思考実験や名作のページをつくるにあたり、自分が活用させていただいている本が、
という一冊です。
哲学者:マイケル・サンデルが著者のベストセラーになります。
本書はそんなサンデルが、ハーバード大学で講義をした内容が元となった一冊です。
本書は講義から誕生した。
私は三〇年近く、ハーヴァード大学の学部生に政治哲学を教えるという光栄に浴してきた。
そして、その年月の大半で「正義」と銘打ったコースを教えてきた。
このコースでは、正義について書かれた哲学の名著を学生に紹介するとともに、哲学的問いを提起する現代の法的・政治的論議をとりあげる。
(『これからの「正義」の話をしよう』421ページ より)
ちなみにサンデル教授の授業はハーバード大学の学生たちには超がつくほど人気とのこと。
その模様は日本でも『ハーバード白熱教室』としてテレビで放映されました。
なお、実際の講義の模様は下記の動画です。
本書は大学の講義を一冊に凝縮した内容となっているため、個人的にはなかなかに読み応えがありました。
このページでは、そんな本書の内容を簡単にご紹介させていただきます。
- 本書の要約
- 特長
- 留意点
- 参考文献
タッチ⇒移動する目次
『これからの「正義」の話をしよう』要約
3つの正義を考察
まずタイトルにある通り、本書は『正義』が一大テーマとなっています。
大別すると、次の『3つの正義が考察』されていました。
- 功利主義
- 自由至上主義
- 美徳の養成と共通善
この探求の旅を通じて、われわれは正義に対する三つの考え方を探ってきた。
第一の考え方では、正義は効用や福祉を最大化することーー最大多数の最大幸福ーーを意味する。
第二の考え方では、正義は選択の自由の尊重を意味するーー自由市場で人びとが行なう現実の選択(リバタリアンの見解)であれ、平等な原初状態において人びとが行なうはずの仮説的選択(リベラルな平等主義者の見解)であれ。
第三の考え方では、正義には美徳を涵養することと共通善について論理的に考えることが含まれる。
(『これからの「正義」の話をしよう』406ページ より)
本書では、アリストテレスやカント、ロールズなどの哲学者たちの考えを紐解きつつ、これらの正義を考察しています。
正義への考えを巡らせてくれる一冊でした。
なお、本書の著者であるサンデルが支持する正義は3つ目です。参考までに。
もうおわかりだと思うが、私が支持する見解は第三の考え方に属している。
(『これからの「正義」の話をしよう』406ページ より)
『これからの「正義」の話をしよう』の2つの特長
続いては特長です。2つあります。
<1>ハーバード大学の講義が凝縮
まずこれは冒頭でもご紹介させていただきましたが、本書は『著者である哲学者:サンデルのハーバード大学での講義内容が元となった一冊』になります。
複数回に渡る大学での講義が一冊にまとめられているため、とても読み応えがありました。
ちなみに著者の類書である『ハーバード白熱教室講義録』の内容は本書とほぼ同じです。
「では、違いは何か?」というと、一つは上記の本の方が本書よりも学生たちとの対話あり、笑いありの内容であることです。
そのため、読みやすさ重視なら上記の本の方が良いかもしれません。上下巻ありますが。
<2>わかりやすい実例が豊富
続いて『わかりやすい実例が豊富』であることも特長です。
本書は主にアメリカで起こった実際の出来事などを取り上げつつ内容が進んでいくため、教科書よりは幾分読みやすいかなと思います。
少なくとも自分はそうでした。
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とはいえ、実例のなかには少々血なまぐさいものもあります。
その点は悪しからず。
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『これからの「正義」の話をしよう』の2つの留意点
最後は留意点です。
本書を最後まで読み終えた自分が、個人的に感じたことのまとめになります。
[1]とはいっても難しいかも…
さきほど本書にはわかりやすい実例が豊富であるといいました。
ですが、それでも難しいといえば難しいです。
自分は哲学に無知なため、読んでいてわからないことは調べながら、戻りながら読みました。
[2]答えが示されているわけではない
また本書は”正義”や”哲学”にまつわる内容ということもあってか、明確に答えは示されてはいません。著者の主張も控えめです。
そもそも答えなどないのかもしれませんが、このことを知っておかないと読み終わった後にモヤっとするかもしれないです。
よって本書の内容への理解を深めるためには、読みながら自分自身で考察していくことが必要になるかと思います。