【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『黒猫』をご紹介させていただきました。
あらすじは全文ふりがな付きで、読み聞かせができるようにまとめています。
一つの参考にして下さいませ。
- 全文ふりがな付きのあらすじ要約
- 作者紹介
- 考察
- 参考文献
タッチ⇒移動する目次
『黒猫』のあらすじ要約
まずは本作:『黒猫』のあらすじと作者紹介です。
物語:地獄から聞こえてくるような声
私は子供の頃から大人しい性格で、優しすぎることを仲間たちから、からかわれることがあった。
結婚した妻は、私と同じ動物好きだった。
私たちはいろんな動物を飼った。
なかでも”プルート”と名付けた黒猫は美しく、利口で私のお気に入りだった。
数年後、私の性格は、酒癖によって急激に悪く変わってしまう。
私は妻に手を上げるようになり、飼っていた動物を虐待するようにもなった。
ある夜のことだ。
ひどく酔っ払って帰ってきた私は、なんだかプルートに避けられているような気がした。
そこで私はプルートを捕まえる。
だが、プルートはいきなりのことにびっくりして、私の手を噛んできた。
そのとき、私にたちまち悪魔のような怒りが乗り移った。
私は我を忘れてペンナイフを取り出し、プルートの片眼をえぐり取った。
朝になって理性を取り戻してきた私は、自分のしたことに、恐怖と後悔を感じていた。
だが、それも酒の影響もあったのか曖昧な感情で、心が突き動かされることはなかった。
片眼を失ったプルートは、少しずつ回復してきた。少なくとも痛みは消えたようだった。
ただ、当たり前のことだが、プルートは私が近づくと逃げていく。
私は自分をあんなにも慕っていた猫が、こんなに自分を嫌うようになったことを、はじめは悲しく思った。
しかし、それもやがて癇癪*に変わっていった。
人は、”してはいけない”というだけの理由で、邪悪な行いをしてしまうことがある。
そんな天邪鬼*の心が、私を破滅に陥らせた。
ある朝、私はプルートの首に縄をかけ、泣きながら木の枝につるした。
そしてその夜、火事で家は燃え上がり、何もかもが焼けてしまった。
後日、私は焼け跡へと向かう。
そこには、一カ所だけ壁が残っていて、首に縄をつけたプルートの姿が焼き付けられていた。
ある夜、私は半ば茫然と酒場に腰掛けていた。
すると驚くことに、プルートによく似た、片眼がない猫が現れたのだ。
猫は家までついて来て、妻のお気に入りとなった。
なぜだか猫は私をつけまわすのだが、私はそれが嫌で、猫から逃げ出すようになっていった。
ある日、家の用事で妻と私が自宅の地下室へと降りていくと、猫もいっしょに降りてきた。
だが、そのせいで私は階段から落ちそうになった。そのときのことだ。
私はかっと激怒した。
近くにあった斧を振り上げ、猫に一撃を打ち込もうとする。
だが、その一撃は妻が遮る。
私は邪魔されたことに腹が立ち、斧を妻の脳天に打ち込んだ。
即死だった。
妻はうめき声をたてることもなく、その場で倒れて死んでしまった。
私は妻の死体を隠すため、地下室の壁に死体を塗り込むことにした。
死体を壁に寄せ掛けて、煉瓦を積み直し、漆喰*を塗った。
すると壁には手を加えた様子が少しも見えなくなった。
私は得意になった。
次は猫を殺してやろうと思った。
だが、どこにも猫の姿が見えなかったので、私は久しぶりにぐっすりと眠った。
猫は二日目、三日目になっても、姿を見せることはなかった。
四日目になると、警察が家を調べにやって来た。
警察は家の地下室も調査したが、わかるはずがなかった。
警察は納得し、引きあげようとした。
私はそのことに喜びを抑えられなかった。
「皆さん、この家はなかなかよくできているんですよ。壁も頑丈です」
私はそう言って、杖で壁の煉瓦を強く叩いた。
すると、壁の中から異様な金切り声が聞こえてきたのだ!
その声は人間のものではない!
まるで地獄から聞こえてくるような悲鳴!
怪しんだ警察はその壁を崩した。
すると、そこには死骸が、すっくと人々の眼前に姿を現した。
その頭の上には、赤い口を開け、片眼を光らせた、あの猫が座っていた。
私は死体といっしょに、怪物も壁に塗り込めてしまっていたのだった!
(おわり)
ーーーーー
[用語の説明]
*癇癪:怒りの発作のこと
*天邪鬼:人の考えに逆らった行動ばかりをすること
*漆喰:煉瓦を塗り固めるためなどに使われる建築材料のこと
ーーーーー
作者:エドガー・アラン・ポー
作者:エドガー・アラン・ポー(1809~1849年)
アメリカ出身の小説家であり、詩人。
本作:『黒猫』は1843年に発表されています。
ポーの一人称小説。
1843年作。
黒ネコをころした主人公の「私」は、ネコの幻影におびやかされ、妻もころしてしまう。
恐怖と幻想の世界をえがく、ポーの代表作。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) 黒猫 より)
功績:近代推理小説の開祖
近代推理小説の開祖とされています。
なお、『モルグ街の殺人』は、文学史上で世界初の推理小説だといわれています。
その他の代表作には『アッシャー家の崩壊』など多数。
作風:怪奇と恐怖に満ちた作品の数々
怪奇と恐怖にみちた作品をのこした。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
(前略)『黒猫』の入った短編集『物語』など、不気味、恐怖の印象と怪奇な美を読者にあたえるもの、そして推理的なものをつぎつぎに発表した。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
なお、詩についてはイギリス・ロマン派の影響を受けていたとされているようです。
(前略)いずれもイギリスーロマン派詩人のえいきょうが強い。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
人生:波乱に満ちた生涯
旅芸人を両親として、ボストンに生まれた。
おさないときに、みなしごとなり、アラン家の養子となる。
1826年にバージニア大学へ入学。
恋人との婚約に失敗したり、借金をつくったりで10か月後に退学、養父と不和になり家出する。
1830年に陸軍士官学校に入学したが、なまけて放校になり、アラン家との縁も切れた。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
なお、このときまでにポーは、詩集を3冊発表しています。
やがて短編小説を書きはじめ、1833年に雑誌の懸賞小説に当選し、そのあと雑誌編集者の職をえた。
しかし、やがて酒乱を口実にくびにされた。
1836年、めいの13歳のバージニアと結婚。
その後、リッチモンド・フィラデルフィアなどで雑誌関係のしごとをしたが、長つづきせず、まずしさのなかで各地を放浪した。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
その後は妻が貧困のうちに死亡。
ポーはその悲しみを紛らわせるため、その場限りの愛や酒に溺れ、異常な精神状態に陥ります。
1849年には大学時代の恋人と婚約したものの、その後、訪れたボルチモアで大統領選挙の騒動に巻き込まれて泥酔。
行き倒れの形で、その生涯を閉じました。
『黒猫』の考察
本作:『黒猫』にまつわる考察です。
ーーーーー
注:ここからの情報は自分独自の考察に過ぎません。
間違っていないとは言い切れませんので、あくまで一つの参考にして下さいませ。
ーーーーー
プルートの幻影と破滅への道
本作では自身が身勝手に傷付けたかつての愛猫:プルートの面影を、目の前の黒猫に重ねたことで、苦しみ、破滅に陥る様子が描かれていました。
ポーの一人称小説。1843年作。
黒ネコをころした主人公の「私」は、ネコの幻影におびやかされ、妻もころしてしまう。
恐怖と幻想の世界をえがく、ポーの代表作。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) 黒猫 より)
よって主人公の「私」にとって、本作の終盤で壁の中から聞こえてきた悲鳴は、プルートの嘆きだった…と解釈することもできるのかもしれません。
すると、壁の中から異様な金切り声が聞こえてきたのだ!
その声は人間のものではない!
まるで地獄から聞こえてくるような悲鳴!
エドガー・アラン・ポー:『黒猫』のあらすじと考察まとめ
本作:『黒猫』は、恐怖と幻想の世界が描かれていました。