
本作:『不思議の国のアリス』は1865年に発表されています。
イギリス西部のチェシャー州デアズベリーで牧師の家に誕生。
オックスフォード大学卒業後は、同大学の講師となり、数学と論理学を教えていました。
また生涯を独身のまま過ごしています。
その他の代表作には本作の続編にあたる『鏡の国のアリス』など多数。
成立:『不思議の国のアリス』は、キャロルが子供たちに話し聞かせていた物語をまとめた作品
1865年に発表した『不思議の国のアリス』は、児童文学の歴史のなかで、もっとも名高い作品の1つとなっている。
この童話は、子どもずきのキャロルが、友人の子どもたちにねだられて話して聞かせていた物語をまとめあげたものだといわれている。
(『学習人物事典』135ページ より)
『不思議の国のアリス』が伝えたいこと(教訓)を考察【解釈&解説】
では、「この童話:『不思議の国のアリス』は、見た人に一体何を伝えたかったのでしょう?」
参考文献から、作者が伝えたかったとされる教訓や解釈を考察しました。
なお、自分独自の考察も含まれますので、あくまで一つの参考として下さいませ。
前提:作者が知人の娘であるアリスのために創作した物語
まずこのことは作者紹介のところでもご紹介させていただいた通り、大前提として本作は、作者のキャロルが知人の娘:アリスのために書いた作品になります。
1865年に発表した『不思議の国のアリス』は、児童文学の歴史のなかで、もっとも名高い作品の1つとなっている。
この童話は、子どもずきのキャロルが、友人の子どもたちにねだられて話して聞かせていた物語をまとめあげたものだといわれている。
(『学習人物事典』135ページ より)
本作は作者のキャロルが友人の子供たちに話していた物語を、知人の娘だったアリスのために練り上げた作品に過ぎません。
よってこのことは少なくとも、本作が元々、万人に何らかのメッセージを伝えることを目的とした作品ではなかったということが推測できます。以上が本作を考察するうえでの大前提です。
…とはいえ、その前提があるにせよ、自分は、「本作には万人に向けてのメッセージも込められていたのでは?」と考察します。
その理由は次にまとめました。
1865年当時のヴィクトリア朝時代のイギリスの風潮を風刺していた?
まず本作が発表された1865年当時のヴィクトリア朝時代のイギリスは、義務教育の普及をはじめ、教育制度が急速に整えられていた時代でもありました。
そのため、当時のイギリスの子供たちはどちらかといえば、制度やルールという枠のなかで、行儀良くすることがより求められるようになっていたと考察します。
そしてこのことは、本作で描かれていた世界観とはまるで対照的です。
本作では秩序が乱れた非常識な世界が舞台となっていましたし、アリスの行動もそのほとんどが好奇心の赴くまま、自由そのものでした。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の阿久津斎木さんは、『ナンセンス・テール*』という言葉の解説のなかで、本作のことを次のように話されています。
*ナンセンス・テール:直訳すると、『意味のない物語』を意味する
常識の枠にとらわれない滑稽な話・奇想であり、ことば遊びを伴うことも多い。
秩序や既成概念を破壊するパワーにあふれている。
たとえば、『不思議の国のアリス』(L・キャロル)では、帽子屋が調子っぱずれの歌を歌った(murder the time)ために、殺されるはめになった「時間」が怒って時を止めてしまい、延々とお茶会が続く。
(『童話学がわかる』166ページ より)
注:当サイトでご紹介させていただいたあらすじはあくまで要約であるため、上記のあらすじは省略しています
そして以上のように本作が現実社会(当時のイギリス社会)との対比とも捉えられるような構図になっていることから、自分は作者が当時のイギリスの子供たち(知人の娘:アリスを含め)を巡る風潮に、本作を通じて何かしらの問題提起をしたい意図があったのではないか…と考察しました。
そしてそれは広くいえば風刺といえるものだったのかもしれませんし、『”変わらないこと”の大切さ』を社会や人に伝えたかったのかもしれません。
もっと具体的に考察するなら、『いつまでも童心を忘れないこと』、『非日常を経験することで、常識にとらわれない創造力や発想力などを大切にしてほしい』といったことなどを伝えたかった可能性もあると考えます。
『不思議の国のアリス』を考察していて知った雑学
最後は本作にまつわる雑学的な補足です。
『挿し絵』の重要性が高まっていたヴィクトリア朝時代
本作が出版されたヴィクトリア朝時代は、『挿し絵』の重要性が高まっていたとするご指摘がありました。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の佐々木 由美子さんは、次のように解説して下さっています。
十九世紀のイギリスでは木版印刷技術の改良によって、子どもの本における挿し絵の重要性が強まった。
W・クレイン、R・コールデコット、K・グリーナウェイなど今日まで名をとどめる画家が多数出現し、木版多色刷りの芸術性に富む絵本を次々と世に出した。
現代絵本の基礎を確率したといってもよい。
他に『たのしい川辺』(K・グレアム)の挿し絵を描いたA・ラッカム、『不思議の国のアリス』(L・キャロル)のJ・テニエルなど。
(『童話学がわかる』163ページ より)
『不思議の国のアリス』が伝えたいこと(教訓):あらすじ内容も簡単に短く要約【考察と解釈、解説】まとめ
童話:『不思議の国のアリス』は、主人公:アリスが好奇心の赴くまま、常識外の摩訶不思議な体験を次々と重ねていきます。
その何にも縛られないかのような物語の世界観は、本作が出版された1865年当時の変わりゆくヴィクトリア朝時代のイギリス社会とは、まるで対極のように映ります。
そのため、もしかしたら作者のキャロルは本作を通じて、”変わらないこと”の大切さを社会や人に伝えたかった側面もあったのかもしれない…と自分は考察しました。
そしてもしその考察が大きく間違っていないのなら、少なくともその文脈においての本作の価値は、これからも社会や人が変わり続ける限り、決して廃れることはないのだろうとも自分は考えました。
それでは(`・ω・´)ゞ