『クレバーハンス効果』賢い馬:ハンスには人間の13、14歳レベルの知能があった?【心理学史】

馬

クレバーハンス効果』とは、『動物が人間の言葉などを理解しているかのような行動をとる現象』のことです。

ここからは、この現象が生まれるきっかけとなった出来事をご紹介させていただくこととします。

このページでわかること
  1. 賢い馬:ハンスの実話
  2. そのカラクリとは?
  3. 参考文献

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注:参考文献の一つには、このクレバーハンスの出来事は思考実験として分類されていました。

そのため、ここでも思考実験形式でご紹介させていただいています。

しかし、『トロッコ問題』などの多くの思考実験とは異なり、このクレバーハンスの出来事はすべてが”実話”です。そのことは念のためご承知おき下さいませ。

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『クレバーハンス効果』賢い馬:ハンスの実話【心理学史】

それではクレバーハンス効果の背景となった実話のご紹介からです。

賢い馬:ハンスとその飼い主:オステンが中心となった実話

まずこの実話には、賢い馬:ハンスその飼い主であるフォン・オステンが中心に登場します。下記がその詳細です。

主な登場人物
  1. ハンス:人間の言葉などを理解する賢い馬として、かつてドイツで賞賛を生んだ(黒毛の雄馬)
  2. フォン・オステン:ハンスの飼い主であり、元公立中学校の教師(当時65歳前後の年齢で、白髪の男性)

ここからは上記の前提を元にした、クレバーハンス効果が生まれた実話のストーリーとなります。冒頭でお伝えした通り、思考実験形式となっています。

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「算数ができるという賢い馬(ハンス)が評判になった

かつてドイツで、算数ができるという賢い馬の存在が評判になりました。

馬の名はハンスといいます。

サラブレッド

ハンスは訓練により、計算ができるようになったらしい

そんなハンスは訓練によって、たし算やひき算やかけ算、わり算といった計算ができるようでした。

実際にハンスはそれらの計算問題に正答していたといいます。

飼い主のオステンいわく、それを可能にしたのはハンスに小学校の教育課程に基づく訓練を施した結果だといいます。

時計の針の位置を指す応用問題も解けた模様

さらにハンスは、「7時半の10分後には、時計の長針と短針はどこを指しているか?」などといった、時計の針の位置を指し答えるような応用問題にも正答できていたようです。以下の一覧はハンスが実際に解いていたとされることの一部です。

ハンスができたこと
  1. 分数⇔小数の変換
  2. 貨幣の価値の解答
  3. 時計の長短針の位置の解答
  4. ドイツ語の解答
  5. 自然数1~100までの解答
  6. その場にいる人数の解答
  7. 男女数の違いの解答
  8. 帽子の数の解答
  9. 傘の数の解答

人間の13、14歳に相当する能力だと推察

以上のことから、当時、そんなハンスを見た教育者の見解によると…ハンスには人間の13、14歳に相当する能力があると推察されていたようです。

ハンスは答えとなる数の回数だけ地面を蹴ることで解答していた

とはいえ、当然、ハンスは人の言葉を話すことはできません。

そこで問題への解答には、右前足で地面を蹴る形で行われました。

つまり答えが10であるなら、ハンスは自身の右前足で10回地面を叩くことで解答していたということです。

問題の出題から解答までの基本的手順
  1. 飼い主のオステンが口頭で問題を出題
  2. ハンスが右前足で地面を蹴って解答

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なお、アルファベットを答えるときも、アルファベット順を数に対応させることでこの方法による解答がなされていました。

またそれ以外にも「YES」を答える場合は首を縦に振り、「NO」の場合は首を横に振るといった方法もとられていたようです。

その他、上下左右を答える必要がある場合は、首をその方向に振る形もとっていたといいます。

ちなみに問題に正解したときは、ハンスには褒美としてニンジンやパンが与えられていました。不正解だったときの罰は与えられていません。

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科学者を含んだ何人もの立会いの下、実験による検証が行われた

そこで動物学者:シリングスらの立会いの下、実験によってハンスの芸当が検証されました。

当初、シリングスは、ハンスには何らかのトリックがあると考えていたようです。

結果、「トリックは存在しない」と結論付けられ、学者たちから太鼓判が押される

ところが検証の結果、ハンスには何のトリックも使われていないことが明らかとされました。

実験では、ハンスの飼い主:オステンがいない場合…つまりオステン以外が問題を出題した場合でも、ハンスは同様に問題に正解し続けたからです。

これによって少なくとも飼い主からハンスに合図を送っている可能性が除外されたということになります。

この結果も影響し、後に多くの学者は賢い馬:ハンスの存在に太鼓判を押すようになったといいます。

しかし、ハンスの能力はデタラメだった」

…しかし、実はハンスの能力はすべてがデタラメでした。

ハンスには計算をする能力も、ドイツ語を理解する能力も備わっていなかったのです。

問題:なぜハンスは問題に正解できたのか?

では、「なぜハンスは問題に正解し続けることができていたのでしょうか?

繰り返す通り、トリックが使われていないことは明白です。

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以上がハンスを巡る実話とその問いになります。

なお、思考実験としてこの実話を見るのなら、このさきの内容は、上記の問いに考えたうえで見ていただくと良いかと思います。

『クレバーハンス効果』賢い馬:ハンス騒動のカラクリ【暴かれた真相】

以下からはハンスの能力がデタラメだった真相についてです。

【結論】ハンスが人間の”機微”を察知した結果だった

まず結論からいうと、『ハンスが問題に解答できていた理由は、人間の”機微きび“を察知していたから』でした。

つまりハンスが視ていたのは問題ではなく、人間の反応だったということです。

ハンスは問題を理解しているわけではなかったといえます。

それが暴かれた主な理由は下記になります。

ハンスは目隠しをされると問題の正答率が89%⇒6%に激減した

まず心理学者:プフングストらの102回の実験により、ハンスは目隠しをされると問題への正答率が89%⇒6%に激減したことが確認されました。

これにより、ハンスが視覚から得た何らかの情報を頼りに問題に解答している疑いが高まりました。

ハンスは出題者や見学者の動きを引き金に解答していた疑いが判明

そこで出題者の反応の有無とハンスの解答の関係が観察されたところ、ハンスの解答は出題者の動きが引き金になっていることが判明しました。

ハンスが右前足を蹴り始めるタイミングと蹴り終わるタイミングには、出題者の動きと関係があると疑われたということです。実験では具体的に以下のことが確認されました。

出題者の動きとハンスの関係
  1. 出題者が質問し終わって身体を少し傾ける⇒ハンスが右前足を蹴り始めた
  2. 出題者が正解の数のタイミングで微細な反応⇒ハンスもそれに応じて反応
  3. 逆に出題者に動きがなかったとされたとき、ハンスは一度も正答できなかった

たとえば、問題の正解を知っている出題者は、ハンスの蹴りが正解の数に達すると、無意識の期待反応などからピクッと反応してしまっていたとされています。

それはたとえ本人が気づかないレベルの微細な反応であっても、ハンスはその反応を察知していたようです。

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“出題者が問題を出す前”に身体を傾けたとしても、ハンスは右前足を蹴り始めたこともあったようです。

また出題者が問題を出題してから動くまでの間、ハンスは絶えず、無意味に地面を蹴り続けていたこともあったといいます。

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実際に出題者と見学者が問題の答えを知らない場合、ハンスの正答率は98%⇒8%に激減

さらに、49回の実験によって、出題者と見学者が問題の答えを知らなかった場合だと、ハンスの正答率は98%⇒8%に激減したことが明らかとされました。

以上のことが、ハンスが視ていたのは問題ではなく、実は人間だったと結論付けられた理由になります。

このことから少なくともハンスは”問題を理解できる”という文脈において、賢い馬とはいえなかったということです。

『クレバーハンス効果』賢い馬:ハンスの心理学史まとめ

ハンスのカラクリが暴かれたことで、飼い主であったフォン・オステンは大変な失望を感じたようです。

しかし、この騒動は心理学や動物学などの学問の世界に影響を与え、後に警察犬の訓練が見直されるきっかけにもなりました。

ハンス騒動を教訓として、警察犬の訓練にも大幅な改善がなされたという。

捜査員が犯人の行方を知らないときには、警察犬の追跡の成績がガタ落ちすることが判明したのだ。

犬は、犯人の匂いなどによって追跡するよりもむしろ、犯人を追う捜査員の足取りを敏感に察知して、形だけ先導するように正しい方向に走ってゆくという場合が意外に多かったわけである。

(『論理パラドクス 論証力を磨く99問』152ページ より)

ハンスの騒動から得られたことは、単に馬の知性の有無だけではありませんでした。

参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考とさせていただきました。

ありがとうございました。

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