【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『べろだしちょんま』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『べろだしちょんま』の怖いあらすじ
- 学校教育にまつわる情報
- 参考文献
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『べろだしちょんま』の怖いあらすじ内容【悲しいストーリー】
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:オモチャにまつわる悲しい物語
千葉の花和村*に、『ベロ出しチョンマ』というオモチャがある。
人形で、両手を広げ、十字の形に立っている。
背中の輪を引くと、眉毛がハの字に下がってベロッと舌を出す。
見れば誰でも思わず吹き出さずにはいられない。
チョンマというのは『長松』の訛りのことだ。
長松というのは、もう十二歳になるアンちゃんだ。
だから、妹のウメの面倒を見なくちゃならない。
それにウメはまだ三つだったし、手の霜焼けは酷く、巻いてあるキレ*を変えてやるたんびに必ず泣いていた。
あるとき、長松はうまいことを見つけた。
ウメがビーと泣き出しそうになったら言うのだ。
「ウメ、見ろ。アンちゃんのツラ」
眉毛をハの字に下げて、ベロッとベロを出してやるんだ。
するとウメは笑い出さずにはいられない。
毎晩、父ちゃんや母ちゃんや村の衆が、ネング*の相談をしている。
長松は床で聞いていた。
去年も今年も天候が悪く、米も麦もロクロクとれないのに、殿様はネングを前よりもっと出せと言ってきたらしい。
自分たちが食うものだって困っているのに。
「もうこうなったら逃散*だ」
「いっそ打ちこわし*でもやっか」
「それより誰かが江戸へ直訴すれば」
直訴は将軍様へ殿様のやり方を言いつけに行くことらしい。
どれもこれも捕まったり、首を切られたりするおそろしいバツがあるらしいのだ。
ある朝起きてみたら、父ちゃんがいなかった。
そして何日も経ったある晩、役人がナダレ込んで来た。
「妻ふじ、そのほう、夫、木本藤五郎が、江戸将軍家へ直訴に及ぶため、出府*せしこと存じおろう!」
役人が六尺棒*で母ちゃんの肩をグイと突いた。
父ちゃんは江戸へ行って将軍様に会ったんだ!
「知ってました。覚悟はしてますだ。ご存分に」
長松とウメを抱え、母ちゃんはしっかりと答えた。
刑場では、父ちゃんが長松たちと同じ白い着物で高い柱に縛られていた。
「父ちゃん!」と長松が叫ぶと、父ちゃんはやさしい目で笑った。
母ちゃんも長松もウメも、十字の柱にはりつけられた。
ウメは、「母ちゃーん!」と泣き叫んだ。
村人たちが外から竹矢来*を揺する。
「はじめー!」
役人が叫んだ。
「ヒーッ!おっかねえーッ!」
ウメが叫ぶ。
このとき長松は、思わず叫んだ。
「ウメーッ!見ろォアンちゃんのツラァーッ!!」
そして眉毛をハの字に下げてベロッとベロを出した。
長松はベロを出したまま槍で突かれて死んだ。
その場所には小さな社が建った。
役人がいくら壊しても、また建った。
そして縁日には、『ベロ出しチョンマ』の人形が売られた。
(おわり)
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[用語の説明]
*花和村:創作上の架空の村
*キレ:布切れのこと
*ネング:税として納める米のこと
*逃散:田畑を捨てて逃げること
*打ちこわし:米屋などを襲うこと
*出府:江戸に行くこと
*六尺棒:長さ約182cmの棒
*竹矢来:竹を交差させてつくった囲い
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作者:斎藤隆介
作者:斎藤隆介(1917~1985年)
東京都出身の児童文学作家。
東京都で生まれた後、大学卒業後、北海道新聞の記者を勤めながら著作活動を始めました。
画家:滝平二郎とのコンビが有名です。
その他の代表作には『もちもちの木』や『花さき山』、『八郎』など多数。
作風:秋田地方の方言やオノマトペを散りばめた創作童話
なお、それら創作童話の作風には、秋田地方の方言やオノマトペ*が散りばめられていることに特徴があります。
*オノマトペ:『ワクワク』など、状態や動作などを言葉で表現したもの
作品には、秋田の方言を使った民話ふうの創作童話が多い。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
評価:『日本児童文学者協会賞』はじめ数々の賞を受賞
短編童話集『ベロ出しチョンマ』で小学館文学賞、童話『天の赤馬』で日本児童文学者協会賞、童話『ソメコとオニ』で絵本にっぽん賞を受賞している。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
『べろだしちょんま』と学校教育
最後は本作:『べろだしちょんま』の学校教育にまつわる情報です。
小学6年生の教科書に掲載
まず「『べろだしちょんま』は教科書の何年生に掲載されているのか?」についてですが、結論からいうと、小学校6年生の教科書に掲載されたことがあるようです。
「ベロ出しチョンマ」は、小学六年生の教科書に採録された。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び』51ページ 斎藤隆介 より)
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残酷な描写がある本作ということもあり、自分は学校の教科書に掲載されたことがあると知ったときは、少し意外…でした。
少なからず賛否がありそうに思いましたので。
ちなみに自分は塾講師の経験もありますが、自分が見落としていただけかもしれないものの、本作が小学6年生の教科書に掲載されていたことは今まで知りませんでした。
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実際に行われた指導例
なお、実際の学校教育の現場では、本作は少なくとも次の3つの指導が行われたことがあるといいます。
<1>長松の行動から作品の主題を捉える
まず一つ目は、『長松の行動は読者に何を語りかけているのかを考え、作品の主題を捉える』です。
授業では、次のような指導が行われた。
・長松の行動は読者に何を語りかけているかを考え、主題をとらえる。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び』51ページ 斎藤隆介 より)
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なお、自分は本作の主題には、『人間の底力』のようなものがあったと考察します。
なぜなら、本作における長松は、『最期まで自分を貫き続けていた』からです。
それは妹のウメが泣いたとき、長松が決まって行っていた、”ベロ出しの顔”がそれにあたります。
さらに本作の最後では、役人が壊しても壊しても建ち続けた社の存在が描かれていましたが、それも長松の『底力や信念、執念』のようなものが生き続けていることのようにも自分には見えました。
…ですが、自分が知る限り、作者は本作の主題や教訓などをどこかに書き残しているわけではなさそうですので、何が正解なのかはわかりません。
これらの考察はまったく間違っているかもしれませんし、そもそも答えがない可能性もあります。
また個人的に本作は、人によって見え方が大きく変わってくる作品だとも感じています。
よってもしこの指導例を行う際には、正解を導くことを目的とする以外に、色んな意見を見聞きして作品への考えを深めることを目的とすることも一つのやり方かもしれません。
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<2>「長松はどんな少年か?」を話し合う
二つ目は、『長松の妹:ウメへの行動から、「長松はどんな少年か?」を考え、各々が読み取ったことを話し合う』です。
授業では、次のような指導が行われた。(中略)
・妹のウメに対する行動から考え、長松はどのような少年だと思うか、読み取ったことを話し合う。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び』51ページ 斎藤隆介 より)
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ここでも自分の個人的な考えをお伝えさせていただくと、長松は『強く優しい少年』だったと感じました。
どんな状況でも妹のウメのことを想っていた長松の行動などがその理由です。
とはいえ、これも人によって見え方が色々ありそうです。
(個人的には、『頭がイ〇れたヤバ〇少年』と思う方がいても不思議ではない気もしていますが)
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<3>長松の行動を考えながら感想を書く
最後三つ目は、『長松の行動を考えながら感想をまとめる』です。
授業では、次のような指導が行われた。(中略)
・長松の行動について考えながら、感想をまとめて書く。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び』51ページ 斎藤隆介 より)
『べろだしちょんま』の怖いあらすじ内容【悲しいストーリー】まとめ
誰もが笑ってしまう人形:『ベロ出しチョンマ』のモデルである長松は、最期まで、怖がる妹のウメを笑わせようとしました。
怖くもあり、悲しい物語でもあったように思います。
またこの物語は作中に登場する花和村が創作上の村であることをはじめ、物語自体は作者による創作です。
ですが、作中に登場する長松の父は、将軍へ直訴して処刑された佐倉惣五郎がモデルとされています。