【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『賢者の贈り物』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『賢者の贈り物』のあらすじのネタバレ
- 教訓
- 考察
- 参考文献
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『賢者の贈り物』あらすじ内容のネタバレ[簡単に要約]
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:思いやりの行く末
明日はクリスマスです。
でも、デラにはわずかなお金しかありません。1ドル87セントしかないのです。
これでは、デラの愛する夫のジムに、素敵なプレゼントを買ってあげることができません。
そのことを思うと、デラは涙が止まりませんでした。
「明日はクリスマスなのに…」
まもなくして、ジムが仕事から帰ってきました。
デラはジムを出迎え、抱きしめます。
二人はとても仲の良い夫婦なのです。
デラとジムは、貧しくも、それぞれが素晴らしい宝物を持っていました。
まずデラの宝物は自身の髪の毛です。
膝あたりまで伸びたその褐色*の髪は、宝石も色あせてしまうほどの美しさ。
一方、ジムの宝物は、お父さんから受け継いだ金時計です。
その金時計はたくさんの宝物を持つ王様ですら羨むような、見事な物なのでした。
デラは鏡を見ながら、自分のその美しい髪をまとめ上げ、涙をこぼします。
そこで彼女は自分の髪の毛をバッサリと切って、それを売ったお金で、ジムへのクリスマスプレゼントを買うことを決心しました。
デラは髪の毛を売って20ドルのお金を手にすると、さっそくとても上品なプラチナ*製の時計の鎖を買いました。
ジムがずっと大切にしている、あの金時計によく似合いそうな鎖です。
夜の七時。いつもの時間にジムが帰ってきました。
ジムは髪の毛を切ったデラを見て、何ともいえないような表情をしました。デラはすぐに言います。
「驚かないで。あなたにプレゼントを贈りたくて、自分の髪を売ったの。大事な日にあなたに何も贈れないなんて、どうしても耐えられなかったから…」
それを聞いてもしばらくぼうっとしていたジムは、ポケットから包みを出し、それをデラに渡したうえで次のように言います。
「開けてごらん。それは僕から君へのクリスマスプレゼントだよ。僕が君を見て、戸惑った理由がわかるよ」
デラがその包みを開けると、そこには美しい櫛がありました。
あれはかつて、二人で町に出掛けたときのことです。
デラがショーウィンドーに展示されていたその櫛を、長い間見つめていたのを、ジムは覚えていたのでした。
しかもジムはその櫛を買うために、自分の宝物だった金時計を売ってしまっていたのです。
「君にプレゼントを贈るために、あの時計は売ってしまったんだ…」
デラは目を見開き、泣き出してしまいます。
それでもジムは微笑みながら、デラに優しくこう語りかけます。
「僕たちのクリスマスプレゼントは、今すぐ使うには上等すぎるみたいだ。しばらくしまっておくことにしよう」
二人はお互いが相手のことを思い合い、自分の大切なものを犠牲にして、贈り物をしました。
しかし、それが今すぐ役立つことはありません。
このことは、愚かなことにも思えるかもしれません。
ですが、この二人こそが、『最高で本当の賢者*』であることに、間違いはありません。
(おわり)
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[用語の説明]
*褐色:黒っぽい色をした茶色のこと
*プラチナ:高価な白い金属のことで、『白金』とも呼ばれる
*賢者:キリスト教の『聖書』にも登場する、『優れた賢い人』のこと
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作者:オー・ヘンリー
作者:オー・ヘンリー(1862~1910年)
アメリカ出身の小説家。
医者の息子として生まれた後、様々な職業を経験。
銀行のお金を横領した罪で逮捕されたこともあるなど、波乱に満ちた人生を送りました。
短編小説を得意としており、数多くの優れた作品を世に残しています。
本作は1905年に発表されました。
その他の代表作には『最後の一葉』や『都会の敗北』など多数。
『賢者の贈り物』の教訓
続いては、「この童話から得られる教訓とは何か?」についてです。
とはいえ、自分の考察や解釈、感想に過ぎませんので、あくまで一つの参考にしていただければと思います。
献身の意義深さ
結論からいうと、この童話からは、『献身の意義深さ』が描かれているように思いました。
まず『献身』とは、『自分を犠牲にして相手などに尽くすこと』を意味しますが、この童話に登場するデラとジムは、お互いが相手のことを想い合って行動していました。
デラはジムへのプレゼントのため、自分の髪の毛を切り…ジムはそんなデラのために、自分の宝物だった時計を売ってしまいます。
童話ではその行動が擦れ違いを生んでしまったものの、それでも最後には、二人はより一層の幸せを実感できたかのように描かれていました。
このことは二人の献身が思わぬ形で報われたことで、その意義深さが示唆されていたかのように見えます。
もちろんデラとジムがしたことは、人によっては愚かで無駄なことのように思える方もいるかもしれません。
ですが、少なくともこの童話の作者は、『自分の宝物を失ってでも何かをしようとする優しさ、または思いやりの素晴らしさ』を童話を通じて描きたかったのだろうと思いました。
そしてそんなことができる人こそが、この童話のタイトルでもある”賢者”なのだと伝えたかったのではないでしょうか。
『賢者の贈り物』の考察
最後は考察です。
『枠物語』の様式が使われている
童話:『賢者の贈り物』では、『枠物語』の様式が使われていました。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の池田美桜さんは、この『枠物語』を次のように解説して下さっています。
伝聞形式や過去回想形式等を用いることで作品中に一つ以上の物語を埋め込んでいる、入れ子型構造の物語形態をいう。枠小説とも。
(『童話学がわかる』168ページ より)
この童話においては、かつてデラとジムが二人で町に出掛けたとき、デラがショーウィンドーに展示されていた櫛をじっと見つめていた描写が、過去回想…つまりこの『枠物語』の様式で描かれていました。
そしてあらすじでは、そのことを覚えていたジムが、デラのため、自身の宝物だった金時計を売ることへとつながっています。
つまり『枠物語』の存在が、伏線の役割を担っていました。
白百合女子大学文学部助教授(当時)の井辻朱美さんは、このような『枠物語』の様式を、次のように解説なされています。
枠物語とは古くは『千一夜物語』にもさかのぼることのできる、物語の中に物語のある入れ子構造のことであるが、今世紀になってからの枠物語の大半は、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」のように、<ここ>に住む主人公たちが、異世界へいざなわれて冒険をし、<ここ>にもどってくるという形をとるようになった。
(『童話学がわかる』147ページ より)
『枠物語』とは?代表作品12例からその効果を考察【わかりやすく説明】
『賢者の贈り物』の教訓とあらすじ内容のネタバレ[簡単に要約]のまとめ
童話:『賢者の贈り物』は、深い思いやりを持った二人を巡るあらすじです。
人の優しさや美しさに溢れた作品でした。
道徳の教材にもなり得ると思います。