【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『二匹のかえる』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『二匹のかえる』のあらすじ
- あらすじから道徳的に学べる2つのこととは?
- 参考文献
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『二匹のかえる』のあらすじ
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:対立していた二匹のかえるが気づかされたこと
緑の蛙と黄色の蛙が、畑の真ん中でばったり行き合いました。
「やあ、君は黄色だね。汚い色だ」
と緑の蛙が言いました。
「君は緑だね。君は自分を美しいとでも思っているのかね?」
と黄色の蛙が言いました。
二匹の蛙は、とうとう喧嘩を始めました。
緑の蛙は相手の上に飛び掛かり、黄色の蛙は後ろ足で砂を蹴飛ばしました。
すると、そこへ冷たい風が吹いてきました。
もうすぐ冬がやってきます。
蛙たちは、土の中に潜って寒い冬を越さなければいけません。
「春になったら、この喧嘩の勝負をつける!」
と言って、緑の蛙は土に潜りました。
「今言ったことを忘れるな!」
と言って、黄色の蛙も潜り込みました。
寒い冬がやってきました。
蛙たちの潜っている土の上に、びゅうびゅうと北風が吹いたり、霜柱*が立ったりしました。
それから春になり、眠っていた蛙たちは、背中の上の土があたたかくなってきたのを感じます。
最初に土の中から出てきたのは緑の蛙です。
そして土の中に呼びかけました。
「おいおい、起きたまえ!もう春だぞ!」
すると、黄色の蛙が
「やれやれ、春になったか…」
と言って、土から出てきました。
「去年の喧嘩、忘れたか?」
と緑の蛙が言いました。
「待て待て。体の土を洗い落としてからにしようぜ」
と黄色の蛙が言いました。
二匹の蛙は、ラムネのように清々しい水が湧く池の中へ、とぶんとぶんと飛び込みました。
体を洗ってから、緑の蛙が目をぱちくりさせて
「やあ、君の黄色は美しい」
と言いました。
「そういえば、君の緑だって素晴らしいよ」
と黄色の蛙が言いました。
そこで二匹の蛙は
「もう喧嘩はよそう」
と言い合い、喧嘩を止めることにしました。
よく眠った後では、人間でも蛙でも、機嫌が良くなるものであります。
(おわり)
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[用語の説明]
*霜柱:地中の水分が地面に染み出して凍ったもののこと
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作者:新美南吉
作者:新美南吉(1913~1943年)
現在の愛知県半田市に生まれた後、児童文学作家として活躍。
子供の頃から創作活動に意欲的で、半田中学校に在学していた14歳の頃から、童話や童謡、小説、詩、俳句、劇作などの創作をしていました。
十四歳の頃から、童話や童謡を盛んに創作し始めた。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)
その後、半田小学校の代用教員をしながら、復刊した児童雑誌:『赤い鳥』に投稿。童話4編、童謡23編が掲載されます。
上京して東京外国語学校を卒業してからは、安城高等女学校で教員などの仕事をしながら、数々の作品を発表し続けました。
作品:1,500を超える作品を残した
(前略)童話の他、童謡、小説、戯曲、詩、俳句、短歌など、千五百を超える作品を残した。
それは、創作を始めたのが早かったおかげといえよう。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』20ページ 新美南吉 より)
その他の代表作の一部
当サイトでご紹介させていただいたその他の代表作の一覧です。
作風:善意溢れる詩情を讃えた作
庶民の子どもの生活や喜び、悲しみを、物語のなかにたくみにとけこませて、ユーモアのある独特な語りくちで、清潔で善意あふれる詩情をたたえた作である。
(『学習人物事典』332ページ より)
評価:1960年代に評価され始めた
生前にはあまりみとめられなかったが、1960年代にいたって評価されはじめ、『新美南吉全集』全8巻が出版された。
(『学習人物事典』332ページ より)
「『二匹のかえる』から道徳的に学べる2つのこととは何か?」
「では、この童話:『二匹のかえる』からは、道徳的に何が学べるのでしょうか?」
結論からいうと、自分は2つあると考えます。
<1>周りの個性を尊重することの大切さ
まず一つ目は、『周りの個性を尊重することの大切さ』です。
元々、この童話に登場する二匹のカエルたちは、お互いの体の色を醜いと思い込み、喧嘩を始めてしまいます。
しかし、最終的には、お互いが相手の個性を認めることで、その相手の良さに気づくことができました。
このカエルたちの一連の出来事は、『周りの個性を尊重することの大切さ』を教えてくれるかのような出来事だったと考えます。
またこのことは現実社会に置き換えても示唆に富んだ出来事であり、道徳的でもあります。
<2>争うことの不毛さ
そして二つ目は、『争うことの不毛さ』です。
この童話の結末は、二匹のカエルたちがお互いに、「もう喧嘩はよそう」と言い合ってから幕が閉じられています。
冒頭から好戦的で、争いによって白黒つけることを望んでいたカエルたちが、その争いを最後に放棄しました。
このことは見方によっては、少なからず『争うことの虚しさ』のようなものが描写されていたようにも思います。
もちろん現実社会に置き換えると、現実に争いは避けられない局面はあるかもしれません。
ですが、この童話のカエルたちは、時と場合によっては、争い以外にも解決策があることを教えてくれたようにも感じました。
『二匹のかえる』のあらすじと道徳まとめ
童話:『二匹のかえる』のあらすじは、対立していた二匹のカエルが色んなことを気づかされます。
それは道徳的にいうならば、『相手の個性を尊重することの大切さ』だったのかもしれませんし、『争うことの不毛さ』だったのかもしれません。
人によって、もっと色んな意見があることでしょう。
皆さんはどのように考えられたでしょうか?