名作童話:『もちもちの木』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『もちもちの木』のあらすじ要約
- 「伝えたいことは何だったのか?」の考察
- 学校教育にまつわる情報
- 参考文献
タッチ⇒移動する目次
『もちもちの木』あらすじ内容を短く
まずは前提となるあらすじと作者紹介です。
物語:こわがりの少年が目にしたもの
まったく、豆太ほど臆病な奴はいない。
もう五つにもなったんだから、夜中にひとりでセッチン*ぐらい行けたっていい。
ところが豆太は、セッチンは表にあるし、表には大きなモチモチの木*が突っ立っていて、お化けに見えてしまうと言うのだ。
それで爺さまを起こし、ついていってもらう。
爺さまが嫌な顔ひとつしないのは、峠の猟師小屋に、自分とたったふたりで暮らしている豆太がかわいそうで、可愛かったからだろう。
ある日、爺さまは豆太に言った。
「今夜は山の神様の祭りだ。モチモチの木に灯がともるぞ」
「灯がともる?」
「ああ、そうだ。でもな、その灯はたったひとりの子供しか見ることができない。それも勇気のある子供だけだ」
豆太は下を向いて、ぽつりと言った。
「…それじゃ、おらはとってもだめだ」
豆太は布団に潜り込んでしまった。
その日の真夜中のことだ。
突然、爺さまが腹痛で苦しみはじめた。
「うんうん…」と、うなって体を丸めている。
顔には脂汗がうかんでいた。
豆太は、爺さまのそんな姿を、今まで一度も見たことがなかった。
「おら、医者呼んでくる!」
豆太は、表戸を体で吹っ飛ばし、走り出した。
峠の坂道は一面、霜で雪のようだった。霜が足にからみつく。
血が出てきた。
それでも豆太は走った。
痛みを我慢して、走った。
医者は、豆太からわけを聞くと、すぐに爺さまのもとへ向かった。
豆太を背負い、「はあっ、はあっ」と荒い息をひびかせて、峠をのぼっていった。
小屋に着いたとき、豆太は不思議なものを見た。
「モチモチの木に灯がついてる!」
医者は、「あれは木の後ろに月が出ているだけだ」と、にべもない*。
でも、豆太には、あたりを照らすほど輝いているように見えたのだ。
次の日、元気になった爺さまは言った。
「おまえは、たしかにモチモチの木の灯を見たんだ。真夜中に、ひとりで医者を呼びにいけるほど勇気のある子供だったんだからな。おまえは、けっして弱虫なんかじゃないぞ、豆太」
豆太は大きくうなずいた。
それでも豆太は、爺さまが元気になったその晩からやっぱり「ジサマァ…」とションベンに起こしたとさ。
(おわり)
ーーーーー
[用語の説明]
*セッチン:便所のこと
*モチモチの木:高さ25mにもなる栃の木のことで、実は食用になる
*にべもない:そっけないこと
ーーーーー
作者:斎藤隆介
作者:斎藤隆介(1917~1985年)
東京都出身の児童文学作家。
東京都で生まれた後、大学卒業後、北海道新聞の記者を勤めながら著作活動を始めました。
画家:滝平二郎とのコンビが有名です。
その他の代表作には『べろだしちょんま』や『花さき山』、『八郎』など多数。
作風:秋田地方の方言やオノマトペを散りばめた創作童話
なお、それら創作童話の作風には、秋田地方の方言やオノマトペ*が散りばめられていることに特徴があります。
*オノマトペ:『ワクワク』など、状態や動作などを言葉で表現したもの
作品には、秋田の方言を使った民話ふうの創作童話が多い。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
評価:『日本児童文学者協会賞』はじめ数々の賞を受賞
短編童話集『ベロ出しチョンマ』で小学館文学賞、童話『天の赤馬』で日本児童文学者協会賞、童話『ソメコとオニ』で絵本にっぽん賞を受賞している。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
「『もちもちの木』が伝えたいことは何だったのか?」の考察【2つある】
では、「『もちもちの木』で作者が伝えたかったことは一体何だったのでしょう?」
それは結論からいうと、自分は2つあると考えます。
あくまで自分の考察に過ぎませんが、あらすじをもとに考察した内容です。
一つの参考にして下さいませ。
<1>『勇気』
まず一つ目は『勇気』です。
なぜなら、『もちもちの木』のあらすじでは、この『勇気』がそのあらすじのなかで一つのテーマとなっていたからです。
- 『もちもちの木にともる灯は、”勇気”のある子供しか見ることができない』という逸話があった
- 豆太は爺さまのため、”勇気”を出して真夜中に医者を呼びに行った
そのため、作者はこの童話を通じて、読者に『勇気を出すことの意義』を伝えたかったのだろう…と自分は考察しました。
<2>『優しさ』
そしてもう一つが『優しさ』です。
『もちもちの木』に登場する人物たちは、皆が『優しさ』にあふれていました。
- 豆太…爺さまのために勇気を出して医者を呼びに行った
- 爺さま…嫌な顔ひとつせずに豆太を可愛がっていた
- 医者…爺さまを助けるためにすぐに向かって行った
童話のなかで悪人や敵などが一切登場しなかったのも、作者が読者に対して『優しさ』を強調したかった結果だったのではないか…と自分は考察しました。
『もちもちの木』と学校教育
最後は童話:『もちもちの木』の学校教育にまつわる情報です。
小学3年生の教科書に掲載
まず本作は小学校3年生の教科書に掲載されたことがあるようです。
作品には、秋田の方言を使った民話ふうの創作童話が多い。
そんな作品の一つである「モチモチの木」は、小学三年生の教科書に採録された。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
実際に行われた指導例
なお、実際の学校教育の現場では、本作は、少なくとも次の3つの指導が行われたことがあるといいます。
<1>語り手の豆太への思いに注意しながら朗読
まず一つ目は、『本作の語り手の豆太に対する思いに注意しながらの朗読』です。
授業では、次のような指導が行われた。
・作品の語り手が、豆太についてどう思っているかに注意しながら、それぞれの場面を朗読する。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
本作は語り手による客観的な視点からあらすじが描かれていました。
とはいえ、その語り口はどこか粗野で、豆太への思いは厳しくも感じられる側面があります。
この指導例は、そんな語り手にあえて思いを馳せてみることにより、作品への気づきを深める狙いがあるのかもしれません。あくまで個人的な考察ですが。
<2>好きな部分を朗読
二つ目は、『その子供が好きな部分を朗読する』です。
授業では、次のような指導が行われた。(中略)
作品の、好きな部分を朗読する。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
<3>朗読を聞いた部分をノートに書く
最後三つ目は、『朗読を聞いた内容をノートにとる』になります。
授業では、次のような指導が行われた。(中略)
・朗読を聞いている側は、その部分をノートに書く。
(『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』88ページ 斎藤隆介 より)
【『もちもちの木』が伝えたいこと】あらすじ内容から短くネタバレまとめ
童話:『もちもちの木』は、こわがりの少年:豆太が、「爺さまを助けたい」との一心で、勇気を出して真夜中を走ります。
あらすじのなかで描かれていたのは勇気であり、優しさでした。
そしてそれは、作者がこの童話を通じて読者に伝えたかったメッセージの一部だったのではないでしょうか。