【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『星の銀貨』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。一つの参考にして下さいませ。
- 星の銀貨のあらすじ
- 「本当は怖い?」の真実を解明、考察
- 参考文献
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『星の銀貨』のあらすじ
まずは話の前提となる『星の銀貨』のあらすじと作者のご紹介をさせていただきます。
物語:思いやりの心を持った、一人の女の子に訪れた奇跡
あるところに、とても貧しい女の子がいました。
その女の子のお母さんとお父さんは、既に亡くなっていました。
女の子には、きちんとした家もなく、今、着ている服の他には、着るものは何も持っていません。
あるのは、親切な人が恵んでくれた、ひとかけらのパンだけです。
あまりにみすぼらしいために、女の子は町の人たちから嫌われていました。
心ない人からは、石をぶつけられたこともあったといいます。
でも、女の子はとても清らかな心を持っていて、神様のことを信じていました。
あるとき、そんな女の子が町を離れて野原を歩いていると、お腹を空かせた男の人と出会います。
「何か食べる物をおくれ…」
男の人は言います。
そこで女の子は、自分が持っていた、ひとかけらのパンを、全部あげてしまいました。
そして、女の子は次のように言い、また歩き出しました。
「神様のお恵みがありますように」*
女の子が歩き続けると、今度は泣いている男の子に出会いました。
男の子が「頭が寒い…」と言うので、女の子は自分がかぶっていた帽子をあげて、また「神様のお恵みがありますように」と言いました。
その後も女の子は、何人もの人に出会いました。
寒さに震えている子供には、自分が着ている上着を、肌着だけを着た子供には、はいていたスカートをあげました。
そして必ず、「神様のお恵みがありますように」と言うのでした。
女の子はさらに歩いて森にやってきました。
すると今度は、裸の子供に出会います。
女の子は、「もう夜だから見る人もいないし、恥ずかしくない」と自分に言い聞かせ、最後に残った肌着を、裸の子供にあげてしまいました。
そしてやっぱり、女の子は次のように言うのでした。
「神様のお恵みがありますように」
裸になった女の子が、森に一人で立っていると、突然、空からたくさんの星々が降ってきました。
なんとその星々は、すべて銀貨*だったのです。
しかも女の子はいつのまにか、上等な肌着を着ていました。
女の子はその銀貨によって、一生お金に困ることなく、幸せに暮らすことができました。
(おわり)
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[用語の説明]
*「神様のお恵みがありますように」:キリスト教徒が相手の幸せを願うときに使う言葉。一般には「お幸せに」と近い意味がある
*銀貨:銀でできたお金のこと
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作者:グリム兄弟
グリム兄弟の肖像画
(手前が兄:ヤーコプ=グリムで、奥がその弟:ウィルヘルム=グリム)
作者:グリム兄弟(兄:ヤーコプ(1785~1863年)、弟:ウィルヘルム(1786~1859年))
兄弟ともに言語学者、文学者として活躍。
本作:『星の銀貨』は1815年に発表されました。
中部ドイツのハーナウ生まれ。
父は法律家でしたが、グリム兄弟が幼い頃に亡くなっています。
そのため、長男だったヤーコプは幼い頃から母を助け、5人の弟や妹を養うために力を尽くしました。
それからグリム兄弟はカッセルの高校を卒業。
ともにマールブルク大学に入学します。大学では父と同じ法律を勉強しました。
一方で、兄弟はブレンターノのような文学者とも交流したことにより、古い時代の文学にも魅了されていきました。
『グリム童話集』の出版後は、兄弟はカッセルの図書館の司書を経て、ともにゲッティンゲン大学で教授となります。
1841年にはプロイセン王フリードリヒ=ウィリヘルム4世に招かれたことで、ここでもともにベルリン大学の教授となりました。
それ以後、グリム兄弟は生涯をベルリンで過ごしています。
作品:『グリム童話集』
『グリム童話集』は、グリム兄弟がドイツ各地から集めた昔話を編集して出版した童話集です。
(前略)ドイツ民族の歴史のなかに流れている民族的なものに愛着をもち、各地を旅行して、古くからつたわる話をできるだけ集めて『子供と家庭のための童話』と題して1812年に出版し、1814年と1822年にその続編を世に送った。
これが世界に知られた『グリム童話集』である。
(『学習人物事典』147ページ より)
この童話集には、全部で250編以上の昔話がふくまれている。
アンデルセンの場合とちがって、ここに集められている話は、すべてグリム兄弟がドイツ各地を歩きまわって集めた古くからつたわる話なので、その土地のことばで語られていたり、ざんこくで子ども向きでない話もそのまま入れてあったりする。
(『学習人物事典』148ページ より)
その他の作品だと『白雪姫』や『赤ずきん』、『ヘンゼルとグレーテル』などが世界的に親しまれています。
「『星の銀貨』は本当は怖い?」あらすじの真相を解明【グリム童話を考察】
では、ここまでのあらすじなどを踏まえたうえで、「『星の銀貨』は本当は怖いのか?」の真相を解明します。
【結論】『怖くない』【誤解されやすい理由はおそらく2つある】
結論からいうと、『怖くはありません』という一言になります。
とはいえ、怖いと噂されることにはそれなりに理由があるはずです。その理由は大きく2つあると考察します。
<理由1>『グリム童話=本当は怖い』という誤解
まず一つ目が、『グリム童話=本当は怖い』という誤解です。
有名どころだと、『赤ずきんがオオカミに食べられる』など、グリム童話の怖い話を聞いたことがある方はいるかと思います。
ですが、実際のところはすべてのグリム童話が怖いわけでは決してありません。
本作:『星の銀貨』も1815年に発表されてから今に至るまで、直接的に怖い要素は一切含まれていません。
<理由2>登場人物の女の子が”身を削りすぎ”だと見えるのかも…
そして二つ目は自分の考えすぎかもしれませんが…物語の中心である女の子が、”身を削りすぎ”であることに怖いと感じる方がいるかもしれないという理由です。
物語において女の子は、困っている人たちに対し、度重なる”献身”を見せます。
決して見返りを求めずに身を削り続けるその姿勢は、見方によってはやや狂気的に見える面がないともいえません。
もちろんそのような捉え方は作者にとっては本意ではないかもしれませんが、人によってはそう感じる方がいたとしてもおかしくはないという考察です。
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また女の子は、他者への献身を示した後、必ず「神様のお恵みがありますように」という一言を残しています。
これも人によっては一種の過剰な信仰心の表れのように感じてしまうかもしれないため、このことも、もしかしたら怖いと感じる方がいるかもしれません。特に無神論者はそうでしょう。
(とはいえ、自分は無神論者ですが、特に怖いとは思いませんでしたが…)
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「『星の銀貨』は本当は怖い?」あらすじと考察【グリム童話】まとめ
『星の銀貨』自体には、今も昔も直接的に怖い要素はありません。
ですが、作品自体が、元来、残酷な描写が多かったグリム童話であること。
そして登場人物の女の子が見せる献身が、見方によっては過剰に見える面もまったくないとは言い切れないため、個人的にはそれらのことが、誤解を生んでいるような気がしています。
作品本来のあらすじは、周りを思いやる心の豊かさが描かれた作品です。名作と呼ばれるにふさわしいあらすじだと思います。
また『自分の日頃の行いは、誰かが必ず見ている』といった道徳的なことを学ぶうえでも良い教材となりそうです。