【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『サーカス』をご紹介させていただきました。
作品内容は全文ふりがな付きでまとめています。
一つの参考にして下さいませ。
- 全文ふりがな付きの作品紹介
- 作者紹介
- 解説と考察
- 参考文献
タッチ⇒移動する目次
『サーカス』の全文内容
まずは解説の前提となる作品内容と作者紹介です。
その心
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処での一と殷盛*
今夜此処での一と殷盛
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒さに手を垂れて
汚れ木綿の屋蓋のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それに近くの白い灯が
安値いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
野外は真ッ闇 闇の闇
夜は劫々と更けまする
落下傘*奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
(おわり)
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[用語の説明]
*一と殷盛:宴会をすること
*落下傘:パラシュートのこと
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作者:中原中也
作者:中原中也(1907~1937年)
山口県出身の詩人。
山口県に生まれ、京都の立命館中学に在学中に小林秀雄*と知り合い、そのえいきょうでボードレール*やランボーなど、フランス象徴派の詩人に興味をもつようになった。
(『学習人物事典』323ページ より)
*小林秀雄:近代批評の道を開いた文芸評論家
*ボードレール:独自の詩法で象徴主義の先駆けとなったフランスの詩人
1925年に上京後は、河上 徹太郎や大岡 昇平らと同人雑誌:『白痴群』を発刊。
毎号に詩を発表しました。
1934(昭和9)年に第1詩集『山羊の歌』を刊行、いろいろな雑誌にも作品をのせるようになったが、その評価は、まだ一部の人たちだけにとどまっていた。
(『学習人物事典』323ページ より)
1937年には第2詩集:『在りし日の歌』の原稿をまとめています。
その他の代表作には『汚れっちまった悲しみに』や『骨』など多数。
作風:傷付いた孤独な青春の魂を表現
きずついた青春のたましいを独自のリズムにのせてうたいあげたかれの作品は、死後、若者の間で強い支持を受け、いまでも多くの愛読者をもつ。
(『学習人物事典』323ページ より)
『サーカス』の解説と考察[詩の表現技法や意味や解釈]
本作:『サーカス』の解説をさせていただきました。
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注:ここからの情報は自分独自の考察も含みます。
間違っていないとは言い切れませんので、あくまで一つの参考にして下さいませ。
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七音と五音のリフレイン
まず本作の特徴の一つには、『七音と五音のリフレイン(繰り返し)』があります。
『七五調』とも呼ばれるこの例は、次の通りです。
[七音と五音の例]
七音:幾時代かが
五音:ありまして
七音:今夜此処での
五音:一と殷盛
この言葉のリズムが、本作の特徴の一つとなっています。
オノマトペ
なお、『オノマトペ*』の存在も特徴的です。
*オノマトペ:『ワクワク』など、状態や動作などを言葉で表現したもの
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
おそらく上記のオノマトペは、揺れるブランコを表現しているのだろうと考えられます。
とはいえ、この言葉から何を感じるかは人それぞれ。
自分は、”心に影を落とした不安”のようなものが表現されているように思いました。
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余談になりますが、詩ではないものの、オノマトペと聞くと、自分はいつも宮沢 賢治の作品を思い浮かべます。
【『風の又三郎』で伝えたかったことを考察】あらすじ内容を簡単に要約【「どっどど」の意味の解説も】
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隠喩
最後に表現技法としては、本作には『隠喩*』という比喩が使われています。
*隠喩:「~のようだ」などと表現しないで他のことにたとえる方法。比喩の一種で、『暗喩』とも呼ばれる
観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
上記の隠喩は、サーカスの観客である人のことが、鰯や牡蠣殻にたとえられています。
といっても、「なぜ鰯なのか?なぜ牡蠣殻なのか?」ということは自分にはわかりませんでしたが、少なくとも本作の不思議な魅力にはつながっているように思いました。
【中原中也:『サーカス』】解説と考察【詩の表現技法や意味や解釈】まとめ
本作:『サーカス』には、心に影を落とした人間の不安が表現されていたように自分は考えました。