『中国語の部屋』をわかりやすく【1980年に提唱された「知能とは?」が問われる思考実験】

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思考実験:『中国語の部屋』についてです。

参考文献を元に、『誰にでもわかりやすく』をテーマにまとめてみました。一つの参考にしていただければと思います。

このページでわかること
  1. 中国語の部屋の背景
  2. その問いと答え
  3. 参考文献

それでは中国語の部屋の概要と内容をご紹介させていただきます。

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「知能とは何か?」を巡る思考実験

まず中国語の部屋とは、一言でいうと、「知能とは何か?」を巡る思考実験になります。

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1980年に哲学者:ジョン・サールが提唱

1980年にアメリカの哲学者:ジョン・サールが提唱しました。

サールは機能主義には欠陥があるとして批判をする形で、この思考実験を持ち出したとされています。この点については後述します。

内容は次のようなものです。

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[問題文]

あなたは、とある部屋の中に閉じ込められています。

牢屋に閉じこめられる

その部屋の窓は一つしかありません。

しかもあなたが外とやりとりできる手段は、その窓を通じて行われる書面に限定されています。

部屋の外には中国人がいて、あなたに書面を通じて中国語で書かれた質問を何度も送ってきます。

しかし、肝心のあなたは中国語がまったく理解できません。

紙に書かれた中国語がどんな意味を持っているのか…見当もつかない状況です。

そんなあなたがいる部屋の中には、中国語らしき単語が一枚ごとに書かれた紙が入った箱があります。

どうやらそれらの紙を正しく組み合わせて使えば、中国語の文章がつくれそうです。

中国語を勉強する男性

さらに部屋の中には、ルールブックが置いてありました。

その本には、中国語の文をつくるためのルールや、窓からどんな書面が送られてきたらどんな文を返せば良いかが書かれています。

しかも幸運なことに、そのルールブックはあなたが理解できる英語で書かれています。

これなら中国語の意味がわからなくとも、部屋の外の中国人にそれらしい返事を送ることができそうです。

書面によるやりとりは何度も繰り返されました。

そのため、あなたは作業自体には確実に習熟していき、あなたが返事をするスピードも確実に上がっていきました。

やがて部屋の外にいる中国人は、あたかもあなたが中国語を理解しているように見えることでしょう。

しかし、あなたが習熟しているのはあくまで作業です。中国語は今なお、まったく理解できていません。

では、問題です。

知能の有無は機能主義で判断できるでしょうか?

機能主義』というのは、1950年代に提唱された次のような主義主張のことです。

心を持つ、知能を持つということは、脳のような一種の生体器官を持つことではなく、何かを伝達したり、理解したり、判断したりという一連の機能を果たせるということであるという主張だ。

(『よくわかる思考実験』130ページ より)

哲学者:伊藤邦武さんは、この機能主義を次のように解説して下さっています。

(前略)人間の心は端的に脳の機能によって理解されるものであり、その機能はコンピュータのソフトウェアやプログラムとその具体的な運用になぞらえて解釈される。

人間の心にかんするこのような哲学的立場は「機能主義」と呼ばれるが、この機能主義の哲学は、脳科学やコンピュータ科学と手をたずさえて、認知科学という学問領域を作りあげている。

(『童話学がわかる』76ページ より)

さきほどもご紹介した通り、元々、哲学者:サールは中国語の部屋により、この機能主義に異を唱えた形をとっていました。

以上が中国語の部屋の問題になります。

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『中国語の部屋』の問題の答え

それではさきの問いの答えを見ていきます。

【結論】「機能主義の成立は十分とはいえない」

結論からいうと、『知識の有無を判断するうえで、機能主義の成立は十分とはいえない』ということがいえます。

“あなた”は中国語を理解していないから

その理由は、中国語の部屋の中にいる人(あなた)は、中国語を理解していないからです。

部屋の外からの質問には伝達できていても、そこで生じた中国語のやりとりの意味までは理解していませんでした。

そのため、理解の観点からいうと、機能を果たせているとはいえないため、次のような機能主義は十分に成立するとは言い切れない面があります。

心を持つ、知能を持つということは、脳のような一種の生体器官を持つことではなく、何かを伝達したり、理解したり、判断したりという一連の機能を果たせるということであるという主張だ。

(『よくわかる思考実験』130ページ より)

“部屋全体”を見ると、中国語を理解しているシステムだと捉えられる面もあるが…

しかし、その一方でこの問題を俯瞰して見た場合には、部屋の中の人(あなた)は中国語を理解していると見られる行動をとっています。

よって部屋の中の人(あなた)が中国語を理解していないという事実を知らない状態でこの部屋でのやりとりを見れば、”部屋全体”では中国語の理解を前提としたやりとりが行われるように見えなくもありません。

この中国語の部屋を思考実験たらしめている理由には、このことが関係しています。

ですが、繰り返す通り、部屋の中にいる人(あなた)は中国語を理解してはいません。

そのため、機能主義の成立は十分とはいえないと結論付けられます。

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『中国語の部屋』をわかりやすくまとめ

ご紹介した通り、中国語の部屋は、「知能とは?」が問われる思考実験です。

反論はあれど、見方によっては部屋にいる人(あなた)には中国語を理解する知能があると評価される側面があるようにも見えます。

このような事例は、身近なところにも散見できそうです。いわゆるAI(人工知能)の問題提起にも使えるかもしれません。

個人的には、この中国語の部屋は、思考実験の中では身近な出来事や問題に置き換えやすい面があるような気もしています。

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参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

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