『ヘンペルのカラス』を簡単にわかりやすく【帰納法にまつわる思考実験】

白と黒とカラスと

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思考実験:『ヘンペルのカラス』についてです。

参考文献を元に、思考実験形式にしてまとめています。

一つの参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 『ヘンペルのカラス』の内容
  2. 参考文献

『ヘンペルのカラス』を簡単にわかりやすく

それでは、ここからは『ヘンペルのカラス』の概要と内容をご紹介させていただきます。

帰納法にまつわる問題

『ヘンペルのカラス』とは、『帰納法にまつわる問題』です。

ドイツの科学哲学者:カール・ヘンペルが提唱。

ヘンペルは、帰納的統計モデルを研究する最中、この人間の直感とは反する事例を思いついたとされています。

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具体的な内容は次の通りです。

なお、このさきはヘンペルのカラスの論法をご紹介した後、「その論法のどこに問題点や注意点の一端があるのか?」を、クイズ形式でご紹介させていただいています。

ご承知おき下さいませ。

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「あなたは『カラスは黒い』ということを検証したいとする

あるとき、あなたは『カラスは黒い』ということを検証したいと考えます。

これはすなわち、『どのカラスも黒い』ということの検証に他なりません。

カラス

検証法には『論理的に同値』とみなせる『対偶論法』を使うとする

そしてその検証法には、『論理的に同値』である『対偶論法』を使うものとします。

つまり『どのカラスも黒い』の対偶である『黒くないものはカラスではない』を検証するということ

つまりここでは、『どのカラスも黒い』を調べるため、その対偶である『黒くないものはカラスではない』を調べるということです。

対偶的に同値である2つのこと
  1. 『いかなるものであれ、それがカラスであるならば、それは黒いものである』
  2. 『いかなるものであれ、それが黒くないものであるならば、それはカラスではない』

これなら、「すべてのカラスは黒いのか?」の答えを、カラスを調べずして確かめられる

よってすべてのカラスが黒いことをこの対偶論法で検証するのであれば、何もカラスを調べる必要はないということです。

逆に黒くないものを片っ端から確かめることができさえすれば、それで事足りてしまうともいえます。

そこであなたは身近にある黒くないものから検証し始めた」

そこでまずあなたは、自分にとって身近な”黒くないもの”から検証を始めることにしました。

たとえるなら、次の通りです。

あなたは目の前にある白色のスマートフォンを見て、「うん。これはカラスではないな」と確認したり、雨の日に使っている青色の傘を見て、「うん。あれはカラスではないな」などと確認していく…といった具合です。

とある人

うん。これはカラスじゃあないな!

そうすれば、やがてはあなたが元来検証したかった、『どのカラスも黒い』を明らかにできるというロジックです。

問題:『この一連の検証法には、どこに問題点や注意点があるだろうか?』

さて、以上をもって問題です。

この一連の検証法には、どこに問題点や注意点があるでしょうか?

以上がヘンペルのカラスにまつわる思考実験になります。

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前提:この『対偶論法』による検証法に、論理的な欠陥はない

なお、繰り返しになりますが、前提として、この『対偶論法』を使った検証法には、論理的に欠陥はありません。

つまり仮にあなたが『黒くないものはカラスではない』ことを確かめることができさえすれば、たとえ直接カラスを調べなくとも、『どのカラスも黒い』ことは確かめられるということです。

なぜなら、これも繰り返しになり恐縮ですが…この『対偶論法』は、『論理的に同値である』とみなせるからです。

そのため、さきの問いについて考える際は、このことを踏まえたうえで考えてみて下さいませ。

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『ヘンペルのカラス』の問いに対する2つの回答例

それではさきの問いに対する答えを見ていきます。

ここでは参考文献を元に、2つの回答をご紹介させていただきます。

<1>効率が悪すぎる(=問題点)

まず一つ目は問題点として、『効率が悪すぎる』ことが挙げられます。

なぜなら、世の中にはカラスの数より、黒くないものの数の方が圧倒的に多いからです。

そのため、さきの検証法のように世界中の黒くないものを調べ切ることは途方もなく、どう考えても非効率。

常識的なことだと思われたかもしれませんが…つまりはさきの検証法は論理的には欠陥はなくとも、実際的には不可能に近いということです。

<2>真実性を増すことにはならない(=注意点)

そして二つ目は注意点として、『真実性を増すことにはならない』ことが挙げられます。

まずさきの問題では、以下の例を具体的な検証法としてご紹介しました。

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あなたは目の前にある白色のスマートフォンを見て、「うん。これはカラスではないな」と確認したり、雨の日に使っている青色の傘を見て、「うん。あれはカラスではないな」などと確認していく…といった具合です。

とある人

うん。これはカラスじゃあないな!

そうすれば、やがてはあなたが元来検証したかった、『どのカラスも黒い』を明らかにできるということです。

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ですが、このやり方だと、たとえいくら繰り返そうが、それが『どのカラスも黒い』ということの妥当性を高める助けにはなりません。

その理由は、あなたは自分にとって馴染みのあるスマートフォンや傘が黒色でないことは既に知っており、さらにはそれらがカラスではないことも当然理解しているためです。

つまりあなたが既に知っていることをいくら検証しようとも、それが真実へ近づくことにはならないということです。

よってこのケースなら少なくとも、あなたにとって未知のものについて検証する必要があります。

これも当然のように思われるかもしれませんが…とはいえ、以上が考え得る2つの回答例です。

『ヘンペルのカラス』を簡単にわかりやすくのまとめ

以上のことからこの『対偶論法』を使った検証法自体には、論理的に問題はなくとも、場合によって、実際的に使うことには難しい側面があるといえそうです。

また最後にこれは個人的な意見になりますが…たとえこの検証法で答えに辿り着くことができるにせよ、”カラスを調べずしてカラスが黒いことを証明”するのは、なんとも奇妙な気もします。

(とはいえ、だからこそ、『ヘンペルのカラス』が思考実験として紹介されることがあるのかもしれませんが…)

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余談:白いカラスもいる

ちなみに余談ながら、カラスは白いものもいるみたいです。

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参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

>>論理パラドクス 論証力を磨く99問

>>よくわかる思考実験

・Hempel, C. G. “Studies in the Logic of Confirmation(I.)” Mind ns 54(1945)

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