【『コンドルセのパラドックス』の例をわかりやすく】数学者が明らかにした多数決の落とし穴

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思考実験:『コンドルセのパラドックス』についてです。

参考文献を元に、思考実験形式にしてまとめています。

一つの参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 『コンドルセのパラドックス』の例
  2. そのカラクリ
  3. 2つの代替案
  4. 経済学者:アローの結論
  5. 参考文献

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『コンドルセのパラドックス』の例をわかりやすく

それではここからは、『コンドルセのパラドックス』の概要と内容を、例を元にしてご紹介させていただきます。

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多数決の落とし穴

『コンドルセのパラドックス』とは、『多数決にまつわる問題』です。

多数決のパラドックス』や、『投票の逆理』とも呼ばれています。

18世紀のフランスの数学者:コンドルセ侯爵が明らかにしました。

そこでは、コンドルセは次のような総当たり決戦方式を例にして、その内容を明らかにしています。

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[問題文]

あるとき、とある仲の良い三人組が、旅行の計画を立てています。

挙手をする男の子

旅行先の候補は、国内だけでなく、海外も含めて絞り込まれました。

そこで残った候補地は、『日本』、『アメリカ』、『スペイン』の3カ国。

最終的にどこへ行くかは、三人による多数決で決められることとなりました。

そこでまず行われたのが、『日本』と『アメリカ』による多数決です。

すると日本は1票、アメリカには2票が投じられたので、アメリカが次に進むことになりました。

次に行われたのは、勝ち上がった『アメリカ』と、『スペイン』による多数決です。

そこでは、アメリカに1票、スペインに2票が投じられました。

よって以上の結果から、旅行先はスペインに決定。

さっそく三人は、旅行会社に行き、スペイン行きの旅行プランを予約することにしました。

するとそこで三人は、旅行会社から、“アメリカ行きの旅行プランには空きがなくなった”とのことを告げられます。

…とはいえ、多数決によって旅行先はスペインに決まったはず。

迷わずスペイン行きを予約してしまえば、三人にとっては何も問題はありません。

ですが、ここで三人組の一人が、遊び半分で次の提案をしました。

一度、スペインと日本の2カ国だけで多数決をとってみないか?

するとどうでしょう。

その結果、“多数決はスペインが1票、日本が2票となり、日本が多数という結果”になってしまいました。

当初の多数決では最下位だったはずの日本が、逆転勝利を収めたのです。

さて、以上をもって問題です。

なぜ、このようなことが起こったのでしょう?

以上が、『コンドルセのパラドックス』の思考実験になります。

なお、前提としてこの思考実験には、イカサマはまったく使われていなかったと仮定して下さい。

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『コンドルセのパラドックス』のカラクリ

それでは解答です。

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『対戦順で結果が左右される』という事実があった

結論からいうと、このパラドックスには、『対戦順によって結果が左右される』というカラクリがありました。

そこでまずはこのことを理解するため、さきの問題における三人の希望順を今一度表にして整理してみます。以下の通りです。

三人(A、B、C)の希望順

1位 2位 3位
A 日本 スペイン アメリカ
B スペイン アメリカ 日本
C アメリカ 日本 スペイン

そしてこの希望順を元にしてまず問題で行われたのが、『日本』と『アメリカ』による多数決でした。

この勝負はさきにご紹介した通り、アメリカが2対1で日本に勝利を収めています。

(補:三人のうちBとCが希望順を”アメリカ>日本”にしていたためアメリカが勝利)

続いて勝ち上がった『アメリカ』と『スペイン』の対戦では、スペインが2対1でアメリカに勝利。スペインの優勝で幕を閉じました。

(補:三人のうちAとBが希望順を”スペイン>アメリカ”にしていたためスペインが勝利)

時空間

ですが、「もし仮に最初の多数決で、『日本』と『スペイン』の対戦が行われていたらどうだったでしょう?」

これも以下の表を見ればご理解いただける通り、もしその多数決が実現していたら、当初は負けていた日本がスペインに勝利を収めていたことが明らかとなっています。

三人(A、B、C)の希望順

1位 2位 3位
A 日本 スペイン アメリカ
B スペイン アメリカ 日本
C アメリカ 日本 スペイン

*AとCは日本>スペインの希望順にしているため、結果として2対1で日本多数となっている

これが『対戦順によって結果が左右される』カラクリです。

つまり一見すると至極公平のように思えるかもしれないこの多数決は、もし仮にこれらのカラクリを知っている立場の者が対戦順を操作できる権限を持っていた場合…その者は多数決の結果すらも操作できてしまっていたことになります。

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多数決に不都合は避けられないのか?【考案された2つの代替案】

では、多数決で物事を決めるうえで、不都合な面は避けられないのでしょうか?

そこで考案された代替案が、次の2つの方式です。

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<1>『順位評点方式』

まず一つ目が『順位評点方式』です。

フランスの数学者:ジャン・シャルル・ド・ボルダによって考案されたこの方式は、その名の通り、『順位に応じた評点を割り振る方式』となります。

たとえば、今回のケースのような三者択一の場合だと、”1位に3点、2位に2点、3位に1点”といった具合に、『ボルダ点』と呼ばれる評点を割り振ることにより、各順位の重みを明確化します。

減点する女性

これを使えば順位によって価値が生まれるため、一見すれば、そうでない方式と比べて公正な多数決になりそう…と思う方もいるかもしれません。

少なくともこのような方式を使った投票の方が、投票した側の『最大選好』を反映しやすいという意見はあるかと思います。

コミュニケーション

ですが、仮にこの方式を使ったとしても、こんな結果が起こり得ます。

たとえば、2位に票が集中し、集計の結果、その2位が1位となるケースです。

では、実際にこのような結果は、どの程度出るといえるのでしょうか?

実は数学上では、”たった一人でもその結果とまったく同じ投票をした人がいるだけ”で、さきのような結果が生じ得ることが明らかとされています。

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<2>『上位二者決選投票方式』

二つ目は『上位二者決選投票方式』です。

これは単独投票で1位の得票数が過半数に満たないことを条件にして、『上位二者による決選投票で決める方式』になります。

この方式の採用例としては、日本における内閣総理大臣指名選挙や、オリンピックの開催地決定、フランスの大統領選挙などなど…広く採用例が挙げられます。

天使と悪魔

しかし、このやり方だと単独投票の欠点を完全に補えるとまでは言い切れず、選出までに時間や手間がかかる不都合もあります。

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経済学者:アローの結論

以上を踏まえると、どうにも理想的な投票方式など存在しないかのように思われる方がいるかもしれません。

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『完全に民主的な投票方式は存在しない』

実はこの疑問については、アメリカの経済学者:ケネス・アローが、数学的に一つの結論を導いていることが知られています。

それは、『完全に民主的な投票方式は存在しない』ということです。

>>アローの不可能性定理

注意 『アローの不可能性定理』をわかりやすく【民主主義の欠陥】

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『コンドルセのパラドックス』の例をわかりやすくまとめ

『コンドルセのパラドックス』では、多数決のポテンシャルに焦点があてられていました。

日常的な問題はもちろん、民主主義の在り方についても考えさせられるような内容です。

皆さんはどのように考えるでしょう。

それでは本日は以上です<(_ _)>

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参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

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