【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『白雪姫』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 白雪姫のあらすじ要約
- 考察
- 参考文献
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『白雪姫』物語のあらすじ内容を短く簡単に要約【グリム童話】
あらすじと作者紹介です。
物語:美しい白雪姫をめぐるストーリー
その昔、ある国の女王に、雪のように体が白く、血のように美しい頬を持ち、黒檀*のように黒い髪を持つお姫様が生まれました。
お姫様は、『白雪姫』と名付けられます。
ですが、女王は既に亡くなってしまいました。
その後、王様は新しい女王と結婚しましたが、その女王は不思議な鏡を持っていました。
「鏡や鏡、国中で誰が一番美しいか言っておくれ」
すると鏡は答えます。
「女王様、あなたこそが、この国で一番美しい」
女王は、鏡が嘘を言わないことを知っていました。
しかし、白雪姫が七歳になったとき、鏡は次のように言いました。
「白雪姫は、千倍も美しい」
女王はそれを聞き、白雪姫を妬みます。
ついに女王は猟師に向かって、白雪姫を殺すように言いました。
けれども猟師は白雪姫のことをかわいそうに思ったので、森の中で逃がしてあげました。
猟師がイノシシの血をハンカチに付けて女王に持っていくと、女王は白雪姫が死んだと信じました。
白雪姫は山を越えて逃げ、やがて一軒の小さな家を見つけます。
七つのベッドに順々に入り込み、最後のベッドが自分にぴったりの大きさだったので、そこでぐっすりと眠ってしまいました。
そこへ帰って来たのは七人の小人です。
小人たちは、昼間は山で、金や銀を掘り出す仕事をしていました。
そんな小人たちが家で寝ている白雪姫を見つけたのは、その後のことです。
小人たちは白雪姫の姿を見て、その美しさに驚きました。
そして次の朝、目覚めた白雪姫から小人たちが話を聞きます。
事情を理解した小人たちは、白雪姫に、「この家にいてもいいけれど、女王はすぐに知るはずだ。だから、誰も家には入れてはいけないよ」と言いました。
一方、白雪姫が死んだと思っていた女王は、ある日、鏡に「小人の家にいる白雪姫は、まだ千倍も美しい」と言われてとても悔しがります。
そこで女王は老婆の姿に化け、昼間、家に一人でいた白雪姫を殺そうとしました。
しかし、帰って来た小人たちが、白雪姫の命を救います。
けれども白雪姫は女王が持ってきた毒のリンゴを一口かじってしまったので、息絶えてしまいました。
小人たちは悲しみ、ガラスの棺*をつくって白雪姫を入れました。
そこへ通りかかったのが、ある国の王子です。
王子は、白雪姫の美しさに心奪われ、棺を持ち帰ろうとしました。
ところが、家来が棺を持ち上げたその瞬間です。
白雪姫の口から毒のリンゴがこぼれ落ち、白雪姫は息を吹き返したのでした。
その後、白雪姫と王子は結婚することになり、その婚礼には女王も招かれました。
けれど、女王は、若い花嫁が、白雪姫だとは知りません。
そのため、披露宴の席にいた白雪姫を見た女王は、驚きのあまりに動けなくなってしまいました。
(おわり)
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[用語の説明]
*黒檀:黒色で艶のある木
*棺:亡くなった人を納める容器
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作者:グリム兄弟
グリム兄弟の肖像画
(手前が兄:ヤーコプ=グリムで、奥がその弟:ウィルヘルム=グリム)
作者:グリム兄弟(兄:ヤーコプ(1785~1863年)、弟:ウィルヘルム(1786~1859年))
兄弟ともに言語学者、文学者として活躍。
中部ドイツのハーナウ生まれ。
父は法律家でしたが、グリム兄弟が幼い頃に亡くなっています。
そのため、長男だったヤーコプは幼い頃から母を助け、5人の弟や妹を養うために力を尽くしました。
それからグリム兄弟はカッセルの高校を卒業。
ともにマールブルク大学に入学します。大学では父と同じ法律を勉強しました。
一方で、兄弟はブレンターノのような文学者とも交流したことにより、古い時代の文学にも魅了されていきました。
『グリム童話集』の出版後は、兄弟はカッセルの図書館の司書を経て、ともにゲッティンゲン大学で教授となります。
1841年にはプロイセン王フリードリヒ=ウィリヘルム4世に招かれたことで、ここでもともにベルリン大学の教授となりました。
それ以後、グリム兄弟は生涯をベルリンで過ごしています。
作品:『グリム童話集』
『グリム童話集』は、グリム兄弟がドイツ各地から集めた昔話を編集して出版した童話集です。
(前略)ドイツ民族の歴史のなかに流れている民族的なものに愛着をもち、各地を旅行して、古くからつたわる話をできるだけ集めて『子供と家庭のための童話』と題して1812年に出版し、1814年と1822年にその続編を世に送った。
これが世界に知られた『グリム童話集』である。
(『学習人物事典』147ページ より)
この童話集には、全部で250編以上の昔話がふくまれている。
アンデルセンの場合とちがって、ここに集められている話は、すべてグリム兄弟がドイツ各地を歩きまわって集めた古くからつたわる話なので、その土地のことばで語られていたり、ざんこくで子ども向きでない話もそのまま入れてあったりする。
(『学習人物事典』148ページ より)
その他の作品だと『赤ずきん』や『ヘンゼルとグレーテル』、『星の銀貨』などが世界的に親しまれています。
『白雪姫』の考察
最後は本作:『白雪姫』にまつわる考察などです。
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注:ここからの情報は自分の考察も含まれます。
間違っていないとは断言できませんので、あくまで一つの参考として下さいませ。
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『嫉妬や美しいものへの欲求』by伊藤邦武さん
哲学者の伊藤 邦武さんは、白雪姫で描かれていたことを、次のように考察なされていました。
「白雪姫の継母は嫉妬から白雪姫を殺そうとした」。
「白雪姫は鮮やかなリンゴの色にひかれて、思わずそれを手にとってしまった」。
これらはいずれも、嫉妬や美しいものへの欲求という心理的概念をつかった、登場人物たちの行動の説明である。
それはわたしたちが容易に理解できる、人間の基本的な心理的現象を基礎においた説明であり、このような説明の無数の連鎖のなかで、童話の物語は進行していくのである。
(『童話学がわかる』76ページ より)
誰にとっても理解しやすいことが人気の一端
つまり伊藤さんの考察を解釈すると、白雪姫では、誰にとっても理解しやすい感情などが描かれている側面があるということです。
そしてそれを前提とするなら、自分はその誰にとっても理解しやすい、共感しやすいことこそが、白雪姫が世界中で多くの支持を集めている理由の一端なのかもしれないと考察しました。
子供をも惹きつけた真っ赤なリンゴby如月小春さん
その一つが、さきの例にもあった、”鮮やかな赤いリンゴ”の存在です。
劇作家の如月小春さんは、このことを次のように話して下さっていました。
真っ赤なリンゴ。
雪のように白い肌を持つ姫を主人公とする『白雪姫』の物語において、もっとも危険な色として登場してくるのが、血の色、赤である。
(『童話学がわかる』139ページ より)
なお、このことは、何も大人にだけ影響し得る話とは言い切れません。
如月さんは、自身の経験を、次のようにも話して下さっています。
わが家には四歳になる娘がいるのだが、その子が二歳の時に、『白雪姫』の童話を読んでやったら、その直後に、手に赤いボールを握りしめて私のもとにやってきて言った。
「おじょうさん、りんごはいかが」
『白雪姫』の物語のなかで、もっとも劇的緊張の高い場面は、いうまでもなく、継母の魔女が老婆に化けて毒リンゴを売りにくるところである。
幼い子どもたちは皆、物語の複雑な構造や言葉の意味を充分理解できていなくても、なぜか一番面白いところ、劇としての山場はつかみとる力を持っている。
童話でも人形劇でも児童劇でも、それは同様だ。
たぶん子どもたちは、構造や言葉での理解が追いつかない分、音や色や匂いや台詞の響きで劇的緊張を感じとっているに違いない。
(『童話学がわかる』139ページ より)
実社会において赤色は、赤信号や赤ペンなど、世界の多くの国々で、注意をひく共通の色として使用されています。
それらはエビデンスが高いとはいえないものの、色彩心理においては、赤色は警戒色とも呼ばれることがあります。
よって白雪姫に登場する”真っ赤な”リンゴが見た人を惹きつけるということは、特段、不思議なことではない…と見ることもできそうです。
そしてそのことを前提とするなら、以上のことも、白雪姫の物語自体へと人を惹きつける役目の一端を担っている…と見ることもできるのかもしれません。
娘が赤いボールを手にした途端、物語のなかに身体ごと入り込んだのはいうまでもない。
(『童話学がわかる』139ページ より)
『パロディ』の多種多様さby金原瑞人さん
児童文学研究家の金原瑞人さんは、白雪姫の『パロディ*』に着目し、次のように話されています。
(前略)『白雪姫』といえばシガーニ・ウィーヴァー主演の『スノー・ホワイト』というずいぶんシリアスでリアルなパロディ映画もあったし、ディズニーのアニメもあった。
ディズニーのアニメ版童話も、みんなオリジナルと違うところがたくさんあるし、いくつか原作にないエピソードも付け加わっている。
いってみればこれもパロディだろう。
(『童話学がわかる』142ページ より)
*パロディ:他の作品を下敷きにして、新しい作品を制作すること
(個人的に白雪姫といえばディズニーのイメージでしたが、シリアスなパロディ映画もあるとは初耳でした…)
沖縄バージョンの白雪姫がある?by遠藤庄治さん
またこのことは実際に自分が確認できたことではありませんが、沖縄国際大学文学部教授(当時)の遠藤 庄治さんは、白雪姫を思わせる、沖縄県独自の物語の存在を示唆なされていました。
なかでも宮古には、王様が小さい靴を持って歩いて、嫁さんを捜す「シンデレラ」の変化した話型や、王妃が誤って針で指を刺し、その血が雪のなかに落ちたのを見て、雪のように白く、血のように赤い唇の娘を願うと美しい娘が生まれたという「白雪姫」を思わせる話型なども伝えられている。
(『童話学がわかる』108、109ページ より)
『小人』の歴史by池田美桜さん
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の池田美桜さんは、本作にも登場する『小人』について、次のように解説して下さっていました。
人間に似た姿形をした、矮小な超自然的存在。
伝承文学から創作文学まで世界各国の文芸作品で語られるが、その属性・機能・起源・大きさ等は多種多様である。
とくにヨーロッパの文芸作品に多くみられ、それらは近代以降の日本人の小人像形成に多大な影響を与えているものの、少彦名命や一寸法師など、日本でも古くから独自の小人が語られてきた。
現代の作品では『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる)、『床下の小人たち』(M・ノートン)他。
(『童話学がわかる』163ページ より)
またその他で小人が登場する有名作品には、『ガリバー旅行記』や『ニルスのふしぎな旅』などが知られています。
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(これも個人的に小人といえば童話の定番的なイメージでしたが、冷静になると、定番というほどでもないのかも…と思ったり)
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『白雪姫』物語のあらすじ内容を短く簡単に要約【グリム童話】まとめ
ディズニー映画になり、世界中で有名となった『白雪姫』のあらすじでした。