【『思考実験』一覧】怖い9例&面白い10例を超厳選【クイズ形式でわかるパラドックスの世界】
思考実験:『シンプソンのパラドックス』についてです。
参考文献を元に、思考実験形式にしてまとめています。
一つの参考にして下さいませ。
- 事例からわかる『シンプソンのパラドックス』
- そのカラクリ
- 参考文献
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『シンプソンのパラドックス』をわかりやすく【事例アリ】
それではここからは、『シンプソンのパラドックス』の概要と内容をご紹介させていただきます。
比較の盲点
『シンプソンのパラドックス』とは、『比較にまつわる問題』です。
統計学者:エドワード・シンプソンが提唱しました。
次のような問題になります。
ーーーーー
[問題文]
学校Aと学校Bの、2つの異なる学校があります。
教育関係者であるあなたは、その2つの学校にいる生徒たちそれぞれに、とあるまったく同じテストを実施しました。
そして結果を性別ごとに比較したところ、男女ともに学校Aの平均点は、学校Bの平均点よりも10点高いことが明らかとなります。
下記がそのテスト結果です。
【男子】
学校A | 学校B | |
---|---|---|
総得点 | 4,800点 | 1,000点 |
人数 | 80人 | 20人 |
平均点 | 60点 | 50点 |
【女子】
学校A | 学校B | |
---|---|---|
総得点 | 1,600点 | 5,600点 |
人数 | 20人 | 80人 |
平均点 | 80点 | 70点 |
ーーーーー
一応、念のためですが、『平均点=総得点÷人数』です。
(例)学校Aの女子の場合、1,600÷20=80点
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そのため、以上のことから、あなたは次のように考えます。
「(これなら全校生徒による平均点も、きっと学校Aの方が高いだろうな…)」
ですが、実際に全校生徒の平均点を比較してみたところ、学校Bの方が学校Aよりも平均点が高くなってしまいました。
つまり男女別による結果と逆転してしまったということです。
では、問題です。
「なぜ、このようなことが起こったのでしょう?」
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以上が、『シンプソンのパラドックス』の思考実験になります。
『シンプソンのパラドックス』のカラクリ
それでは解答です。
『母集団の比較はそのサンプルの比較と矛盾することもある』
結論からいうと、この問題を提唱した統計学者:シンプソンは、『母集団の比較はそのサンプルの比較と矛盾することもある』とのことを提唱しました。
つまり簡単にいえば、『全体での比較は、その全体を構成している部分的な比較と矛盾することがある』ということです。
このことをわかりやすく理解するため、もう一度さきほどの表を見てみます。
【男子】
学校A | 学校B | |
---|---|---|
総得点 | 4,800点 | 1,000点 |
人数 | 80人 | 20人 |
平均点 | 60点 | 50点 |
【女子】
学校A | 学校B | |
---|---|---|
総得点 | 1,600点 | 5,600点 |
人数 | 20人 | 80人 |
平均点 | 80点 | 70点 |
上記の表からは、問題文にもあった通り、男子生徒と女子生徒の平均点が、どちらも学校Aの方が学校Bよりも10点高いことが明らかとなっています。
ですが、これらの情報を元に男女を合計した結果を表にすると、下記の表が出来上がります。
【男女の合計】
学校A | 学校B | |
---|---|---|
総得点 | 6,400点 | 6,600点 |
人数 | 100人 | 100人 |
平均点 | 64点 | 66点 |
注目すべきは平均点です。
学校Aの方が学校Bよりも10点低い平均点となっていることがご理解いただけるはず。
つまり平均点を学校Aと学校Bで比較したところ、性別の合計と性別ごとでは優劣が逆転しているということです。
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ここでも念のため補足させていただきますが、『平均点=総得点÷人数』ですので、計算過程は以下の通りとなります。
学校A:(4,800+1,600)÷(80+20)=64点
学校B:(1,000+5,600)÷(20+80)=66点
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なお、このような逆転現象が起こった理由は、そもそも学校Aと学校Bの元々の性別ごとの生徒数に違いがあったことと、平均点の高さが違っていたことから生じています。
とはいえ、以上のことは少なくとも、平均点のみを見て論理的な考えをした場合には、不思議なことのように思われるかも…しれません。
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ちなみに以上のような逆転現象に前もって対処するには、統計学でいうところの回帰分析などを使うことが一般的です。
よってそのことをご存じな方などにとっては、「えっ、この思考実験ってどこがパラドックスなの…?」と思われるかもしれません。
ですが、これは自分の考えではあるものの、おそらくこの問題が思考実験として紹介されることがある理由は、相関関係と因果関係をごちゃ混ぜにしてしまう人間心理(いわゆる『錯誤相関』)をうまく突いている側面があるからではないかと思います。
【心理現象一覧】面白い有名な心理現象の名前と意味大全【心理学を大学で勉強した自分が徹底調査】
(少なくとも自分ははじめてこの思考実験を見たとき、まんまと引っかかりました。苦笑)
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『シンプソンのパラドックス』をわかりやすく【事例】まとめ
『シンプソンのパラドックス』は、比較にまつわる問題でした。
参考文献
このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。
ありがとうございました。
・Suppes, P., A Probabilistic Theory of Causality(North Holland, 1970)