【『アッシュの同調実験』をわかりやすく】人は、集団に屈する【ソロモン・アッシュの心理学実験】

アッシュの同調実験

心理学実験:『アッシュの同調実験』のまとめです。

実験のポイントが以下の順にゼロからでもわかるように努めました。

このページでわかること
  1. 実験内容
  2. 実験結果
  3. 参考文献

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なお、アッシュの実験に留まらない『同調』そのものにまつわる内容も、補足的にまとめてあります。

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『アッシュの同調実験』の前提内容

アッシュの同調実験』とは『自分の意見や信念を曲げてまで、多数派の意見や行動に流されてしまう『同調』を検証した実験』です。

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心理学者:アッシュが実施

ポーランド系アメリカ人の心理学者:ソロモン・エリオット・アッシュが実験を行いました。

元々、ユダヤ人だったアッシュは、当時のドイツ国民がナチズムに同調していく様子を目撃。

アメリカに亡命後は、生涯に渡り、同調にまつわる研究と向き合い続けました。

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余談ながら、この実験でアッシュの助手をしていたのはミルグラムでした。

電気椅子 『ミルグラム実験(アイヒマン実験)』とは?【ゼロからわかる心理学実験】

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1951年に行われた古典的研究

『アッシュの同調実験』は『古典的研究』と評価されています。

これまでに数多くの追試研究が行われてきました。

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『アッシュの同調実験』の流れ

実験内容です。

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<1>実験協力者の大学生が集められる

まず実験に協力してもらう大学生たちが集められました。

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<2>7~9名ごとにグループ化

集まった大学生たちは7~9名ごとにグループ化されます。

注:一部例外もあった

実験では、一度に1グループを対象にして行われました。

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<3>”一人ずつ順番”に『左側と同じ長さの線分を、右側の3種類の線分から1つ選んでもらう』ことが実施された

アッシュの同調実験

図*:標準刺激(左)と比較刺激(右)

*上記の図は参考文献を元に、当サイトの運営者である自分が自作したものです

グループ内の各実験協力者には、上のような図から『左側と同じ長さの線分を、右側の3種類の線分から1つ選んでもらう』ことが求められました。

“全員の実験協力者に一人ずつ順番に選んでもらいました”が、実験協力者がやるべきことはこれだけでした。

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※実験協力者の一人以外は全員が”サクラ”

とはいえ、“実験に参加したグループ内の実験協力者は、一人を除いて全員がサクラ(≒やらせ)”でした。

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※検証されたのは『サクラの存在を知らない本当の実験協力者は、同じ集団内のサクラの誤答に釣られるのか?』だった

つまり実験では、実験者が依頼した回答をサクラが答えることを前提に、『集団に紛れたサクラが誤った答えを言ったとき、サクラの存在を知らない本当の実験協力者の回答にどう影響するのか?』が検証されていたことになります。

[+α]誤答や参加者の人数には複数のパターンを用意、検証

補足ながらサクラたちの誤答や参加人数には様々なパターンが用意、検証されました。

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『アッシュの同調実験』の実験結果

実験結果です。

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“1人”で行ったときの”正答率は99%以上”

まず前提として実験が集団ではなく”個人”で行われた場合、問題への”正答率は99%以上”でした。

つまり一人で回答する分には1%も誤答しないほど、ほぼ間違いようがない問題でした。

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しかし、”サクラの7名全員が同じ誤答”をすると、”誤答率は32%にまで悪化”

しかし、サクラが7名で、その全員があえて間違った同じ回答をした場合、本物の実験協力者の誤答率は32%にまで悪化しました。

明らかな“同調”が確認された結果です。

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一方で”サクラの1名だけが他のサクラと違う回答”をすると、”誤答率は5.5%”になった

一方でサクラの1名が他のサクラと違った回答をしたら、本物の実験協力者の誤答率は5.5%にまで急激に低下しました。以下が実験で確認されたパターンです。

誤答率が5.5%に低下したパターン
  1. サクラ7名のうち1名だけがあえて正答する
  2. サクラの1名だけが他のサクラとは違った誤答をする

【結論】『人は集団に屈しやすく、特に多数が全員一致する状況では顕著』

以上のことから、実験結果は『人は集団の同調圧力に屈しやすく、特に集団内の多数が全員一致する状況においては顕著』といえるものとなりました。

[+α]サクラの人数と同調の起こりやすさは相関【しかし、限界もあった】

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サクラの人数と同調の起こりやすさは相関していました。以下がサクラの人数を変えたときの誤答率です。

サクラの人数と誤答率の関係
  1. サクラ1名⇒誤答はほぼナシ
  2. サクラ2名⇒13.6%の誤答
  3. サクラ3名⇒31.8%の誤答

つまり人数が増えれば増えるほど、集団の圧力は強まるのかもしれません。

しかし、実験ではサクラの人数を4名以上にしても、それ以上誤答率が上がることはほとんどありませんでした。

サクラの人数と同調の起こりやすさに相関はあっても、限界がある可能性もあるのかもしれません。

[+α]”集団圧力”と”斉一性の原理”

なお、以上の実験を行った心理学者:アッシュは、この集団に同調するよう働く拘束的な力を”集団圧力“と呼んでいます。

そして個人がその集団圧力に屈していく原理を、”斉一性せいいつせいの原理“と呼びました。

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『同調』が起こる2つの理由

異端

『アッシュの同調実験』をはじめとした同調が起こる理由です。ここでは2つご紹介させていただきます。

[1]多数派の意見や行動は正解に近いと思い込みやすい(=『情報的影響』)

まずは『多数派の意見や行動は正解に近いと思い込みやすいから』です。

情報的影響』と呼ばれています。

[2]周りに認められたい欲求(=『規範的影響』)

周りに認められたい欲求があるから』との指摘もあります。

規範的影響』といいます。具体的には次のようなものです。

規範的影響の事例
  1. 周りからの拒絶を避けたい
  2. 集団の和を乱したくない
  3. 集団からの同意が欲しい
  4. 承認や賞賛が得たい
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『同調』を加速させる3つの”状況的”要因

同調を加速させる3つの状況的な要因についてです。

「1」集団の大きさ

1つ目は『アッシュの同調実験』でも確認された『集団の大きさ』です。

集団の人数と同調の起こりやすさには、限界はあれど少なからず相関がある可能性が示唆されています。

「2」多数派の全員一致

2つ目は『多数派の全員一致』です。これも『アッシュの同調実験』でも確認されました。

逆に集団の中に一人でも、集団に異を唱える者がいれば、同調の効果は著しく低下する可能性があります。

「3」『集団凝集性』の高さ

続いては『『集団凝集性』の高さ』です。

集団凝集性』とは『集団に所属する個人を、集団に引き付けて留まらせるように働く力』のことになります。

これも同調を助長する可能性が指摘されています。

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『同調』しやすい3つの”個人的”要因

最後は同調しやすい個人についてです。

身分や性格や気質など、個人的な要因に焦点を当てた内容になります。

「1」集団内において地位が低い

集団の中で地位が低い人』です。

これに当てはまる人は同調しやすいとされています。

「2」自尊感情が低い

次に『自尊感情が低い人』です。

同調はもちろん、流されやすさにつながる可能性が指摘されています。

「3」親和要求が高い

親和要求の高い人』です。

以上3つのことから、もしかしたら同調は、その人を集団に溶け込ませるための自己防衛のような側面もあるのかも…しれません。

長くなりましたが以上になります。

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アッシュの同調実験をわかりやすくまとめ

人は集団の同調圧力に屈しやすい。

特に多数が全員一致するような状況においては、より顕著である。

よって集団の総意に抗うことは、想像以上に困難を極めるのかもしれない。

そこには理性を超えた見えない力が、強く影響を及ぼし得るからである。

しかし、もし集団に異を唱える者が一人でもいた場合、同調の影響は著しく低下し得る。

それでは。

参考文献

ページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

アッシュの同調実験

>>社会心理学

・Asch, S. E.(1951)Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments. In H. Guetzkow(Ed.), Groups, leadership and men: Research in human relations. Carnegie Press. pp. 177-190.

・Asch, S. E. 1955 Opinions and social pressure. Scientific American, 193, 31-35.

同調が起こる理由

>>Deutsch, M., & Gerard, H. B.(1955)A study of normative and informational social influences upon individual judgment. Journal of Abnormal and Social Psychology, 51, 629-636.

同調を加速させる要因の一部

・Allen, V. L.(1965)Situational factors in conformity. In L. Berkowitz(Ed.), Advances in experimental social psychology. Vol. 8. Academic Press, pp. 133-175.

集団凝集性

・Festinger, L., Schachter, S., & Back, K.(1950)Social pressures in informal groups: A study of human factors in housing. Stanford University Press.

関連ページ

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