【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『ほら吹き男爵の冒険』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『ほら吹き男爵の冒険』のあらすじ
- 考察
- 参考文献
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『ほら吹き男爵の冒険』のあらすじ
あらすじと童話に登場する主人公のモデル、映画のご紹介です。
物語:その話って本当?
「何、君もわしの話が聞きたいのか?」
「うーむ…まあ、話さないこともないが…くれぐれもわしを『ほら吹き*男爵*』などと呼ぶのは止めてくれたまえよ?」
あれは昔、馬に乗って旅をしたときのことじゃ。
朝から降っていた雪が、夕方になって急に激しくなった。
前には進めず、こうなると、もう野宿しかない。
わしは、まず大事な馬をどこかにつなごうと思った。
見ると少し先に、くいが一本、雪の上に突き出ている。
わしはそのくいに馬をつなぎ、横になった。
相当疲れておったのじゃろう。
わしが目を覚ましたのは、次の日の昼だった。
空は晴れ、太陽がかんかんと照っている。
暖かいというよりは、むしろ暑いほどだ。
「むむ!」
わしはそこで気がついた。
「馬がいない!あのくいもない!」
「くそ、馬め。くいをひきずって逃げたか…!」
そのときのことじゃ。
「ヒヒーン」
突然、空から馬のいななく声が聞こえた。
「おお!」
わしは思わず大きな声をあげた。
目の前には教会があって、塔がそびえている。
その塔の一番上には十字架が立っていて、そこには馬がぶら下がっているではないか。
賢いわしは、すぐにわかった。
昨日は大雪で教会は雪に埋もれていた。
だから、十字架の先だけが雪の上に突き出ていたのだ。
それをわしは、くいと勘違いしたというわけじゃ。
暑さで雪がとけたら、この通りだ。
「ヒヒーン」
馬は、まだ苦しそうにいなないている。
わしは急いでピストルを構えた。
「ん?苦しんでいる馬を一刻も早く楽にするために馬を撃つ?」
「はは、そんなことはせんよ。見損なってもらっては困る」
「わしは馬をぶら下げているロープを狙ったんだ」
「バーン!」
わしが撃ったのだからして、当然、弾はロープに命中した。
馬は無事救われて、わしのところに駆けて来た。
「めでたし、めでたし」
「ん?なんだ君、その顔は」
「わしがほらを吹く男に見えるかね」
(おわり)
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[用語の説明]
*ほら吹き:でたらめを言ったりする人のこと
*男爵:ヨーロッパの貴族階級の一つのこと
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モデル:ミュンヒハウゼン
モデル:ミュンヒハウゼン(1720~1797年)
この童話の主人公である、『ほら吹き男爵』のモデルとなったドイツの貴族。
童話のあらすじは、話好きだったミュンヒハウゼンが客に語った奇想天外な物語が、本として出版されたものとなっています。
なお、童話の大元の作者は不明です。
1943年には映画が公開
その後、1943年には映画:『ほら男爵の冒険』がドイツで公開されています。
日本語吹替版もあるようです。
とはいえ、自分が確認したところ、上記のリンクからでは在庫はないようでしたが…。
『ほら吹き男爵の冒険』の考察
最後は考察です。
『枠物語』の様式が使われている
本作:『ほら吹き男爵の冒険』には、『枠物語』の様式が使われています。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の池田美桜さんは、この『枠物語』を次のように解説して下さっています。
伝聞形式や過去回想形式等を用いることで作品中に一つ以上の物語を埋め込んでいる、入れ子型構造の物語形態をいう。枠小説とも。
(『童話学がわかる』168ページ より)
つまりこの童話においては、登場人物のほら吹き男爵が自ら語っている過去回想の場面こそが、この『枠物語』に当てはまるということです。
白百合女子大学文学部助教授(当時)の井辻朱美さんは、このような『枠物語』の様式を、次のように解説なされていました。
枠物語とは古くは『千一夜物語』にもさかのぼることのできる、物語の中に物語のある入れ子構造のことであるが、今世紀になってからの枠物語の大半は、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」のように、<ここ>に住む主人公たちが、異世界へいざなわれて冒険をし、<ここ>にもどってくるという形をとるようになった。
(『童話学がわかる』147ページ より)
『枠物語』とは?代表作品12例からその効果を考察【わかりやすく説明】
『ほら吹き男爵の冒険』あらすじまとめ
童話:『ほら吹き男爵の冒険』は、話好きとされたドイツの貴族:ミュンヒハウゼンの逸話が元となっています。
ちなみにこの童話は今では名作に数えられるほど有名ですが、元々はミュンヒハウゼンの許可なく何者かが勝手に出版したという背景があるようです。
奇想天外なのは、あらすじだけではないのですね。