思考実験:『スワンプマン』についてまとめました。
下記の内容が順にわかるようになっています。
- 誕生の背景
- 問題のシナリオ
- 考え方とその考察
- 参考文献
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スワンプマンの思考実験とは?誕生の背景とその中身
それでは、スワンプマンの思考実験が生まれた背景から、その内容を順にご紹介させていただきます。
哲学者:ドナルド・デイビットソンが考案
まずスワンプマンの思考実験は、アメリカの哲学者:ドナルド・デイビットソンが考案したとされています。
デイビットソンは、自身の論文『自分自身の心を知ること』の中で、この思考実験を紹介したようです。
それ以後、スワンプマンの思考実験は、“人間の同一性を問う題材”として広く知られていくこととなります。
内容は次のようなものです。
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「ある森の中をさまよう一人の男がいた
ここに、ある森の中をさまよう一人の男がいました。
今にも力尽きそうな中、とある沼地に辿り着く
男は今にも力尽きそうな中、とある沼地に辿り着きます。
しかし、雷に打たれ、その生涯を終えることとなる…
ですが、その瞬間、男は突然の雷に打たれます。
男は沼地に沈んでいき、その生涯を終えることとなりました…。
ところが、その男と入れ替わるような形で、沼地の底から沼男(スワンプマン)が姿を現す
そんなとき、男と入れ替わるような形で、沼地から別の男が姿を現します。
男の名はスワンプマン(沼男)。
スワンプマンの姿は雷に打たれた男とそっくりだ
どういうわけか、スワンプマンの姿は雷に打たれた男とそっくりです。
まるで見分けがつきません。
どうやら沼地に眠った男と魂が入れ替わったらしい
しかもスワンプマンに宿っている魂は、確かに沼地に沈んだ男のものです。
つまり男の魂はスワンプマンに乗り移っているようでした。
男の過去の記憶も受け継いだスワンプマン
スワンプマンは、男の過去の記憶も完全な形で受け継いでいます。
今では森を抜け出し、かつての男であるかのように生活している
今となっては、スワンプマンは沼地を抜け出し、そのかつての男であるかのように振る舞っているようです。
誰も彼がスワンプマンであるとは気づいていない…」
誰も彼がかつての男ではなく、スワンプマンであることには気づいていません…。
おそらくこれからも気づくことはないでしょう…。
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Q:スワンプマンは男と同一人物だといえるのだろうか?
では、「スワンプマンは男と同一人物だといえるのでしょうか?」
繰り返す通り、スワンプマンは男とそっくりの姿をしており、持っている記憶も男のそれとまったく同じです。
以上がスワンプマンの思考実験で問われることです。
スワンプマンの思考実験【考え得る答えと見分け方の考察】
多くの思考実験がそうであるように、スワンプマンの思考実験にも絶対の答えは存在しません。
そこでここでは、この思考実験で考え得る答えとその見分け方を考察することとさせていただきます。
「同一人物である」という考え
まずは「スワンプマンと男は同一人物である」という考えです。
この考えをする方には、もしかしたら次のような理由が思い浮かんでいるのかもしれません。
実生活を送るうえでの支障が何一つないから
“スワンプマンが実生活を送るうえでの支障が何一つないから“との理由です。
繰り返す通り、スワンプマンの姿と記憶は男のそれとまったく同じ。
周囲の人も、そんなスワンプマンのことをまったく疑っていません。
そのため、以上のことから「スワンプマンと男は同一人物であると考えられる」という意見になります。
現に、実生活を送るうえで、支障となることは何もない。
役場で戸籍謄本を取得することもできるし、空港職員に一切怪しまれることなく、海外旅行に出かけることもできるだろう。
(『よくわかる思考実験』16ページ より)
「同一人物ではない」という考え
もう一つは、「スワンプマンと男は同一人物ではない」という考えです。
この考えをする方には、もしかしたら次のような理由が思い浮かんでいるのかもしれません。
スワンプマンの記憶は自身が体験したものではないから
“スワンプマンが持っている記憶は、スワンプマン自身が体験したものではないから“との理由です。
死んだ男の両親に会い、小さな頃の思い出話に興じることもできる。
だがしかし、その思い出話は、スワンプマン自身が体験したことではない。
あくまで死んだ男の記憶を引き継ぎ、あたかも本人であるかのように話しているだけなのである。
(中略)
こう考えていくと、実際に経験したかどうかということが判断の分かれ道になりそうだ。
(『よくわかる思考実験』16、17ページ より)
どちらかというと、この考え方は、感情的な側面が強いのかもしれません。
『スワンプマンの思考実験』とは?わかりやすく答えの見分け方まで考察まとめ
思考実験に同一性を問う題材は数多く、スワンプマンもそのなかの一つです。
とはいえ、スワンプマンはSFっぽさが漂う思考実験だと個人的には感じるので、比較的取っつきやすい内容かと思います。
それでは失礼します。
肉体と精神は通常、別々に考えることは不可能だ。
なぜなら、同時に存在するものだから。
だが、これらの思考実験ではどうやっても別々に考えざるを得ない。
そして、答えを1つに絞り込むことは不可能に近い。
さて、あなたの答えは。
(『よくわかる思考実験』21ページ より)
参考文献
このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。
ありがとうございました。