【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『最後の一葉』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『最後の一葉』のあらすじ
- 考察と感想
- 参考文献
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『最後の一葉』のあらすじ
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:命を懸けて描いた傑作
ワシントン・スクウェア*の西側。
そこには、貧しい芸術家たちが住んでいる町がありました。
若い女性画家であるスーとジョンジーも、いつしか絵が売れる日を夢見て、その町のアパートに住んでいました。
二人は共同のアトリエ*で絵を描いており、好きなことや趣味が同じだったことから、とても気が合う友達でした。
ですが、やがてそんな二人が住む地区に、肺炎*が流行り始めます。
その影響で、何十人もの犠牲者が出てしまいました。
そしてある日、ジョンジーも肺炎にかかってしまったのです。
ジョンジーを診察した医者から、スーは次のことを聞いていました。
「彼女が助かるかどうかは、彼女自身の「生きたい」という気持ちにかかっている」
スーがジョンジーの部屋に入ると、ジョンジーはベッドに横たわっていました。
そんなジョンジーは外を見ながら、「じゅうに、じゅういち、じゅう、く…」と、窓から見える、レンガの壁の前のツタの葉の枚数を数えているのです。
「何を数えているの?」スーは尋ねます。
ジョンジーは静かに答えました。
「最後の一枚が散ったら、私も死ぬの」
「(なんとかジョンジーを救いたい…)」
そう考えたスーは、時間を稼ぐため、ジョンジーと「私が新しい絵を描き終わるまで、目を瞑っているように」と約束をしました。
そしてスーは下の階に住む飲んだくれ*の老人画家ベアマンに、絵のモデルになってくれるよう頼みます。
ベアマンは絵描きとしては失敗続き。四十年もの間、絵が売れることはありませんでした。
スーはそんなベアマンに、ジョンジーの『最後の一葉』の話をします。
しかし、ベアマンは「バカバカしい!」と言って嘲るのでした。
とはいえ、ベアマンはモデルになることは承知してくれました。
その日の夜は、冷たい雨が降り続き、強い風が吹いていました。
次の日の朝、スーはジョンジーの部屋に行き、恐る恐る日よけを開けます。
すると、あれだけ雨と風が強かったのに、なんとツタの葉が一枚だけ散らずに残っていたのです。しっかりと枝にしがみついていたのでした。
それを見たジョンジーは、自分がバカげた考えに囚われていたことに気づきます。
「スー、私はバカだったわ。あそこに残った最後の一葉が教えてくれている。「死にたい」なんて、罪なことなのね」
それから、スーは段々と元気を取り戻していったのでした。
実はその『最後の一葉』は、ベアマンが冷たい雨に打たれながら、レンガの壁に描いた絵だったのです。
ベアマンはジョンジーのため、冷たい雨が降り、強い風が吹く中、レンガに一枚のツタの葉の絵を描いたのでした。
そしてベアマンはその無理によって肺炎にかかり、その後、死んでしまったのでした。
そのことを知ったスーは、ジョンジーに話します。
「ほら、あれはベアマンさんが描いた傑作なのよ」
「最後の一枚の葉が、散った夜に…」
(おわり)
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[用語の説明]
*ワシントン・スクウェア:アメリカのニューヨーク市にある広場
*アトリエ:画家などの芸術家たちが仕事で使う専用の作業場のこと
*肺炎:細菌やウイルスによって肺に炎症が起こること
*飲んだくれ:大酒飲みの人のこと
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作者:オー・ヘンリー
作者:オー・ヘンリー(1862~1910年)
アメリカ出身の小説家。
医者の息子として生まれた後、様々な職業を経験。
銀行のお金を横領した罪で逮捕されたこともあるなど、波乱に満ちた人生を送りました。
短編小説を得意としており、数多くの優れた作品を世に残しています。
本作は1907年に発表されました。
その他の代表作には『賢者の贈り物』や『都会の敗北』など多数。
『最後の一葉』の考察と感想
最後は考察と感想です。
とはいえ、どこまでも自分の考えに過ぎませんので、あくまで一つの参考にしていただければと思います。
意外性の演出
まずこの童話におけるベアマンは、当初、粗暴な人物であるかのように描かれていました。
ですが、個人的にそれはベアマンの本心並びにあらすじの最期に意外性を持たせるため、作者があえてそうしたように思います。
もし元からベアマンが親切で、スーとジョンジーに協力的だったとしたら…この物語はまた違った見え方になり得る気がしますので。
『自己犠牲』が描かれている
また自分はこの童話で描かれていることの一つに、『自己犠牲』があると考えます。
その理由は自分の身を犠牲にしてジョンジーの命を救おうとしたベアマンの存在です。
そのため、この童話が道徳の教科書に載ることがあるのも、そんな自己犠牲の意義を考える教材になり得るからなのかもしれません。
(個人的に命を犠牲にすることは反対ですが)
優しさや思いやりに溢れた作品でした
そして何より、この童話は登場する人たちの深い優しさや思いやりに溢れていました。
悲しいあらすじでもありますが、見た後にどこか温かな気持ちになる作品でした。
『枠物語』の様式が使われている
最後はこの童話には、一部、『枠物語』の様式が使われていたと考察します。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の池田美桜さんは、この『枠物語』を次のように解説して下さっています。
伝聞形式や過去回想形式等を用いることで作品中に一つ以上の物語を埋め込んでいる、入れ子型構造の物語形態をいう。枠小説とも。
(『童話学がわかる』168ページ より)
この童話においては、ベアマンがジョンジーのため、レンガに一枚のツタの葉の絵を描いた場面が、この『枠物語』に当てはまり得ます。
白百合女子大学文学部助教授(当時)の井辻朱美さんは、このような『枠物語』の様式を、次のように解説なされていました。
枠物語とは古くは『千一夜物語』にもさかのぼることのできる、物語の中に物語のある入れ子構造のことであるが、今世紀になってからの枠物語の大半は、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」のように、<ここ>に住む主人公たちが、異世界へいざなわれて冒険をし、<ここ>にもどってくるという形をとるようになった。
(『童話学がわかる』147ページ より)
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童話:『最後の一葉』で描かれていたのは自己犠牲でもあり、生きとし生けるものが持っているであろう優しさや思いやりの心だった気もします。
個人的には、道徳の教科書に載る理由がよくわかりました。