『風と光と二十の私と』あらすじ要約【坂口安吾の自伝的作品】

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名作 【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】

名作:『風と光と二十はたちの私と』をご紹介させていただきました。

あらすじは全文ふりがな付きです。

一つの参考にして下さいませ。

このページでわかること
  1. 全文ふりがな付きのあらすじ要約
  2. 作者紹介
  3. 参考文献

『風と光と二十の私と』のあらすじ要約

あらすじの要約と作者紹介です。

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充ち足りた一年

筆箱

二十はたちのとき、わたししょう学校がっこう代用だいようきょういん*になった。

わたしようえんのときからサボることをおぼえ、ちゅうがくころしゅっ席日数せきにっすう半分はんぶんはサボっていた。

そんな良中りょうちゅう学生がくせい代用だいようきょういんになるというのはへんはなしだが、じゅうはちのときちちんでしゃっきんのこっていたので、はたらくことになったのだ。

 

わたし代用だいようきょういんをしたところは、世田せたがや下北沢しもきたざわというところで、そのころはまだ竹藪たけやぶだらけの田舎いなかだった。

本校ほんこう世田せたがや町役まちやくとなりにあるが、わたしがいたのはきょうしつみっつしかない分校ぶんこうだった。

 

わたし分校ぶんこうさい上級じょうきゅうせいである年生ねんせいった。

男女混合だんじょこんごうななじゅうめいくらいのくみであるが、どうも本校ほんこうえないのを分校ぶんこうしつけていたのではないかとおもう。

どものうちじゅうにんくらいは、かた仮名かなぶんまえだけはけるが、あとはコンニチハひとくことのできないがいた。

 

だが、落第らくだいしたり乱暴らんぼうをするは、じつは、じょうにいいおおい。

本当ほんとうわいどもわるどもなかにいる。

どもはみんなわいいものだが、本当ほんとううつくしいたましいは、わるどもっている。

 

なかという牛乳ぎゅうにゅうどもは、朝晩あさばんぶんちちをしぼって、配達はいたつをしていた。

一年落第いちねんらくだいしていて、としほかどもよりひとおおい。

うでっぷしがつよく、ほかどもをいじめたりするのだが、じつじょうにいいどもだ。

先生せんせい、オレはけないからしからないでよ。そのわり、ちからごとなんでもするからね」とわいいことをわたしい、ドブそうちからごとなどをぶんからけてくれた。

 

一方いっぽうおんなには閉口へいこう*した。

年生ねんせいぐらいのマセたおんなしっぶかさの対策たいさくには、ほとほとこまったものだった。

 

わたしほう課後かごきょう員室いんしつにいつまでものこっていることがきだった。

せいがいなくなり、ほか先生せんせいかえったあと、たった一人ひとり物思ものおもいにふけっている*。

せいじゃくなかにいると、もう一人ひとりわたしはなしかけてくるようながした。

 

わたしは、だれしもひとしょうねんから大人おとなになるいちかん大人おとなよりも老成ろうせい*する時期じきがあるのではないかとかんがえる。

 

わたしはそのころ太陽たいようというものに生命せいめいかんじていた。

わたし青空あおぞらひかりながめるだけで、もう幸福こうふくであった。

樹々きぎにも、とりにも、むしにも、そしてあのそらながれるくもにも、わたしつねわたしこころかたしたしいいのちかんつづけていた。

 

きょういんだいりた一年間いちねんかんというものは、わたしれきなかで、わたししんのことでないような、おもすたびにうそのようなへん白々しらじらしい*気持きもちがするのである。

 

(おわり)

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よう説明せつめい

代用だいようきょういん戦前せんぜん正式せいしききょういんかくたずにはたらいていたりんきょういんのこと

ふける:ひとつの物事ものごとねっちゅうすること

閉口へいこうえなくてこまること

老成ろうせい年齢ねんれいわり大人おとなびていること

白々しらじらしい:うそがわざとらしく、いていること

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作者:坂口安吾

坂口安吾

作者:坂口安さかぐちあん(1906~1955年)

新潟県出身の小説家。

新潟県の大地主の家に生まれた。

父は県会議長、のちに衆議院議員をつとめ、漢詩*にも通じていた。

(『倫理用語集』182ページ 坂口安吾 より)

かん:中国の伝統的な詩のこと

中学に進学したが、家庭の複雑さもあって奔放・孤独な日常を送り中退、仏教を学ぼうと1926(昭和元)年に東洋大学哲学科に入学した。

交流のあった芥川龍之介の自殺に衝撃を受け、精神的に不安定となるが、アテネ=フランセで学ぶうちに小説家を志す。

大学卒業後、同人誌を創刊、創作を始めて新進作家となった。

(『倫理用語集』182ページ 坂口安吾 より)

本作:『風と光と二十の私と』は、当時40歳だった作者が、20歳だった頃の自分を振り返った自伝的作品となっています。

その他の代表作には『堕落論』や『教祖の文学』など多数。

評価

古い道徳観を否定した自由で大胆な作品の数々は、社会に衝撃を与え続けました。

『無頼派』

特に『堕落論』はベストセラーとなり、太宰治だざいおさむらとともに『らい』と称されるまでになりました。

(前略)人間が人間本来の姿に戻ることを「堕落」と呼んでベストセラーとなり、太宰治だざいおさむらとともに「らい」と呼ばれた。

(『倫理用語集』182ページ 坂口安吾 より)

落下 「『堕落論』が伝えたいことは何だったのか?」あらすじをわかりやすく解説&考察【名言とともに】

鋭い評論と独特の視点からの文明批評

やがて物心ともに苦しい生活の中で、「突きつめた極点で生きることに向かった時、そこから新しい倫理が発足する」と説くなど、鋭い評論を発表した。

(『倫理用語集』182ページ 坂口安吾 より)

作品は多彩で、独特の視点からの文明批評も有名である。

(『倫理用語集』182ページ 坂口安吾 より)

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『風と光と二十の私と』あらすじまとめ

本作:『風と光と二十の私と』は、作者の人生論が垣間見える作品だったように自分は思います。

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参考文献

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