【『シンプソンのパラドックス』をわかりやすく】事例からわかる統計学者:シンプソンの思考実験

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思考実験:『シンプソンのパラドックス』についてです。

参考文献を元に、思考実験形式にしてまとめています。

一つの参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 事例からわかる『シンプソンのパラドックス』
  2. そのカラクリ
  3. 参考文献

『シンプソンのパラドックス』をわかりやすく【事例アリ】

それではここからは、『シンプソンのパラドックス』の概要と内容をご紹介させていただきます。

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比較の盲点

『シンプソンのパラドックス』とは、『比較にまつわる問題』です。

統計学者:エドワード・シンプソンが提唱しました。

次のような問題になります。

ーーーーー

[問題文]

学校Aと学校Bの、2つの異なる学校があります。

鉛筆のサイコロ

教育関係者であるあなたは、その2つの学校にいる生徒たちそれぞれに、とあるまったく同じテストを実施しました。

そして結果を性別ごとに比較したところ、男女ともに学校Aの平均点は、学校Bの平均点よりも10点高いことが明らかとなります。

下記がそのテスト結果です。

男子

学校A 学校B
総得点 4,800点 1,000点
人数 80人 20人
平均点 60点 50点

女子

学校A 学校B
総得点 1,600点 5,600点
人数 20人 80人
平均点 80点 70点

ーーーーー

一応、念のためですが、『平均点=総得点÷人数』です。

(例)学校Aの女子の場合、1,600÷20=80点

ーーーーー

そのため、以上のことから、あなたは次のように考えます。

「(これなら全校生徒による平均点も、きっと学校Aの方が高いだろうな…)」

ですが、実際に全校生徒の平均点を比較してみたところ、学校Bの方が学校Aよりも平均点が高くなってしまいました。

つまり男女別による結果と逆転してしまったということです。

では、問題です。

なぜ、このようなことが起こったのでしょう?

ーーーーー

以上が、『シンプソンのパラドックス』の思考実験になります。

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『シンプソンのパラドックス』のカラクリ

それでは解答です。

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『母集団の比較はそのサンプルの比較と矛盾することもある』

結論からいうと、この問題を提唱した統計学者:シンプソンは、『母集団の比較はそのサンプルの比較と矛盾することもある』とのことを提唱しました。

つまり簡単にいえば、『全体での比較は、その全体を構成している部分的な比較と矛盾することがある』ということです。

このことをわかりやすく理解するため、もう一度さきほどの表を見てみます。

男子

学校A 学校B
総得点 4,800点 1,000点
人数 80人 20人
平均点 60点 50点

女子

学校A 学校B
総得点 1,600点 5,600点
人数 20人 80人
平均点 80点 70点

上記の表からは、問題文にもあった通り、男子生徒と女子生徒の平均点が、どちらも学校Aの方が学校Bよりも10点高いことが明らかとなっています。

ですが、これらの情報を元に男女を合計した結果を表にすると、下記の表が出来上がります。

男女の合計

学校A 学校B
総得点 6,400点 6,600点
人数 100人 100人
平均点 64点 66点

注目すべきは平均点です。

学校Aの方が学校Bよりも10点低い・・平均点となっていることがご理解いただけるはず。

つまり平均点を学校Aと学校Bで比較したところ、性別の合計と性別ごとでは優劣が逆転しているということです。

ーーーーー

ここでも念のため補足させていただきますが、『平均点=総得点÷人数』ですので、計算過程は以下の通りとなります。

学校A:(4,800+1,600)÷(80+20)=64点

学校B:(1,000+5,600)÷(20+80)=66点

ーーーーー

なお、このような逆転現象が起こった理由は、そもそも学校Aと学校Bの元々の性別ごとの生徒数に違いがあったことと、平均点の高さが違っていたことから生じています。

とはいえ、以上のことは少なくとも、平均点のみを見て論理的な考えをした場合には、不思議なことのように思われるかも…しれません。

ーーーーー

ちなみに以上のような逆転現象に前もって対処するには、統計学でいうところの回帰分析などを使うことが一般的です。

よってそのことをご存じな方などにとっては、「えっ、この思考実験ってどこがパラドックスなの…?」と思われるかもしれません。

ですが、これは自分の考えではあるものの、おそらくこの問題が思考実験として紹介されることがある理由は、相関関係と因果関係をごちゃ混ぜにしてしまう人間心理(いわゆる『錯誤相関』)をうまく突いている側面があるからではないかと思います。

>>心理現象一覧

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(少なくとも自分ははじめてこの思考実験を見たとき、まんまと引っかかりました。苦笑)

ーーーーー

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『シンプソンのパラドックス』をわかりやすく【事例】まとめ

『シンプソンのパラドックス』は、比較にまつわる問題でした。

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参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

>>論理パラドクス 論証力を磨く99問

・Suppes, P., A Probabilistic Theory of Causality(North Holland, 1970)

>>思考実験 科学が生まれるとき

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