【『フランケンシュタイン』で伝えたいことを考察】あらすじも簡単に要約【メアリー・シェリー】

フランケンシュタイン

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名作:『フランケンシュタイン』のご紹介です。

あらすじは全文ふりがな付きで、読み聞かせができるようにまとめています。一つの参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 全文ふりがな付きのあらすじ要約
  2. 作者紹介
  3. 考察:「伝えたいことは何だったのか?」
  4. 『フランケンシュタイン・コンプレックス(症候群)』について
  5. 物語様式の考察
  6. 参考文献

『フランケンシュタイン』のあらすじを簡単に要約

まずは考察の前提となるあらすじと作者紹介です。

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物語:心は人間のまま

フランケンシュタイン

ほっきょく探検隊たんけんたいたいちょう:ロバート・ウォルトンは、あねのマーガレットにがみきました。

そこには、ウォルトンが探検たんけんちゅうつけた、ヴィクター・フランケンシュタインという学者がくしゃみずかかたった、かれしん半生はんせいがつづられていました。

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ヴィクター・フランケンシュタイン博士はかせは、ゆうしゅう学者がくしゃでした。

博士はかせは、ながけんきゅうすえ人造人間じんぞうにんげん*をつくることに成功せいこう

博士はかせがつくった人造人間じんぞうにんげんは、人間にんげんおなかんじょうっていました。

 

しかし、そのからだは、人間にんげんたいあつめてつくったにぎません。

そのため、はまるで怪物かいぶつのように、みにくいものでした。

 

しかもその怪物かいぶつは、あるとき博士はかせすきせたたん実験室じっけんしつからしてしまいます。

そと怪物かいぶつは、たのしそうにしょくをしているぞくて、人間にんげんしたしみをかんじました。

怪物かいぶつはそれから、ひとこえをかけるようになりました。

 

しかし、怪物かいぶつひとは、そのからめいをあげてしてしまうまつです。

なかには、こんぼう*でなぐりかかってくるひともいました。

 

怪物かいぶつは、そんな毎日まいにちかえすうち、つよ独感どくかんあじわうようになります。

「なんということだろう…」

やがてこころきずついた怪物かいぶつは、そこで、ふとがつきました。

 

「(わるいのは、こんな姿すがたぶんをつくった博士はかせなのではないか…?)」

 

そうおもった怪物かいぶつは、博士はかせまえ姿すがたあらわし、ぶんくるしさをすくうようもとめます。

そしてぶん結婚けっこんあいをつくるようにつよもとめたのでした。

 

博士はかせは、怪物かいぶつみにく姿すがたにしてしまったことに、責任せきにんかんじていました。

そのため、博士はかせ怪物かいぶつねがいをれ、もう一体いったい怪物かいぶつのためにつくることを約束やくそくします。

 

しかし、博士はかせはそのもう一体いったいをつくりはじめてしばらくしたとき、あることにがついてしまいます。

「(ふうになった怪物かいぶつは、やがてどもをつくる…すると、怪物かいぶつかずはどんどんとえていき、さい人間にんげんほろぼすのではないか…?)」

 

そうあんかんじた博士はかせは、けっきょく実験室じっけんしつそうをすべてこわしてしまいました。

それをった怪物かいぶついかります。

怪物かいぶつはいったんぼうっただけに、そのいかりをおさえることができませんでした。

 

そして怪物かいぶつは、いかりのままに、博士はかせつまくびめ、ころしてしまったのです。

 

博士はかせつま結婚けっこんしたばかりでした。

博士はかせぶんがしたおこないを、つよ後悔こうかいします。

そしてそれとどうに、博士はかせ怪物かいぶつたいするどうじょうりました。

 

のこったのは、にくしみだけです。

 

さすがに博士はかせだまってはいられません。

博士はかせ怪物かいぶつころすため、ふくしゅうしんやし、武器ぶきって怪物かいぶつあといかけました。

 

怪物かいぶつはそんな博士はかせをあざわらうかのように、あちこちとまわります。

そこで怪物かいぶつさいかったのは、ほっきょくけんでした。

博士はかせ極寒ごっかんなかたいりょくうしないながらも、ひっ怪物かいぶつつづけます。

しかし、ついに博士はかせちからきてしまいました。

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その博士はかせほっきょく探検隊たんけんたいたいちょう:ロバート・ウォルトンがった一隻いっせきふねたすけられます。

しかし、博士はかせ心身しんしんよわっていました。

博士はかせはそこで、ウォルトンにしんのこれまでの体験たいけんかたったすえ、ついにくなってしまいました。

 

ふねすみでそのようとどけていた怪物かいぶつは、やっと満足まんぞくします。

そして、怪物かいぶつはこういました。

 

あとは、ぶんのこのみにくからだほっきょくてんくし、はいにするだけだ…」

 

怪物かいぶつは、ふねりてあるはじめました。

その怪物かいぶつゆくものは、だれもいません。

(おわり)

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よう説明せつめい

人造人間じんぞうにんげん人型ひとがたロボットなどの、人間にんげんかい人工生命体じんこうせいめいたいのこと

*こんぼう武器ぶきにもなるふとぼうのこと

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作者:メアリー・シェリー

作者:メアリー・シェリー(1797~1851年)

イギリスの小説家。夫は詩人だった。

本作:『フランケンシュタイン』は作者が20歳のとき、匿名という形で出版しています。

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「『フランケンシュタイン』で伝えたいことは何だったのか?」【考察】

では、「本作:『フランケンシュタイン』で、作者が伝えたいことは何だったのでしょう?」

参考文献を元に、考察しました。

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注:ここからの情報は自分独自の考察に過ぎません。

間違っていないとは言い切れませんので、あくまで一つの参考にして下さいませ。

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『人為的に人体を蘇生することへの問題提起』

結論からいうと、本作の作者:メアリー・シェリーは、本作を通じて、『人為的に人体を蘇生することへの問題提起をしたかった』のではないかと自分は考察しました。

つまりは現在でいうところの『生命倫理』にも通ずる問題提起です。

(前略)自然の営みである生命にどこまでじん的な操作を加えることが許されるかについて考えることが求められ、哲学・宗教・道徳・法律などの分野の知識を総合して、生命をめぐる問題について倫理的な判断をくだそうとする生命倫理(バイオエシックス)が成立した。

(『倫理用語集』290ページ 生命倫理(バイオエシックス) より)

まず前提として、元々、本作の作者がフランケンシュタインというキャラクターを創作したきっかけには、作者が生体電気*による人体蘇生実験の様子を人づてに伝え聞いたことにあったという説があります。

*生体電気:生物の身体そのものが、電気を発し、金属を接続することによって放電、痙攣が生じること

その実験の詳細は人体実験のページでまとめているのでここでは簡単にお伝えさせていただきますが、1780年に物理学者:ルイージ・ガルヴァーニの実験に始まり、その甥であるジョヴァンニ・アルディーニが人間に対して行った人体蘇生実験のことを指しています。

悲しみに暮れる少女 【『人体実験』一覧】恐ろしい人体実験の実例と歴史【狂気】

結局、その実験自体は成功することはなかったものの、実験の様子は当時のイギリスの新聞:『ロンドン・タイムズ』の報道に取り上げられたこともあり、大きな話題を呼んだそうです。

そこではアルディーニによって電極棒を押し当てられた死体は一時的ではありながらも、両足をバタつかせたり、右手の拳を突き上げたりするなどの反応はしたとの様子が伝えられていたそうです。

新聞紙

見方によっては死者を愚弄しているように見えなくもない実験であったようにも思います。

そして本作ではこれも見方によっては誰も救われない結末となっていたわけですが、その理由は作者が人為的に人の命を蘇生させることへの問題提起、もしくは警告の意味を込めたからだったのではないか…と自分は考察したということです。

もちろん繰り返す通り、以上のことは自分の考察に過ぎません。

作者が伝えたかったことはまったく別にあったのかもしれませんし、むしろ伝えたいことなど特になかったことも十分考えられます。

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『フランケンシュタイン・コンプレックス(症候群)』とは?」【本作が由来】

なお、本作:『フランケンシュタイン』は、『フランケンシュタイン・コンプレックス』の由来となった作品でもあります。

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『人造人間などの生命を創造する憧れと、それによって人間の存在が脅かされるかもしれないという恐怖が入り混じった複雑な心理』

フランケンシュタイン・コンプレックス』とは、『フランケンシュタインのような人造人間などを創造する憧れと、それによって人間の存在が脅かされるかもしれないという恐怖が入り混じった複雑な心理のこと』です。

フランケンシュタイン症候群』とも呼ばれています。

一種の心理現象です。

心理的側面 【心理現象一覧】面白い有名な心理現象の名前と意味大全【心理学を大学で勉強した自分が徹底調査】

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『フランケンシュタイン』の物語様式の考察

最後は物語様式にまつわる考察です。

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『枠物語』の様式が使われている

本作:『フランケンシュタイン』では、『枠物語』の様式が使われています。

白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)のいけおうさんは、この『枠物語』を次のように解説して下さっています。

伝聞形式や過去回想形式等を用いることで作品中に一つ以上の物語を埋め込んでいる、入れ子型構造の物語形態をいう。枠小説とも。

(『童話学がわかる』168ページ より)

つまりこの作品:『フランケンシュタイン』においては、冒頭で北極探検隊の隊長:ロバート・ウォルトンが、姉のマーガレットに書いた手紙の内容が、この『枠物語』になっているということです。

白百合女子大学文学部助教授(当時)のつじあけさんは、このような『枠物語』の様式を、次のように解説なされていました。

枠物語とは古くは『千一夜物語』にもさかのぼることのできる、物語の中に物語のある入れ子構造のことであるが、今世紀になってからの枠物語の大半は、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」のように、<ここ>に住む主人公たちが、異世界へいざなわれて冒険をし、<ここ>にもどってくるという形をとるようになった。

(『童話学がわかる』147ページ より)

宇宙のファンタジー 『枠物語』とは?代表作品12例からその効果を考察【わかりやすく説明】

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【『フランケンシュタイン』が伝えたいことを考察】あらすじも簡単に要約【メアリー・シェリー】まとめ

本作:『フランケンシュタイン』は、恐ろしくも悲しい物語でした。

そしてその物語には、人の命を考えさせられる側面があったような気がします。

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参考文献

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