心理学実験:『泥棒洞窟実験』がゼロからわかるようにまとめました。
専門用語は極力使わず、以下のことが順にわかるようになっています。参考にして下さいませ。
- 基本事項
- 実験内容
- 実験結果
- 参考文献
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『泥棒洞窟実験』とは?
まずは「『泥棒洞窟実験』とは?」の基本的なことです。
『『集団間葛藤』のリアルを再現した心理学実験』
『『泥棒洞窟実験』とは一言でいうと、『集団間葛藤』のリアルを再現した心理学実験のこと』をいいます。
『集団間葛藤』というのは、簡単にいうと以下のことです。
『集団間葛藤』とは『集団間の対立』のこと
【集団間葛藤とは…】
集団間の対立のことで、自分がいる集団には肯定的な感情を抱く一方、他人がいる集団には否定的な感情を抱くこと
泥棒洞窟実験はこれらの人間心理を実験によって再現しました。
社会心理学者:シェリフらが実施
実験を実施したのは社会心理学者:シェリフ夫妻らです。
1954年:オクラホマ州の”泥棒洞窟”と呼ばれるキャンプ場で行われた
1954年:アメリカのオクラホマ州にある“泥棒洞窟”と呼ばれるキャンプ場で行われました。
これが泥棒洞窟実験と呼ばれる理由です。
実験の期間は3週間に渡りました。
10代前半の少年たち20数名が参加
実験に選ばれたのは、10代前半の少年たち20数名です。
少年たちの引率には大人が複数人付き添いましたが、その全員が、実験のために指導を受けたスタッフでした。
泥棒洞窟実験の流れ
実験内容の流れです。順に見ていきます。
2つのグループに分けられた少年たちがキャンプ場へ
まず前提として、実験に選ばれた少年たちは2つのグループに分けられます。
そのうえでキャンプ場(泥棒洞窟)に連れていかれました。
※お互いの存在は知らされていない
なお、この段階では、少年たちはお互いのグループの存在を知らされていません。
<第1段階>仲間意識の形成
実験は3段階に渡って行われました。
まず第一段階は『仲間意識の形成』です。
少年たちはキャンプ場での共同生活を通じて、グループ内での仲間意識を強めます。
時にはハイキングなども行われ、少年たちは実験期間の3週間のうち、実に1週間ほどをかけ、“集団としての結束”を育んでいきました。
それぞれのグループの少年たちは、自分たちが所属するグループに、『イーグルズ』や『ラトラーズ』という名称も付けます。
グループへの愛着をより深めていきました。
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※グループ名の意味についての補足
イーグルズ(Eagles):ワシ
ラトラーズ(Rattlers):ガラガラヘビ
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その最中、少年たちは引率していた大人たちから、大きく次の2つのことを告げられます。
- 実は集団はここ以外にも、もう一つ存在する
- その集団とは近い内に競技を通じて対戦する
集団内でより仲間意識を強めていた少年たちは、このことを告げられたことで、まだ見ぬ相手集団に対して敵対心を持つようになっていました。
<第2段階>集団同士の対立
第2段階は『集団同士の対立』です。
少年たちは野球や綱引きなどを通じ、集団同士で対戦しました。
対戦は盛り上がりを見せ、少年たちは相手集団に勝つために、集団内の個人の役割を明確化するなど、より勝利に執着するようになったといいます。
集団間の対戦で少年たちの敵対意識が助長された理由には、以下の例が指摘されています。
- 集団内で強まった仲間意識
- 相手に負けたくない本能
- 勝つともらえる賞品の存在
この第2段階に行われた少年たちへの調査によると、『ほとんどの少年が自分と同じ集団のメンバーを肯定的に評価していた一方、相手集団に対しては否定的に評価していた』ことが明らかとなっています。
つまり集団間葛藤が助長されていたということです。
<第3段階>集団間葛藤の解消
最後の第3段階では、ここまで助長されてきた『集団間葛藤の解消』が試みられました。
・失敗に終わった”集団同士の交流”
そこでまず実施されたのは、“集団同士の交流”です。
食事や映画鑑賞などを集団同士が交わって行うことで、集団間の対立の修復が促されました。
しかし、結論からいうと、これらはすべて”逆効果”。
両グループの接触は、かえって事態を悪化させることが判明し、残飯の投げ合いや罵声などが飛び交う結果に終わりました。
・『上位目標』が集団間葛藤を解消した
そこで実施されたのが、『上位目標』の導入です。
これは『お互いの集団が協力しないと達成できないような目標のこと』で、実験では次のことなどが実際に導入されています。
- 故障した飲料水貯蔵タンクの修理
- 立ち往生した水を運び上げるトラックをロープで引っ張り救出
どちらも水不足が絡んだ死活問題です。
そのため、少年たちは集団間で力を合わせ、これらの上位目標を達成しました。
すると対立した集団間で罵声などが減少。
実際にこれらの上位目標が達成された後に少年たちに実施された調査でも、『相手集団を肯定的に評価する少年たちが増えていた』ことが明らかとされています。
上位目標によって、集団間葛藤が解消された結果となりました。
泥棒洞窟実験の実験結果
実験結果のまとめです。わかりやすさを重視し、要点のみを取り上げています。
【結論】上位目標による集団同士の”協力”は、集団間葛藤を解消し得る
集団間の対立(集団間葛藤)の解消には、集団同士が協力しないと達成できないような上位目標の導入が効果的だった
【実験後の調査結果】集団間の友好関係が改善
上位目標を達成した後の調査によると、相手集団に対して好意的に評価する割合が飛躍的に向上していた
泥棒洞窟実験のまとめ
敵対している集団同士の対立の解消には、時に集団同士の交流ではなく、上位目標による協力の方が効果的となり得る。
このことは現実世界にも広く活かせる側面がありそうだ。
それでは。
参考文献
ページをつくるにあたり、大いに参考とさせていただきました。
ありがとうございました。
>>徹底図解 社会心理学ー歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで
・Sherif, M., Harvey, O. J., White, B. J., Hood, W. R., & Sherif, C. W.(1961)Intergroup conflict and cooperation: The Robbers Cave experiment. University of Oklahoma.
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