【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『モルグ街の殺人』をご紹介させていただきました。
あらすじは全文ふりがな付きで、読み聞かせができるようにまとめています。
一つの参考にして下さいませ。
- 全文ふりがな付きのあらすじ要約
- 作者紹介
- 考察
- 参考文献
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『モルグ街の殺人』のあらすじ要約【ネタバレあり】
まずは本作:『モルグ街の殺人』のあらすじと作者紹介です。
物語:天才探偵の名推理
一八XX年にパリに住んでいたとき、私はオーギュスト・デュパンという名の青年と知り合いになった。
デュパンは並外れた分析力と想像力を持っていた。
私の考えていることをずばりと言い当てては、私を驚かせたものだ。
ある日、次のような新聞記事が出た。
モルグ街での奇怪なる殺人事件
ーー今日の午前三時頃、モルグ街にある家の四階から恐ろしい悲鳴が聞こえた。
警官二名と近隣の住民たちが駆けつけたものの、出入り口には鍵がかかっており、窓には釘が打ち付けられていた。
こじ開けて中へ入っていくと、部屋は荒らされていたが、金品はそのまま残されていた。
二人暮らしだったレスパネ夫人も娘も、すぐには見当たらなかったが、娘の死体は煙突の中、母親の死体は裏庭で見つかった。
人が出入りすることはできなかった現場で起きたこの事件には、まだ何の手がかりもない。
続けて翌日の新聞では、この難事件への証言が掲載されていた。
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警官の証言
警官:イジドル・ミュゼの証言
「四階へ向かっている間、別の二名の声が聞こえました。
一人は荒々しい声で、『くそッ!』という言葉と、『畜生』という言葉を聞き取ることができました。
もう一人は鋭く妙な声で、外国人だったと思います。男か女かはわかりませんでしたが」
銀行頭取の証言
銀行頭取*:ジュール・ミニューの証言
「レスパネ夫人は亡くなられる数日前に銀行にいらして、四千フラン*を引き出しました。
その後は銀行員:アドルフ・ル・ボンが夫人をご自宅まで送り届けました」
医師の証言
医師:ポール・デュマの証言
「夜明け頃、遺体を検視するために呼ばれて行きました。
二人の遺体はひどい状態で、どうしたらここまでの状態にできるのか、さっぱり見当がつきませんでした」
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手がかりらしいものは何もなく、警察はお手上げ状態だった。
そこで事件に興味を持ったデュパンは、独自に調べてみることにした。
知り合いの警視総監*から許可をもらい、事件現場の検証へ向かった。
遺体を調べた翌日、デュパンは言った。
「『どんなことが起こったのか?』ということよりも、『今までにまったく起こったことのないことはどんなことか?』を考えなければならない」
デュパンは続ける。
「まず警官が聞いた声についてだが、一人はフランス人、もう一人は鋭く妙な声だったと証言していた。
そして誰もそれ以外に言葉らしい言葉を聞いていない。
出入り口には鍵がかかっていて、部屋の窓の外には、避雷針*が立っていた。
避雷針から窓への距離を考えると、誰だって窓に直接手をかけることはできない。
できたとしても、窓には釘が打ち付けられていた。
だが、もし並外れた勇気と力があれば、あそこから部屋に入ることも不可能ではない」
そしてデュパンはこう尋ねた。
「超人的な能力、獣的な残酷さ、動機のない殺人、奇妙な声、それらを結びつけると、どんな結果になる?」
デュパンは事件現場で見つかった毛や手形などから、犯人は逃げ出した”オランウータン”だろうと推理した。
その後、新聞の広告を使い、いっしょにいたはずのフランス人をおびき出したところ、その男が白状した。
脱走したオランウータンを追いかけて自分も避雷針を上ったものの、窓の外から四階の部屋でのオランウータンの暴走を見て、思わず逃げてしまったのだと。
オランウータンは捕獲され、事件は解決した。
デュパンは満足そうだった。
(おわり)
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[用語の説明]
*銀行頭取:銀行の最高責任者のこと
*フラン:フランスなどにおける貨幣の単位のこと
*警視総監:警察の最高責任者のこと
*避雷針:建物を落雷から守るための金属棒
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作者:エドガー・アラン・ポー
作者:エドガー・アラン・ポー(1809~1849年)
アメリカ出身の小説家であり、詩人。
功績:近代推理小説の開祖
近代推理小説の開祖とされています。
本作:『モルグ街の殺人』は、文学史上で世界初の推理小説だといわれています。
その他の代表作には『黒猫』や『アッシャー家の崩壊』など多数。
作風:怪奇と恐怖に満ちた作品の数々
怪奇と恐怖にみちた作品をのこした。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
(前略)『黒猫』の入った短編集『物語』など、不気味、恐怖の印象と怪奇な美を読者にあたえるもの、そして推理的なものをつぎつぎに発表した。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
なお、詩についてはイギリス・ロマン派の影響を受けていたとされているようです。
(前略)いずれもイギリスーロマン派詩人のえいきょうが強い。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
人生:波乱に満ちた生涯
旅芸人を両親として、ボストンに生まれた。
おさないときに、みなしごとなり、アラン家の養子となる。
1826年にバージニア大学へ入学。
恋人との婚約に失敗したり、借金をつくったりで10か月後に退学、養父と不和になり家出する。
1830年に陸軍士官学校に入学したが、なまけて放校になり、アラン家との縁も切れた。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
なお、このときまでにポーは、詩集を3冊発表しています。
やがて短編小説を書きはじめ、1833年に雑誌の懸賞小説に当選し、そのあと雑誌編集者の職をえた。
しかし、やがて酒乱を口実にくびにされた。
1836年、めいの13歳のバージニアと結婚。
その後、リッチモンド・フィラデルフィアなどで雑誌関係のしごとをしたが、長つづきせず、まずしさのなかで各地を放浪した。
(『学習人物事典』409ページ ポー(エドガー=アラン=) より)
その後は妻が貧困のうちに死亡。
ポーはその悲しみを紛らわせるため、その場限りの愛や酒に溺れ、異常な精神状態に陥ります。
1849年には大学時代の恋人と婚約したものの、その後、訪れたボルチモアで大統領選挙の騒動に巻き込まれて泥酔。
行き倒れの形で、その生涯を閉じました。
『モルグ街の殺人』の考察
本作:『モルグ街の殺人』にまつわる考察です。
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注:ここからの情報は自分独自の考察に過ぎません。
間違っていないとは言い切れませんので、あくまで一つの参考にして下さいませ。
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構成から垣間見える推理小説の原型
まずこのことは作者紹介のところでもご紹介させていただきましたが、本作は、文学史上で世界初の推理小説だといわれています。
そのため、本作は、その後に発表された数多くの推理小説の原型となったともいわれており、本作からはその一端が垣間見えます。
その一つが本作で使われていた構成です。
[本作の構成]
1.事件発生
2.関係者たちの証言
3.推理
4.事件解決
上記の構成は、推理小説の原型として、おそらく多くの推理小説にも使われているのではないかと思います。
『モルグ街の殺人』あらすじと考察とネタバレまとめ
本作:『モルグ街の殺人』には、現代推理小説にも通ずる推理小説の要素を垣間見ることができます。
内容自体はミステリ小説などを読み慣れた方には少々物足りないかもしれませんが、上記のことに着目しつつ本作を読むと、また違った面白さを感じられるかもしれません。
少なくとも自分はそうでした。