とある保護者
【公文式のまとめページ】今まで伝えてきたすべて
トモヤ
結論からいうと、公文でも思考力(考える力)は伸びます。
それもそのはずで、公文で勉強する内容は、頭を思考停止させた状態で解けるような問題ばかりではないので、『公文で勉強しても思考力(考える力)は伸びない!』という意見はデタラメです。0か100かの話では語れません。
ですが、『公文だと思考力(考える力)は伸びにくい』というのもまた事実です。
そこで今回は、その事実に至った以下の理由を、公文と進学塾で講師をしていた僕の経験を交えつつお伝えさせていただきます。
- 『公文は問題を考えるより、問題を処理する勉強法』である事実
- 【実際の声をご紹介】『公文では考える力や思考力は伸びない!』と主張する公文式経験者たちの声
注)『思考力』や『考える力』という言葉はとても曖昧です。
思考力や考える力の定義や解釈は様々ですし、実際、教育心理学や発達心理学などの学問の分野でも明確化されていません。
また思考力の有無を裏付ける質の高い研究も僕が知る限りではありません。
そのため、ここでは逆説的ではありますが、便宜上、『思考力(考える力)=思考停止していないこと』とさせて頂きます。つまり頭を使って何かを考えることが、ここでお伝えする思考力(考える力)の定義です。
タッチ⇒移動する目次
公文では思考力(考える力)が伸びづらい理由【問題を考えて解くのではなく、問題を処理する勉強法】
冒頭で僕は、公文で勉強しても思考力(考える力)は伸びにくいということをお伝えしました。
その理由は、『公文の勉強は問題を考えるより、問題を処理する側面が強いから』です。
この理由について、順にお伝えさせていただきます。
繰り返し学習だから【処理能力と暗記力は身につく】
まず公文式学習の特徴の一つには、『繰り返し学習』というものがあります。
これは似たような問題を教室や宿題で繰り返し解く公文式学習の代名詞の一つですが、思考力(考える力)が伸びにくくなる原因になります。
繰り返し学習は、問題をこなすことで処理能力と暗記力は身についていきますが、慣れてくると問題を考えなくても、機械的に処理できるようになるためです。
実際に僕が公文で講師をしていたときも、繰り返し学習によって解き方や答えを丸暗記する生徒がいましたし、同じ間違いを何度も繰り返す生徒もいました。
進学塾で講師をしていたときも、公文式経験者の生徒はこの傾向がとても高かったですし、進学塾の講師たちの間でも、公文に対して僕と同じような意見を持つ方は多かったです。
また『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』という公文をテーマにした本のなかにも、このことを指摘する公文式経験者たちの声があります。
例えば、書籍内の時点で東大の2年生であり、東大医学部への進学が決まっていた千石智則さん(仮名)は、公文で勉強した自身の経験を以下のように振り返っています。
公文式は考える力を養うというよりは、処理能力を高めるという側面が強いですよね。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
計算能力はもちろん、英語だと文法を考えないでもわかるようになるまでひたすら練習するという感じでした。
たとえば現在完了だったら現在完了の練習をずっとやっていくと、自然にそれが頭に叩き込まれて、悪い面というと、その裏返しです。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
公文は講師が生徒に手取り足取り教える塾ではありません。
なので生徒が自力でも解けるように、似た問題を繰り返し解いてもらうことは理にかなっています。
繰り返し学習によって基礎学力を固め、徐々に難しい問題へと自主的に進めることを目的とする公文の意図もよくわかります。
しかし、実際に数多くの生徒を見た僕の経験からすると、繰り返し学習は生徒を思考停止させてしまう原因となっていました。
例題にほぼ答えがあるから【自主性は伸びるかも】
また『例題にほとんど答えがある』というのも公文式教材プリントの大きな特徴です。
これは生徒の自主性を伸ばす、講師が教えない公文だからこその工夫です。
公文の経験者である京大生の磯田美奈子さん(仮名)も、この点について指摘しています。
説明は一切なく、プリントにある例題を参考にして同じように解いてみるというのが公文式のやり方。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』36ページより)
ですが、公文のその『例題にほとんど答えがある』という特徴も、生徒の思考力(考える力)が伸びにくくなる原因となっています。
なぜなら、公文の例題はほぼ答えを教えているようなケースも少なくないからです。
僕が公文で講師をしていたときも、例題と本題にほとんど違いが見られない問題については、生徒がほとんど何も考えずに解いているようなところを何度も目にしていました。
教育の仕事に携わる石川一郎さんも、公文の教材プリントがマニュアル通りに解けることを指摘しています。
「公文式は、ある意味究極の勉強システムです。課題がはっきりしている。正解のある問いが出される。
解き方は提示されているので、基本的にはそこに当てはめていけばいい。
要は、マニュアルどおりに進めていけば必ず正解にたどり着き、正解にたどり着くと次のステージに行ける。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』132ページより)
生徒が自力で解けるように例題をわかりやすくすることは、決して悪いことではありません。
しかし、例題はあくまで本題を解くためのヒントとなるべきなので、あまりにも親切すぎることは問題ですし、本題と違いが見られない現状はもっと問題です。
よって以上のことが、僕が『公文では思考力(考える)は伸びにくい』と考える理由になります。
実際に僕が見ている限りでも、公文式経験者は思考力(考える力)が未熟だと感じることが多々あった
そして繰り返す通り、僕が公文と進学塾で講師をしていたときに感じていたのは、公文を経験した生徒の思考力(考える力)の低さです。
繰り返し学習によって解き方や答えを丸暗記してしまっている生徒や、同じ間違いを何度も繰り返す生徒、例題に書いてあるままに本題を解く生徒などなど…。
進学塾でも講師をしていたので、余計に公文式経験者の生徒の傾向が目についたのかもしれませんが、他塾の関係者の方々にこのことを話しても、驚くほど同意されることが多かったことを記憶しています。
なのでもしかしたら、塾業界のなかでは、『公文では思考力(考える力)は伸びない』というのは少なからず常識になっているのかもしれません。
『公文では思考力(考える力)は伸びない!』と断言する方々の意見
実際に『公文では思考力(考える力)は伸びない!』と主張する方は数多いです。僕も公文と進学塾で講師をしていたときによく耳にしました。
そこで、ここでは公文をテーマにした本のなかから、そういった意見を持つ方々の意見をご紹介させて頂きます。
どれも理由がきちんとしたものに厳選したので、参考になるはずです。
またここでは冗長になることを避けて一部のみのご紹介とし、それ以外は当ページの最後の『『公文では思考力(考える力)は伸びにくい!』と主張する方々の意見』にまとめておきました。
これも興味がある方はご覧下さいませ。
東大医学部生:千石智則さん(仮名)『公文式はあまり考える力を養わない』
まずは書籍内で東大の2年生であり、東大医学部への進学が決まっていた千石智則さん(仮名)の意見です。
千石さんは公文で勉強していた経験から、公文では基礎固めができるなどのメリットを挙げながらも、考える力が伸びないことが明確なデメリットだったと話します。
公文式は考える力を養うというよりは、処理能力を高めるという側面が強いですよね。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
公文式をやっていたおかげで基本的なことは全部わかっているんですよ。
どういう問題が出ても、基本問題までは難なくできるんですが、応用問題になったときに手が止まるんです。
大学受験の数学だと、基本的な定理を利用できるのは大前提で、そこから応用的なものを導いていくという形になりますよね。
先ほど言ったように、公文式はあまり考える力を養わないじゃないですか。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』30ページより)
ちなみにご紹介させて頂いた書籍には、千石さん以外にも東大生が登場しますが、その全員が、『公文式に通っていなかったら東大に入れたと思いますか?』という質問には否定的な考えを持っていました。
つまり書籍に登場した東大生の全員が、公文が直接的に東大合格に役立ったとは思っていなかったということです。
それどころかその内の一人は、中学までは得意だった理数系が高校に入って苦手になったとのこと。
それは千石さんが伝えている、『公文の考える力を養わない勉強法が、基本ができるけど応用は…』という結果を生んでいたのかもしれません。
また同じ本の45ページには、東大医学部生が『中学校に入ってから代数の計算問題は難なく解けるのに、幾何をまったく理解できなくて焦って塾に通い始めた』と証言するエピソードもありました。
上と同じく千石さん(仮名)の意見『英語だと文法を考えないでわかるようになるまでひたすら練習するという感じ』
続いても同じく公文式経験者であり、東大医学部生の千石さんの意見です。
千石さんによると、公文では算数や数学だけでなく、英語についても、考える力が養われないとのことです。
計算能力はもちろん、英語だと文法を考えないでもわかるようになるまでひたすら練習するという感じでした。
たとえば現在完了だったら現在完了の練習をずっとやっていくと、自然にそれが頭に叩き込まれて、悪い面というと、その裏返しです。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
あと、英語は上のほうの教材になると文章を写すだけとか、そんな感じなんですよ。
「これ、やっていて意味があるのかな」と思いました。中1ぐらいで疑問をもちましたね。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
文部科学省の留学促進の仕事をする:船橋力さん『公文式だけでは十分な思考力は育たない』
次も学生時代に公文で勉強していた経験のある船橋力(ふなばし ちから)さんという方の声をご紹介します。
船橋さんは文部科学省・官民協働海外留学創出プロジェクトのリーダーとして、日本の留学促進を後押しする仕事をしている方です。
船橋さんによると、公文には自主性と基礎学力が身につく良さがあるとしながらも、公文では思考力が鍛えられないことをハッキリと断言しています。以下は船橋さんが話す公文のイマイチなところです。
「文章題が少ないことに象徴されるように、思考力を鍛えることができない点ではないでしょうか。
発展途上国で公文式に人気が集まるのはよくわかりますが、成熟した社会で生きていくためには公文式だけでは限界があります。
自分自身、計算は得意になりましたが、どちらかというと数式の処理の仕方を覚えたという感じ。
あまり考えて解いているという感じではありませんでした。それが自分の反省点でもあります」
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』44ページより)
算数・数学はロジカルシンキングの基礎となります。
前述の通り公文式だけでは十分な思考力は育たないと思いますが、算数的、数学的思考力を鍛えるうえでの基礎を確実に身に付ける意味はあると思います。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』44、45ページより)
教育に携わる:石川一郎さん『公文は解き方が提示されるので、そこに当てはめていけばいい勉強システム』
最後は教育の仕事に携わる石川一郎さんという方の意見です。
石川さんが公文の経験者であるのかは不明ですが、公文に対しては僕と最も近い考えを持っている方だったということもあり、ご紹介させて頂きました。
以下の石川さんの発言は思考力(考える力)について明言しているわけではありませんが、公文の勉強法の本質を突いています。
「公文式は、ある意味究極の勉強システムです。課題がはっきりしている。正解のある問いが出される。
解き方は提示されているので、基本的にはそこに当てはめていけばいい。
要は、マニュアルどおりに進めていけば必ず正解にたどり着き、正解にたどり着くと次のステージに行ける。
そこに達成感がある。頭がいい悪いはあまり問われない。要領がいい悪いもあまり問われない。だから、どのレベルの子供にもいい教材である。教師不要。近くの大人が、公文式を続けることさえ指導すればいい。それだけで下手な授業よりも効果はあるのではないかと思う。
問題点は、余計なことをモヤモヤ考えることがない、他人の考え方にふれることもない、正解のない問いに対して最適解を出すような内容の教材ではないの3点。
よって、21世紀型学習、正解のない問いへの対応はこれだけではできない。
人口知能が進化したら、人間にとってあまり意味がない勉強システムになるのではないか」
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』132ページより)
『公文でも思考力(考える力)は伸びるだろ!』という反論について
以上ここまでは、公文には思考力(考える力)が伸びにくい理由があり、実際にそうであると主張する方もいるという事実をお伝えしてきました。
しかし、そうはいっても、なかには『いやいや、公文でも思考力(考える力)は伸びるでしょ!』と主張する方もいます。
とある保護者
とある保護者
まず冒頭でお伝えしたように、僕は決して『公文に通っていたら、思考力(考える力)は伸びない』とは思っていません。
あくまでこれまでの理由から、『伸びづらいのでは?』と話しているだけです。
また僕の経験でも、実際に公文に通っていても、思考力(考える力)の高さを感じる生徒はいました。
ただ、これには一つ注意点があります。
因果関係が証明できない【牛乳と身長の話と同じ】
まず公文に通っていて思考力(考える力)が伸びたとしても、それが公文のおかげなのかはわかりません。
これは医学の世界でいう症例報告のように、因果関係が必ずしも証明できないことと同じです。
例えば、『牛乳飲んで背が伸びたー!』という子供がいたとします。
でも、その子の背が伸びたのは、当然のことながら、牛乳だけが原因なのかはわかりません。
実際のところは、たまたま成長期と重なっただけかもしれないですし、牛乳で得られる栄養素以外の影響が大きかったのかもしれません。
もちろん食事のメニューや量、生活習慣を一律にしたうえで牛乳を飲んでいた時期とまったく飲んでいなかった時期を比較すれば限りなく検証可能かもしれませんが、そんなことをした方はいないはずです(多分)。
これと同じで、例え、『公文で思考力(考える力)が伸びた!』という方の事実があったしても、それが公文のおかげなのかは誰にも証明できないということです。もちろんこれは公文以外にも言えることですし、逆の話にも当てはまりますが。
そのため、僕がここまでで最もお伝えしたかったことは、『公文の教材プリントや学習法は、思考力(考える力)を伸ばすことを前提に作られてはいないため、思考力(考える力)を伸ばすにはそもそも不向きである』という事実です。
公文側は思考力は伸びると考えている【でも、『思考力=考える力』とは定義していない】
ところで、『公文でも思考力(考える力)は伸びるのか?』という疑問に対して、当の公文側はどう考えているのでしょうか。
僕が知る限り、公文が公式の場で、公文と思考力(考える力)の関係について明言したことはほぼありませんが、答えのヒントとなる資料はいくつか存在しています。
【証拠アリ】公文は『思考力=例題から類推する力』と定義
結論からいうと、公文側は、『公文で勉強すれば思考力は伸びる』ことを明言しています。
というのも、公文への入会者向けの冊子である『KUMONガイドブック』の15ページに、そう記載されているからです。
※ガイドブックは僕の手元にありますが、部外秘だったかもしれないので画像は出せません
ですが、ここで注意しなければいけないことは、『KUMONガイドブック』で公文側が定義する『思考力』が、『例題から類推する力』となっていることです。
つまり公文側は『思考力(=例題から類推する力)は伸びる!』という主張をしているわけです。
(若干、ミスリードにも感じます…)
とはいえ、公文が『思考力(=例題から類推する力)』と定義するに至った理由は、公文が大阪大学などと行った以下の共同研究の結果にあります。
>>「公立中学校における公文式学習の効果ー何が学習姿勢を変えるのか?」(OSIPP Discussion Paper.2017;DP:J001Rev.)
上記の研究は『観察研究』となっており、研究設計も質が高いとはいえません。
(RCTによる追加研究の可能性アリとはされていますが)
そのため、研究の信頼性が高いとはいえませんが、少なくとも、何の理由もなく主張しているわけではないことは明らかです。
公文側は『考える力』が伸びるかは明言していない【謙虚で誠実】
では、公文側は『考える力』という意味での『思考力』についてはどう捉えているのでしょうか。
繰り返す通り、僕が調べた限りでは、公式に公文側が『公文で思考力は伸びるのか?』について言及しているものは見つかりませんでした。
(公文の公式サイトや、くもん出版から出版されている本のすべてにも目を通しました)
なので以上のことから、公文側は『公文でも思考力(考える力)は伸びる!』ということは明言していないといえそうです。
ただこれはあくまで僕の印象ですが、そもそも公文側は、『公文で思考力(考える力)は伸びるのか?』ということに対して、さほど関心を持っていない気もします。
繰り返すように、公文は生徒の思考力(考える力)を伸ばす目的で作られた塾ではないですし、公文の強みはそこではないからです。
それに公文側は決して自分たちの学習法が完璧だとも思っていない気もします。
少なくとも身につきにくいものを身につくと豪語するようなことを公文はしていないので、これも公文の謙虚で誠実なところの表れなのかもしれません。
余談ですが、実際に僕が知っている公文の社員も、『公文だと思考力(考える力)は伸びないからなー』と言っている方がいましたので。笑
公文だと思考力(考える力)が伸びないなら通う価値はない?【答えはNOです】
では公文で思考力(考える力)が伸びづらいことが事実だとしたら、公文に通う価値はないのでしょうか?
そんなことはありません。
公文で身につくことは思考力(考える力)の土台になる
まず公文に通うことで身につく処理能力や暗記力というのは、思考力(考える力)の土台になり得ます。
なぜなら、考えるという行為は、頭のなかに暗記した知識をうまく処理することともいえるはずだからです。
そのため、思考力(考える力)以外を伸ばす目的で通うのであれば、公文に通う価値は間違いなくあります。
公文のOBであり、将棋棋士の羽生善治さんも、公文で身につくことを以下のように振り返っています。
プリント問題をたくさん解いていくことで、次第に公式や法則性を見いだすことができるようになってくるんです。
つまり、経験則ですよね。
解き方の道筋をたくさん知っていれば、”ここは通ったことがあるな”とか、土地勘みたいなものが湧き出てくるようになるんです。
すると、知らない町に来ても迷わず、最短で家路にたどりつくことができるように、答えを導き出すことができるようになります。
(『くもんのヒミツがわかる本』74ページより)
少なくとも、子供の自主性や処理能力、基礎学力を伸ばすことを目的としているなら、公文ほど優れた学習塾は他にないと僕は経験上考えます。
それに公文側が公式に身につくと主張する、『例題から類推する力』も、高い思考力(考える力)を身につけるうえで土台になる気がしています。
なのでお子さんが小さいうちは、公文に通うのはとても良い選択です。
ただ、高次の思考力(考える力)を身につけるうえで公文は良い選択とは思えないので、そのときは別の環境や手段を考えるべきだとは思いますが。
【公文はいつまで(何歳まで)続けるべきか?】元講師の自分がベストタイミングを結論する
公文と思考力(考える力)まとめ
- 公文で思考力(考える力)は伸びづらい
- でも、公文で身につくことは思考力(考える力)の土台にはなる
以上のことから、公文では思考力(考える力)は伸びにくいです。
ですが、公文で身につけられる自主性や処理能力、基礎学力などといった能力は、思考力(考える力)の土台になります。
なので公文は万能な塾として捉えるのではなく、あくまで思考力(考える力)の土台作りのために利用し、その土台がある程度できたら、その後は環境を変えることを僕は強くおすすめします。
今回は以上です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
関連ページ
【公文のメリットとデメリット】公文で働いた自分が解説する【暴露】
【『公文は効果なし』なのは間違い】進学塾と公文の元講師の自分の話
【公文式はいつから(何歳から)始めるのがよいか?】元講師の自分がおすすめを断言します
【公文はいつまで(何歳まで)続けるべきか?】元講師の自分がベストタイミングを結論する
(おまけ)続:『公文では思考力(考える力)は伸びにくい!』と主張する方々の意見
『『公文では思考力は伸びない!』と断言する方々の意見』の続きともいえる内容です。
関西の大手中学受験塾の講師:清水裕策さん(仮名)『考えるよりも次の問題に意識がいきやすくなる』
関西の大手中学受験塾の講師:清水裕策さん(仮名)は、公文で勉強すれば、勉強する習慣が身につきやすいなどの良さがあるとしながらも、考えるよりも次の問題に進むことに意識がいきやすくなるという悪影響を指摘しています。
「公文式での学習が悪い影響になっている生徒も残念ながらいます。代表的な例としては2つ挙げられます。
1つは、解答の〇Xだけに関心が集中してしまうことです。これは公文式の本筋ではありませんが、そういう習慣が身に付いてしまう生徒は現実にいます。
もう1つは、途中経過に興味を示さなくなることです。
どこで間違ったのかを考えるよりも次の問題に手を付けるという学習スタイルになってしまうことがあります」
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』162ページより)
某名門校の数学教師:亀谷信二さん(仮名)『解き方を暗記する勉強方法にハマりやすい』
続いては東大合格者ランキング上位の常連である某名門校の数学教師:亀谷信二さん(仮名)です。
亀谷さんは、公文式教材プリントは生徒の勉強への自信につながりやすい仕組みがあるという良さを挙げながらも、『解き方を暗記する』という勉強方法になってしまいやすいと話します。
学校のクラスでは、公文式で先取りしている分、みんなより簡単に解けてしまいます。満点を取れてしまう。
でも、実際には、一度やったことを再現できるようになっただけ。
この、簡単に満点を取れてしまうという成功体験が、中学校以降とても厄介なものになる。
勉強の難易度が上がり、満点を取ることを前提にできなくなり始めても、この強烈な成功体験があるせいで、再現できるようにする、解き方を覚える、という勉強方法を変えることができなくなるからです。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』155ページより)
教育ジャーナリスト:おおた としまささん『公文で身につく能力は、AIに任せられる能力に近い』
度々ご紹介させて頂いている『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』の著者であり、教育ジャーナリストである、おおた としまささんは、公文が低学年のうちに計算力や勉強の習慣などを身につけるうえでは大きな魅力があるとしています。
しかし、公文で身につけられる能力は、AI(人工知能)に任せられる能力に極めて近いと話します。
公文式が元来育てようとしていた人間の能力は、現在人間が人工知能に担わせようとしている能力に極めて近い。
その精度をこれ以上上げることにはあまり意味がないだろう。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』190ページより)
進学塾ミライズ代表:近藤さん『計算力の割に思考力が未熟になる恐れ』
千葉県の進学塾ミライズ代表:近藤伊吹(こんどう いぶき)さんの意見です。
近藤さんは、公文式算数が計算力向上に役立つなどの利点があるとしながらも、計算力の割に思考力が未熟になる恐れがあるとしています。
「公文式は考える力を養わないなどの批判もあるが、考える以前に計算力がないと、そもそも思考の起点にすらたどり着きません。
ただし、難しい計算ができる割に思考力が未熟な場合、子供によっては解けない問題をすぐに投げ出してしまうことがあります。
大人の目にはそれが意外に映る。
その光景があまりにも印象的だから、公文式の負のイメージが固定されてしまっているのではないでしょうか」
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』163ページより)
大手塾のベテラン塾講師:富山隆さん(仮名)『本質理解より手順記憶が重視される』
中学受験と高校受験の大手塾に勤務し、現在は教務部門を仕切るベテラン塾講師:富山隆さん(仮名)は、公文が生徒の勉強への自信を高める意味では価値があるとしながらも、問題への本質理解より手順記憶の方が重視されやすいことを注意点として挙げています。
途中経過や記述の仕方へのこだわりが薄くなることや、本質理解よりも手順記憶が重視されるために、授業を理解する姿勢に欠ける場合があります。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』166、167ページより)
(おまけ)続2:『公文でも思考力(考える力)は伸びる!』と主張する方の意見
一方でかなり少数派ではありますが、『公文でも思考力(考える力)は伸びる!』という意見に通ずることを話している方もいました。
『公文では思考力(考える力)は伸びない!』と語る方ばかりを紹介するのはフェアではないので、最後にこういった逆の立場の方の意見もご紹介させて頂きます。
上智大生:内藤恵子さん(仮名)『暗記ではなく原理から理解することができるようになった』
上智大生の内藤恵子さん(仮名)は、公文でも思考力(考える力)に近いものは身につくと発言しています。
「公文式が自分の基を作ってくれた。学ぶときの思考回路、吸収の仕方など、大事なことはすべて公文式で学んだ」と今でも感じている。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』38ページより)
公文式をやっていたおかげで、数学で新しい公式を見たときにも、暗記ではなく原理から理解することができるようになっていた。英語の文法についても、過去の知識を活用すれば暗記は最低限ですむことが実感としてわかっていた。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』40ページより)
ただ内藤さんは以下にまとめた通り、幼いころから勉強に対して非常に貪欲な方だったようです。
・保育園生だったとき、幼稚園生が『教育』を受けているのに、自分は勉強を教えてもらえていないことにコンプレックスを感じる
・子供のとき『英語を習いたい!』と親に頼み込む
・公文が終わると一人で留守番をしていることもあり、やることがなくてよく泣いていた
・100点を取れないと気持ち悪い感覚が小さいころからあった
・やればやるだけ先に進めることに快感を覚えた
・周りの友達より多くのことを知っている優越感があった
なので公文に良い面があることは当然ながら事実ですが、内藤さんのような方の場合は、公文でなくとも思考力(考える力)をふくめた色んな能力を伸ばすことはできていたのかもしれません。