【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『鏡の国のアリス』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『鏡の国のアリス』のあらすじ要約
- 前作:『不思議の国のアリス』との2つの違いについて
- 考察
- 参考文献
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『鏡の国のアリス』あらすじ内容を簡単に短くご紹介
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:チェスがモデルとなった鏡の国へと迷い込んだ少女アリス
アリスは部屋の中で、子猫のキティと遊んでいました。
しばらくして遊びに飽きたアリスは、鏡の前にキティを置いてこう言います。
「ねえ、鏡って不思議だと思わない?私、鏡の向こう側に行ってみたいな」
すると鏡が急に、もやのようにぼやけていきます。
そしてアリスはいつの間に、鏡の向こう側の部屋にいました。
床にはチェス*の駒が散らばっていましたが、それ以外は元の部屋とそっくりです。
アリスはドアを開け、家の外へと出ていきました。
目の前には高い丘があります。
その丘を登ると、広い平原が見渡せました。
平原は、大きな正方形で、規則正しく区切られています。
「なんだか大きなチェス盤みたい…面白いな!」
そこへ現れたのが、先ほどの部屋で見かけたチェスの駒:赤のクイーン*でした。
「そう、あれは大きなチェス盤。あなたもマスを進んでいけば、クイーンになれるかもよ?やってみる?」
アリスはびっくりしました。
でも、なんだか面白そうです。
アリスは大きな声で、「やるやる!」と言いました。
アリスは、一つひとつマスを進んでいきます。
最後のマスにたどり着くと、そこではライオンとユニコーン*が戦っていました。
噛みついたり、角で突いたり、大暴れです。
アリスは止めようと思いましたが、恐くてできません。
でも、周りにいる動物たちも恐がっています。
アリスは勇気を出して言いました。
「あんたたち!そんなことやめなさいよ!!」
二匹は同時にアリスを見ました。
そして次の瞬間、二匹は顔を引きつらせて逃げていきました。
きょとんとしているアリスに、周りにいた動物たちが教えてくれました。
ここの世界では、人間の子供は恐ろしい怪物だと信じられていたのです。
みんなは口々に、「ありがとう!」とお礼を言ってくれました。
アリスはそこで、自分の頭に王冠がのっていることに気づきます。
「あっ!私、クイーンになれた!やった!!」
アリスが叫ぶと、またあの赤のクイーンが現れました。
赤のクイーンは、にやりと笑い、こう言います。
「退屈しのぎになったかしら?」
それから赤のクイーンは、だんだんと猫の姿へと変わっていきました。
アリスはそこで目を覚ましました。
「なんだ…夢か…でも、面白かったなあ…あれ」
アリスはキティを見つめてふと言います。
「もしかして…赤のクイーンって、あんただったの?」
キティは、ニャオと鳴きました。
(おわり)
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[用語の説明]
*チェス:チェス盤と駒を使って遊ぶボードゲームのこと
*クイーン:女王の意味で、チェスでは最強の駒とされている
*ユニコーン:馬の体をした、ねじれた1本の角を持つ、伝説上の動物のこと
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作者:ルイス・キャロル
作者:ルイス・キャロル(1832~1898年)
イギリス出身の童話作家であり数学者。詩人や写真家としても活動しました。
本名は、チャールズ・ルドウィッジ・ドジスン。
イギリス西部のチェシャー州デアズベリーで牧師の家に誕生。
オックスフォード大学卒業後は、同大学の講師となり、数学と論理学を教えていました。
また生涯を独身のまま過ごしています。
その他の代表作には本作の前編にあたる『不思議の国のアリス』など多数。
成立:『不思議の国のアリス』は、キャロルが子供たちに話し聞かせていた物語をまとめた作品
1865年に発表した『不思議の国のアリス』は、児童文学の歴史のなかで、もっとも名高い作品の1つとなっている。
この童話は、子どもずきのキャロルが、友人の子どもたちにねだられて話して聞かせていた物語をまとめあげたものだといわれている。
(『学習人物事典』135ページ より)
『鏡の国のアリス』と『不思議の国のアリス』の違いは2つ
では、「本作:『鏡の国のアリス』と、その前作の『不思議の国のアリス』には、どのような違いがあるのでしょうか?」
大きな違いは2つです。
<1>世界観【トランプとチェス】
一つ目は、その『世界観』にあります。
まずここでご紹介した『鏡の国のアリス』では、”チェス”がその世界観のモデルとなっていました。
そしてその一方、その前作にあたる『不思議の国のアリス』では、”トランプ”が世界観のモデルです。
その点がまず違います。
<2>アリスが意図を持っているかどうか
そして二つ目は、『主人公のアリスが持つ意図』にも違いがみられました。
これもまず本作の『鏡の国のアリス』では、アリスには「クイーンになりたい!」という意図が少なからずありました。
しかし、前作の『不思議の国のアリス』では、アリスにそのような意図は見られません。
前作のアリスはどちらかというと、行き当たりばったりで、ただただ好奇心の赴くままに行動しているようでした。
(たまたま目にした白ウサギを追いかけ、穴に落ち、ドアの先の声に導かれていく…といった具合)
この違いの理由ははっきりとはわかりません。
もしかしたら前作に比べて本作では、作者がより大衆を意識して物語の構成などを明確にしたからなのかもしれませんし、純粋に主人公アリスの成長だと見て取ることもできるのかもしれません。
「『不思議の国のアリス』が伝えたいこと(教訓)は何だったのか?」あらすじ内容も簡単に短く要約【考察と解釈と解説と】
『鏡の国のアリス』の考察
最後は考察です。
『大人の夢の見方に強く拠っている』by内藤貴子さん
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の内藤 貴子さんは、次のように解説なされていました。
夢は、現実の諸相を素材としつつも自律するシュールレアリスムだ。
超現実の枠組を明確に知覚するL・キャロルの『鏡の国のアリス』はむしろ現実感覚が鋭く覚醒した、大人の夢の見方に強く拠っている。
(『童話学がわかる』168ページ より)
『鏡の国のアリス』あらすじ内容を簡単に短く【『不思議の国のアリス』との違い】まとめ
『鏡の国のアリス』では、主人公アリスが鏡の向こう側の、チェスがモデルとなった異世界へと迷い込む物語でした。
前作:『不思議の国のアリス』と比べると、世界観そのものや、アリスの言動や行動への意図にも違いがあったように感じます。