とある保護者
【公文式のまとめページ】今まで伝えてきたすべて
トモヤ
結論からいうと、日能研と公文には対極のような違いがあります。以下の通りです。
- “型にはめない”のが日能研、”型にはめる”のが公文
- “思考力を伸ばす”日能研、”暗記力が伸びる”公文
- 日能研が設立を後押ししたアンチ公文の学習教室:ガウディアの存在
上記の理由については参考文献にある書籍や関連サイトの情報も多数使わさせていただいているため、おそらく多くの方が納得できる内容となっているはずです。
また自分は日能研で講師をしていたわけではないものの、進学塾と公文では講師経験がありますので、そのことも踏まえつつ考察しています。習い事選びの一助として下さいませ。
- 【理由アリ】日能研と公文の決定的な2つの違い
- 日能研が設立を後押ししたアンチ公文の学習塾:ガウディアについて
- 参考文献
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日能研と公文の2つの違い
まずは冒頭でもお伝えした、日能研と公文の2つの違いの理由についてです。
- “型にはめない”のが日能研、”型にはめる”のが公文
- “思考力を伸ばす”日能研、”暗記力が伸びる”公文
順にお伝えさせていただきます。
<1>”型にはめない”のが日能研、”型にはめる”のが公文
まず1つ目の違いは、“型にはめない”勉強をするのが日能研で、“型にはめる”勉強をするのが公文です。
この理由については、両者が実践する勉強法が、「訓練に近いかどうか?」ということが関係しています。
日能研の元講師:松崎 一優(まつざき かずひろ)さんは、自身の経験を次のように語ります。
公文式の勉強法は「訓練」に近く、非常に正確な計算力と反復にも対応できる忍耐力を生み出す点で、高い信頼性を置くことができます。
反面、子供が電子計算機になってしまわないように、その劇薬のような勉強法をうまくコントロールすることが不可欠です。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』158ページより)
公文式算数・数学が『劇薬のような勉強法』なのかはさておくとしても、公文と進学塾で講師をしていた自分の経験上でも、公文式学習が訓練に近いことには完全に同意します。
『公文で思考力(考える力)は伸びないのか?』公文と進学塾で講師だった自分の答え【完全版】
またこのことは公文式教室で指導者をしていた島田さん(仮名)も、自身の経験から同様のことを次のように語っていました。
パターン化された問題はどんどん解けるのに、少しでも考えて創造するような問題はぜんぜんダメなんです。
(『危ない公文式早期教育』108ページより)
公文に対する同様の証言は、この他にも数多くの方々から挙がっています。
しかもこれらの話は算数・数学に限ったことでもありません。
一例として、公文式経験者で東大出身の千石 智則さん(仮名)は、自身の公文での経験を次のように振り返っています。
計算能力はもちろん、英語だと文法を考えないでもわかるようになるまでひたすら練習するという感じでした。
たとえば現在完了だったら現在完了の練習をずっとやっていくと、自然にそれが頭に叩き込まれて。悪い面というと、その裏返しです。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
あと、英語は上のほうの教材になると文章を写すだけとか、そんな感じなんですよ。
「これ、やっていて意味があるのかな」と思いました。中1ぐらいで疑問をもちましたね。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』26ページより)
これ以上は長くなるので省略しますが、公文式国語においても同様の指摘は数多いです。
公文へのこれらの指摘は、自分も塾講師をしていたときからこれまでに、よく耳にしています。
もちろん型にはめることが良いか悪いかは別問題。
とはいえ、公文式学習には少なからず、学習者を型にはめる面があると見て間違いなさそうです。
<2>”思考力”を伸ばす日能研、”暗記力”が伸びる公文
では、一方の「日能研はどうなのか?」
これについてはまず繰り返しになりますが、自分は日能研以外の進学塾で講師をしていたに過ぎません。
そのため、自分の経験からここでハッキリとしたことは言えないものの、ここでもさきほどご紹介させていただいた日能研の元講師:松崎 一優(まつざき かずひろ)さんの証言が参考になります。以下の通りです。
日能研でつるかめ算を教えていた私は、計算も速くて正確な一人の生徒が放った言葉を今も思い出します。
「僕は公文式で方程式をやってるので……」
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』158ページより)
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まずは念のため補足しますが、ここで言及されている『つるかめ算(鶴亀算)』というのは以下のようなものとなります。
つるかめ算とは、鶴と亀がそれぞれ何匹ずついるかわからない中で、足の本数の合計だけがわかっている……というツッコミどころの多い状況を仮定した計算方法です。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』159ページより)
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つまり松崎さんからすると、『思考力を駆使して解いてほしかった、つるかめ算の問題を、公文式経験者の子供が方程式によって型にはめて解こうとしたことに違和感を感じた』というわけです。補足までに。
(前略)仮に全員が亀あるいは鶴だったと仮定して、実際の足の本数との差はなぜ生まれるのか考えてみようというところから、授業は始まります。
亀だと思っていたものが実は鶴だったとき、想定していた足の本数からいくつ少なくなるかという「置き換え」が、この単元で学ぶべき気付きに他なりません。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』159ページより)
そして松崎さんは次のように続けます。
方程式はときとして、そうしたストーリーをすべてすっ飛ばして、手順化してしまいます。
「あ、これは方程式を使えば解ける問題だ。これは違う」という選別→計算という効率主義が前面に出てくると、考え方の道筋を自分でたどっていないので、勉強が限りなく暗記に近くなります。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』159ページより)
以上のことは、あくまで松崎さん一人の意見にしか過ぎません。
しかし、あえてこれらのことを踏まえるとするならば、日能研では”思考力”を伸ばす勉強が実践され、公文では”暗記力”が伸びる勉強が実践されていると見ることができます。
またこれも補足ですが、公文では、つるかめ算は一切勉強しません。
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ちなみに松崎さんは暗記を否定しているわけではなく、むしろ重要な能力だと考えていることを、本書のなかで明かしています。その他の松崎さんの意見については、参考までに以下にまとめておきます。
私立の難関校以上の学校の入試問題は、大問の1で計算問題など出題しない学校がざらにありますし、ほかの大問も「これ、なに算ですか?」と聞かれて即答できるものは多くありません。
ほとんどの場合、教科書通りの定番の形式では出題されず、あらゆる特殊算が複合的に絡み合っています。それらを冷静にほぐして読解していくことが求められているのです。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』160ページより)
もしも公文式を中学受験に取り入れたいと考える人は、最終的な着地点を決めて、そのどこまでを公文式に担ってもらうかを考えるべきでしょう。
スピーディかつ正確な計算力は魅力的ですが、受験算数という教科の奥深さを考えるとき、公文式を極めることが中学受験にとって即座に役に立つとは思えません。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』160ページより)
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日能研VS公文において欠かせないエピソード
以上の内容まででも、十分に日能研と公文の違いの一端が垣間見えたはずです。
最後は日能研と公文を語るうえで欠かせない、とある学習教室の存在をご紹介して終わりとさせていただきます。
日能研関東らが共同出資したアンチ公文『ガウディア』の存在
『ガウディア』は日能研関東(日能研の企業名)と河合塾グループが共同出資会社を設立した後、2006年に設立された学習教室です。2009年にはフランチャイズ教室の展開もスタートされています。
一見すると、公文とは何の関係もない学習教室のようですが…実はその実態はアンチ公文が明確化されています。
週2回教室に通い、算数と国語の無学年のプリント教材に自学自習スタイルで取り組む点は、公文式とも学研教室とも似ている。
1日あたりのプリント枚数に上限を設定したうえでその範囲内で量を調整するところは、公文式と学研教室の折衷といったところ。
しかし教材設計のコンセプトは明確に公文式のアンチテーゼである。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』178ページより)
以下はガウディアがフランチャイズ展開の開始直後に作成したパンフレットとコンセプト・ブックを元にした内容です。
コンセプト・ブックでは、国際的な学力調査で日本の子供たちの「活用力」不足が指摘されていることを根拠に、「大手学習教室の指導メソッドが教育トレンドに合っていない」と一刀両断する。
大手学習教室が公文式を示すことは明らかだ。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』178ページより)
パンフレットでは、「いきなり計算問題はやらない」「パターン学習ではない」「イメージして意味を理解する」「知識の活用力を高める」などのメッセージを強調する。
指導形態は似ているが、公文式が1970年前後にあえて捨てると決断した部分を主目的にしている点で、実は真逆の学習法であると言える。
(『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』178ページより)
ガウディアの詳細は以下のページにまとめているので、ここではこれ以上は言及しません。
【ガウディアの評判】公文と比較してわかった見逃せない特徴【進学塾と公文の元講師の自分が徹底解剖】
とはいえ、日能研が公文に対して明確な対抗意識を持っていることは間違いなく事実でしょう。
公文は日本の教育業界において大手になるので、何かと競合他社などからは敵対視されがちですが、なかでも日能研はその最たる例だと見ることできます。
日能研VS公文まとめ
- “型にはめない”のが日能研、”型にはめる”のが公文
- “思考力を伸ばす”日能研、”暗記力が伸びる”公文
- 日能研が設立を後押ししたアンチ公文の学習教室:ガウディアの存在
日能研のような中学受験塾と公文では、教育理念がまるで違います。
比較すること自体がナンセンスな気はするものの、塾選びなどの際は参考にして下さいませ。
注:教室や指導者によって違いも大きい
といっても、以上のことはすべて普遍的なことではありません。
教室や指導者によって違いは大きいでしょうし、指導方針などが今後ガラッと変わる可能性もゼロではないからです。
進学塾と公文で講師をしていた自分の経験上でも、教室の雰囲気や指導者の考えなどによって、「同じ塾なのにこうも違うのか…」と思わされたことがあります。
そのため、塾選びのときは何事も決めつけ過ぎず、実際に教室の様子などを目にしたり、その教室の指導者とのフィーリングなども大切にするようにして下さい。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献
関連ページ
【ガウディアの評判】公文と比較してわかった見逃せない特徴【進学塾と公文の元講師の自分が徹底解剖】
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