【『刑法』の判例一覧】有名な判例【総論&各論】

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判例一覧まとめ【全4科目】 判例一覧まとめ【全4科目】

このページでわかること
  1. 刑法の判例一覧
  2. 参考文献

刑法の判例一覧

総論

実行行為

・養父に日頃から暴力をふるわれ、その言動に畏怖して意思が抑圧されている12歳の養女に対して、養父が窃盗を指示、命令して行わせた場合、養父には窃盗罪の間接正犯が成立する(最決昭58.9.21)

違法性阻却事由

・侵害を予期していただけでは急迫性は失われないが、予期された侵害の機会を利用し、積極的に相手に加害行為をする意思で侵害した場合には、急迫性は認められず、正当防衛は成立しない(最決昭52.7.21)

・補充性とは、その危難を避けるための唯一の方法であることを指す(最大判昭24.5.18)

・正当防衛であると思って行為に及んでいる場合、故意責任を問うことはできないから、故意犯は成立しない(大判昭8.6.29)

・傷害罪において被害者の承諾があった場合であっても、違法性の有無は、単に承諾の存在の事実だけから判断すべきではなく、承諾を得た動機や目的、身体障害の手段や方法、損傷の部位や程度など、諸般の事情を照らし合わせて判断すべきである(最決昭55.11.13)

>>社会的相当性説

未遂

・殺害目的で毒物が混入された砂糖を郵送した場合、毒殺行為の実行の着手は、被害者がそれを受領した時点で認められる(大判大7.11.16)

・現金を引き出すため、銀行のATMに窃取したキャッシュカードを挿入する行為は、窃盗の実行の着手に当たる(名古屋高判平13.3.20)

・土蔵や倉庫に侵入する行為は、窃盗の実行の着手に当たる(名古屋高判昭25.11.14)

・家屋侵入後に物色のため、タンスや金庫などに近づく行為は、窃盗の実行の着手に当たる(大判昭9.10.19)

・家屋にガソリンを散布する行為は、放火の実行の着手に当たる(横浜地判昭58.7.20)

・詐欺の実行の着手に相手方が実際に錯誤に陥ったかどうかは問われない(大判大3.11.2)

・流血による恐怖心から犯罪を中止したとしても、任意性は認められない(大判昭12.3.6)

・犯行の発覚を恐れたことから消火に至ったとしても、任意性は認められない(大判昭12.9.21)

・放火犯が逃走前に第三者に対して消火を頼み、第三者による消火がなされたとしても、放火犯自身に中止行為といえる真摯な努力があったとは認められない(大判昭12.6.25)

・実行の着手に至っていない予備罪に、中止未遂が成立する余地はない(最大判昭29.1.20)

共犯

・共謀共同正犯とは、2人以上の者が、一定の罪を犯すことを共謀したうえ、そのなかの一部の者が実行に着手した場合、直接には実行に着手しなかった者も含めて共謀者全員に共同正犯が成立することを指す(大判大13.4.29)

・共謀共同正犯は、数人が順次に連絡し合うことにより、共通した犯罪意思を形成する態様であっても成立する(最大判昭33.5.28)

・結果的加重犯の共同正犯も成立する(最判昭26.3.27)

・予備罪の共同正犯も認められる(最決昭37.11.8)

罪数

・車を運転して信号無視をし、人身事故を発生させて人に損害を与えた場合、自動車運転過失致傷罪と道路交通法上の信号無視の罪とは、観念的競合となる(最決昭49.10.14)

・無免許かつ酒に酔った状態で自動車を運転した場合、道路交通法上の無免許運転罪と酒酔い運転罪とは、観念的競合となる(最大判昭49.5.29)

・酒酔い運転による人身事故によって人を死亡させた場合、自動車運転過失致傷罪と道路交通法上の酒酔い運転罪とは、併合罪となる(最大判昭49.5.29)

・人を殺し、死体を遺棄した場合には、殺人罪と死体遺棄罪とは、併合罪となる(大判明43.11.1)

・監禁罪と恐喝罪とは、併合罪となる(最判平17.4.14)

・窃盗教唆罪と盗品等有償譲受け罪とは、併合罪となる(大判明42.3.16)

・強盗殺人罪と犯跡隠蔽のための放火罪は、併合罪となる(神戸地判平14.10.22)

・保険金騙取目的で建物を放火し、保険金を騙取した場合、放火罪と詐欺罪とは、併合罪となる(大判昭5.12.12)

・手形を横領して偽造した場合、横領罪と有価証券偽造罪とは、併合罪となる(東京高判昭38.7.25)

各論

総説

・財物とは、有体物に限られず、管理可能なものをいう(大判明36.5.21)

>>管理可能性説

・禁制品に財物性は認められる(最判昭24.2.15)

・マイクロフィルムに財物性は認められる(東京地判昭55.2.14)

・不法領得の意思とは、権利者を排除し、所有者として振る舞う意思及び物の経済的用法に従って利用、処分する意思のことである(大判大4.5.21)

・自転車を窃取した場合、乗り捨てるつもりであったのなら、不法領得の意思が認められる(最判昭26.7.13)

・自転車を窃取した場合であっても、一時使用の目的で、直ちに返還するつもりであったのなら、不法領得の意思は認められない(大判大9.2.4)

・自動車を窃取した場合、長時間乗り回すつもりであったのなら、そこにたとえ返還の意思があったとしても、不法領得の意思が認められる(最決昭55.10.30)

・嫌がらせ目的で他人の財物を水中に投棄した場合、不法領得の意思は認められない(仙台高判昭46.6.21)

・校長に責任を負わせようと学校の金庫から重要書類を持ち出し、校舎の天井裏に隠した場合、不法領得の意思は認められない(大判大4.5.21)

・コピーして内容を他に漏らす目的で秘密資料を持ち出した場合、たとえ速やかに返還する意思があったとしても、不法領得の意思は認められる(東京地判昭59.6.28)

窃盗罪

・窃盗罪の客体となる他人の財物というのは、他人が占有する財物のことを指すが、それは財物に対しての事実上の支配が及んでいることを意味する(大判大4.3.18)

・死者に占有は認められないことは原則だが、殺害した犯人との関係においては、被害者である死者の死亡と時間的、場所的に近接した範囲内にある限り、死者の生前の占有が認められる(最判昭41.4.8)

・ゴルフ場の池にあるロストボールには、ゴルフ場による所有、占有が認められる(最決昭62.4.10)

・電車の網棚に置き忘れられた鞄の占有は、電車が一般人の立ち入りが容易な状態である限りは、誰の占有にも属さない(大判大15.11.2)

・旅館の客室に置き忘れられた物の占有は、旅館の管理者に属する(大判大8.4.4)

・共同占有者には、相互に占有が認められる(大判大8.4.5)

・封緘をした包装物を受託者が預かっている場合、包装物全体の占有は受託者にあるが、在中物の占有は委託者にある(大決昭32.4.25)

・パチンコ玉を磁石で誘導して穴に入れて当たり玉を出し、それを取得する行為は、窃取に値する(最決昭31.8.22)

・衣料品店で顧客を装って、上着を試着したままの状態で、便所に行くと偽って逃走する行為は、窃取に値する(広島高判昭30.9.6)

・商店の万引きは、商品を懐中に収めた時点で窃盗既遂罪が成立する(大判大12.4.9)

・窃取した財物を自己の所有物であると偽り、第三者を欺罔して金員を騙取した場合には、窃盗罪と詐欺罪の併合罪となる(最決昭29.2.27)

詐欺罪

・預金通帳や健康保険証、保険証書のような経済的価値効用を有するものには、財物性が認められる(大阪高判昭59.5.23)

・ATMからキャッシュカードで現金を引き出した場合、窃盗罪が成立する(東京高判昭55.3.3)

・誤振込みがあった場合に、そのことを告げずに窓口係員に預金の払戻しを請求し、それを受領したら、詐欺罪が成立する(最決平15.3.12)

横領罪

・土地の引渡しを実際に受けていなかった場合であっても、登記が自己名義であるならば、占有が認められる(大判昭7.2.1)

・他人の土地の登記済証や、登記に関する白紙委任状を有する者は、当該土地への占有が認められる(福岡高判昭53.4.24)

・委託に基づき受領した金銭が、不法原因給付に当たり、民法上、返還義務を負わない場合であったとしても、それは他人のものである(最判昭23.6.5)

盗品等の罪

・保管罪は、盗品であると知らずして預かっていた財物が、保管の最中に盗品であると知った場合に、事情を知った後の保管行為につき成立する(最決昭50.6.12)

・運搬罪は、本犯の利益のため、盗品の返還を条件に、被害者から多額の金員を得ようと被害者宅に盗品を運んだ行為についても成立する(最決昭27.7.10)

・有償処分あっせん罪は、あっせん行為をしたなら、たとえ、あっせんに基づく契約が成立しない場合であっても成立する(最判昭26.1.30)

・有償処分あっせん罪は、盗品等の被害者を相手方とする有償処分あっせんについても成立する(最決平14.7.1)

傷害罪

・傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯に当たる(最判昭25.11.9)

建造物侵入罪

・ATM利用客のキャッシュカードの暗証番号を盗撮する目的で、ATMが設置された無人の銀行の出張所に営業中立ち入る行為は、建造物侵入罪に当たる(最決平19.7.2)

・強盗殺人が目的であることを隠し、顧客を装って被害者の店舗に立ち入る行為は、建造物侵入罪に当たる(最判昭23.5.20)

・建造物侵入罪が成立する以上は、たとえ退去しないときであっても、不退去罪は成立しない(最決昭31.8.22)

文書偽造罪

・文書とは、原本のほか、コピー機などによって機械的に作成された写しのことも含む(最判昭51.4.30)

・代理名義や肩書の冒用は、有形偽造に当たる(最決昭45.9.4)

公務執行妨害罪

・執行官が職務として差押物を家屋から運び出す際に、補助者として公務員でない者を指揮して運搬に当たらせていた場合、その補助者が殴打されれば、公務執行妨害罪は成立する(最判昭41.3.24)

・公務執行妨害罪の要件である、公務員への”暴行又は脅迫”というのは、当該公務員の職務執行を妨害できる程度である必要性を要するが、それは当該公務員の職務執行が現実に妨害されたか否かを要するものではない(最判昭33.9.30)

・公務員への暴行は、必ずしも直接的に公務員に対して加えられる必要はなく、たとえ間接暴行であったとしても公務員への暴行には当たる(最判昭37.1.23)

・公務執行妨害罪の要件である、公務員が”適法に職務執行している”という文言における適法性の有無の判断は、行為当時の状況を基準として、裁判所が法令を解釈して客観的に行う(最決昭41.4.14)

犯人蔵匿罪

・親族が他人を教唆して犯人蔵匿などを行わせた場合、親族特例は認められない(大判昭8.10.18)

参考文献

このページをつくるにあたり、大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございました。

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