【『思考実験』一覧】怖い9例&面白い10例を超厳選【クイズ形式でわかるパラドックスの世界】
思考実験:『ギャンブラーの誤謬』についてです。
『認知バイアス』の一つとしても有名ですが、このページでは参考文献を元に、思考実験形式でまとめています。
ご承知おき下さいませ。
なお、類似した思考実験である『逆ギャンブラーの誤謬』についても合わせてまとめています。
- ギャンブラーの誤謬のカラクリ
- 【類似現象】逆ギャンブラーの誤謬
- 参考文献
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『ギャンブラーの誤謬』の概要
それではギャンブラーの誤謬の概要と内容について、ご紹介させていただきます。
主観的な経験から生まれる錯覚
ギャンブラーの誤謬とは、主観的な経験から生まれる錯覚です。
繰り返す通り、『認知バイアス』の一種であり、『主観的定理』と呼ばれるものの例でもあるようです。
(前略)ただ経験的に見いだした法則性を、あたかも定理のように使用してしまう「主観的定理」と呼ばれるものもあります。
(『思考実験 科学が生まれるとき』209ページ より)
1913年:モンテカルロカジノでの出来事が有名
ギャンブラーの誤謬にまつわる事例としては、1913年にフランス:モナコの『モンテカルロカジノ』で起こった出来事があまりにも有名です。
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ちなみに余談ですが、モンテカルロカジノは、あのジェームズ・ボンドが悪党たちにギャンブルを挑んだ舞台でもあります。
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そんなモンテカルロカジノでギャンブルに興じていた一人のギャンブラーは、このギャンブラーの誤謬に陥ったことで、一夜にして大金を失ってしまいました…。
そのギャンブラーはそのとき、カジノのルーレットが26回連続で黒色のポケットに入ったところを目撃。
そのため、「(さすがに次にボールが入るのは黒色ではなく、赤色だろう…)」との予測を立て、赤色に大金をつぎ込みます。
ですが、結果は大損となりました…。
以上の出来事がこのギャンブラーの誤謬が実際に起こった事例の中でも有名なものの一つです。
とはいえ、このような出来事が起こった理由の一つは、おそらくギャンブラー自身が、「(次にボールがまた黒に入る確率は低い…もしくはこれからさらに低くなるだろう…)」と考えたことが原因だと思われます。
実際に15回連続で黒に入った頃には、その場にいたギャンブラーたちは赤に大金を賭け始めたとのことです。
(結果としてギャンブラーたちは賭け金を2倍、3倍に増やしたため、カジノ側は大儲けしたようですが…)
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またこのことは認知バイアス事典によると、人は連続して同じ結果が出たことがわかると、「(次は違う結果になるのではないか?)」という心理が働くことが多いといいます。
このような心理は、連続してハズレのガチャを引き続けて爆死してしまうことなど、他にも多くの事例がありそうです。
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そしてこのギャンブラーの誤謬を思考実験形式にした内容が次の問題です。
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[問題文]
あなたはこれからコイン投げの賭けをします。
そこで既に行われていたコイン投げの様子を見たところ、表が9回連続して出ている最中でした。
その確率は約500分の1(=1/2の9乗)です。
あなたは珍しい出来事を目の前にしたと感じ、「(さすがに次は裏が出るだろう…)」と考えます。
さて、「そんなあなたの考えは正しいのでしょうか?」
以上がギャンブラーの誤謬にまつわる思考実験です。
なお、この賭けには一切イカサマは使われていないものとします。
そのため、コインなどにも細工は一切ありません。
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ギャンブラーの誤謬の思考実験の正解
それでは問いに対する答えです。
【結論】まったく正しくない
結論からいうと、『まったく正しくありません』というのが正解になります。
つまり「(さすがに次は裏が出るだろう…)」との考えは、間違いということです。
何度やっても確率は常に1/2だから(『独立試行』)
なぜなら、さきほどの条件であれば、何回コイン投げをしたとしても、表が出るか裏が出るかの確率は常に1/2だからです。
コインは表と裏のどちらが出たかをその都度、記憶しているわけではありません。
そのため、各回の結果は各々が独立している(『独立試行』)ため、過去の結果が未来の結果に影響を及ぼすことはないということです。
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このことはさきのモンテカルロカジノの事例においても同じことがいえます。
たとえルーレットのボールが26回連続で黒色のポケットに落ちたという事実がそこにあったとしても、それが正当なルーレットであるならば、ルーレットのボールが黒色か赤色かのポケットに落ちる確率は、何回目であろうと常に1/2です。
過去に起こった事実が、これからルーレットに起こり得る確率に影響を及ぼすことはありません。
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『逆ギャンブラーの誤謬』
最後は『逆ギャンブラーの誤謬』を簡単にご紹介させていただき、終わりとしたいと思います。
過去への錯覚
逆ギャンブラーの誤謬とは、過去への錯覚です。
ギャンブラーの誤謬が未来への予測であったのに対し、この逆ギャンブラーの誤謬は過去への推論によるものとなっています。
1987年に哲学者:イアン・ハッキングが提唱
1987年に哲学者:イアン・ハッキングが提唱しました。
思考実験の内容は、次のようなものです。
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問題文
あなたは行き付けの喫茶店で何時間も過ごした後、気まぐれに隣の建物へと入ります。
そこでは賭けが行われていて、誰かがあなたにこう問いました。
「私たちがこのサイコロによる賭けをたった今始めたばかりなのか、それとも、もう何百回も続けていたのか…どっちだと思います?」
どうやらこれ自体も賭けのようです。あなたは考え、答えます。
「うーん…自分はデタラメなタイミングで来ただけなので、今は賭けが行われていたなかで全体のちょうど真ん中あたりである可能性が高い気がしますが…ちょっとわかりませんね…」
そこであなたは次のような質問をしました。
「ヒントをくれませんか?ちょうど今出た目はいくつだったんです?」
すると賭けをしていた人は、正直に答えます。
「実は…666だったんですよ」
「え?」
思わずあなたは驚きます。
なぜなら、サイコロ3個を振るギャンブルで、666が出る確率は1/216しかないからです。
それもあなたがたまたま賭けの場に訪れたちょうどそのとき、その666の目が出たというわけです。
以上のことから、あなたの考えは確信に変わります。
「なるほど。666なんて目が1回目や2回目で出るはずはないな…だけど、何百回も振っていれば出てもいいだろう。わかった!正解は、『何百回も振り続けていた』だ!」
さて、「このあなたの推理は正しいのでしょうか?」
もちろん賭けにイカサマなどは一切使われておらず、サイコロで666の目が出たのも本当のことです。
以上が逆ギャンブラーの誤謬の問題文です。
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正解
これも結論からいうと、答えは『正しくありません』
その理由は、たとえサイコロを振った回数が1回目であれ、何百回目であれ、666が出る確率は常に1/216だからです。
つまりこれも確率は常に独立している(『独立試行』)ため、何回目であっても確率は常に平等ということになります。
よって仮に賭けの場にやって来たタイミングでたまたまサイコロの目が666だったとしても、それが過去に多くの回数サイコロが振られていたとする根拠にはなりません。
偶然に納得するため、錯覚を起こしているだけです。
『ギャンブラーの誤謬』ガチャ爆死つらいまとめ
ギャンブラーの誤謬のような事例は、日常の至るところに転がっていそうです。
余談ながら自分はソシャゲのガチャが爆死しまくってつらい経験をしたことがありますが、今振り返るとこのギャンブラーの誤謬にハマっていたような気がします。
「はぁ…(溜息)」
参考文献
このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。
ありがとうございました。
・Hacking, Ian. “The Inverse Gambler’s Fallacy : the Argument from Design. The Anthropic Principle applied to Wheeler Universes” Mind 96(1987)
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