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『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』を読みました。
『認知バイアス』は一言でいうと『『偏った見方』や『歪んだ見方』をしてしまういわゆる思い込みなどのこと』です。
本書は『自分が知らず知らずにハマってしまっている思い込みに気づき、あらゆる物事を今よりも正しく見れるようになる内容』となっていました。
- 【レビュー書評】『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』
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『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』レビュー
要点をまとめました。
監修:論理学と科学哲学を専門とする高橋 昌一郎さん
まず本を監修したのは『論理学』と『科学哲学』をご専門とする高橋昌一郎さんです。
認知バイアスを『社会心理学』と『認知科学』、『論理学』の3つの学問から解き明かす
本書では認知バイアスという幅広いテーマを『社会心理学』と『認知科学』、『論理学』の3つの学問の専門家の方々が、それぞれとてもわかりやすく解説して下さっていました。
参考までにそれぞれの学問で取り上げられていた例を一つずつご紹介させていただきます。
<1>『論理学』(『ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)』)
まず論理学で取り上げられていたのは『ギャンブラーの誤謬』です。
『ギャンブラーの誤謬』ガチャ爆死がつらい人にありがち【認知バイアス】
これは1913年にフランス:モナコのモンテカルロカジノでの出来事があまりにも有名です。事のあらましは以下になります。
ギャンブルに興じていた一人のギャンブラーは、あるときカジノのルーレットが26回連続で黒色のポケットに入ったところを目撃。
そこでそのギャンブラーは「さすがに次にボールが入るのは黒色ではなく、赤色のポケットだろう」と予測。
赤色に大金をかけた結果、大損してしまう…。
では、この一連の出来事には一体どんな認知バイアスが働いていたのでしょうか?
まず前提として本来、正当なルーレットであれば、ルーレットのボールが黒色か赤色かのポケットに落ちる確率は、いずれも1/2です。
この確率はたとえルーレットが何回目に行われたとしても決して変わらず、仮にこの出来事のように26回連続でボールが黒色のポケットに落ちた事実がそこにあったとしても、その事実は”これからルーレットに起こる得る確率”になんら影響を及ぼすことではありません。
あくまで”1回ごと”に見た場合、ボールが黒色か赤色かのポケットに落ちる確率は常に変わらず1/2のはず…でした。
しかし、ギャンブラーはボールが26回も連続で黒色のポケットに入った事実を目の当たりにしたことで、認知バイアスがあらぬ方向に働いてしまいます。
本来常に変わらず1/2であるはずの確率に疑問を持ってしまったことから、結果として間違った予測をすることにつながってしまいました…。
本書によると『人は連続して同じ結果が出たことがわかると「次はさすがに違う結果になるのでは?」という心理が働くことが多い』とのこと。
つまりギャンブラーは26回も連続で黒色に入った結果を目にしてしまったことから、1/2であるはずの確率に疑問が生まれ、間違った予測をしてしまったということです。
<2>『社会心理学』(『同調バイアス』)
続いてご紹介するのは本書の社会心理学のところで取り上げられていた『同調バイアス』です。
これは『他の人がやっているから』、『周りがそうだから』などといったような理由で『周りの意見や行動などに合わせてしまう認知バイアスのこと』です。
身近にところに無数に存在する認知バイアスなので、心理学実験でも同調バイアスをはじめ、同調が取り上げられた事例は数多いです。
『アッシュの同調実験』もその一つになります。
【『アッシュの同調実験』をわかりやすく】人は、集団に屈する【ソロモン・アッシュの心理学実験】
<3>『認知科学』(『ミュラー・リヤー錯視』)
最後は本書の認知科学のところで取り上げられていた『ミュラー・リヤー錯視』です。
これはドイツの心理学者『フランツ・ミュラー・リアー』が明らかにした以下の錯視図形のことになります。
図:ミュラー・リヤー錯視
※上記の図形は自作したものです
一見すると左の縦線の方が右の縦線よりも長く見えなくもないこの図形こそが認知バイアスそのもので、実際はこの左右の図形の長さはまったく同じとなっています。以下がその証拠です。
図:ミュラー・リヤー錯視の図形の長さを比較した図
このような認知バイアスが発生する原因には様々な説があります。
なかには『矢印の先端の部分(斜めになっているところ)が、矢印全体の長さに影響をあたえている』という『周りの情報が錯覚を創っているのではないか?』などの説があるようです。
『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』レビューまとめ
認知バイアスは脳にかかるストレスや負担を軽減し、省エネにつながる役割があります。
そのため、必ずしも悪いものではないですが、もし認知バイアスがネガティブな方向に働いている現実があるなら、本書はその”罠”から抜け出すための大きな助けとなり得ます。
それでは。
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