名作童話:『狼王ロボ』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『狼王ロボ』のあらすじ内容を簡単にご紹介
- 読んだ感想
- 参考文献
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『狼王ロボ』のあらすじ内容を簡単にご紹介【シートン動物記】
あらすじと作者紹介です。
物語:魔物として人々から恐れられたオオカミの王
「オオカミ王ロボ*に千ドルの賞金がかけられた」
この噂はアメリカのニューメキシコ州全土に広まった。
カランポーの谷に住む一族のオオカミが、毎晩のように家畜を荒らしているらしい。
そのオオカミの群れの王は、『ロボ』と呼ばれていた。
オオカミたちはとても賢く、腕自慢の猟師が次々とやってきて退治しようとしたが、ことごとく失敗していた。
私は友人の牧場主からロボ退治の依頼を受け、この土地へやって来た。
灰色オオカミのロボの手下は五頭だけだった。だが、どれも大きく強いオオカミだ。
その中でもロボは大きさも強さも圧倒的だった。
手下の中には白いオオカミが交じっていた。
『ブランカ*』と呼ばれる雌のオオカミだ。ロボの連れ合い*だろうと言われていた。
さっそく私はロボ退治にかかった。
だが、それは後に、百にも上る作戦を実行することになった。
まずはあらゆる毒薬を使ってみたのだが、まったく意味がなかった。
たとえばこうだ。
人間の匂いがつかないように注意したエサを、数カ所に落としておく。
翌朝、エサがなくなっていることに喜びたどっていくものの、最後の地点にエサが積み上げられていた。
まるで私を嘲笑うかのように、糞までかけられていたのだ。
その間もロボたちのやりたい放題だった。
「あいつらは羊の肉などめったに食べないくせに、その群れに襲いかかって、片っ端からかみ殺すんでさあ。先日なんかはいっぺんに二百五十頭の羊がやられちまった。本当に憎たらしい」
次に私は罠を仕掛けていったが、それもロボにみなほじり出されてしまう。
だが、観察した結果、ブランカを捕らえることに成功した。
ブランカは死ぬ最期に長吠え*をした。
すると遠くから答えるように、吠え声が聞こえた。その後も一日中、ロボの遠吠えが聞こえた。
「ブランカ、ブランカ!」
まるでそう呼んでいるかのようだった。
「こんな悲しげなオオカミの声は聞いたことがない」
カウボーイ*たちは言った。
その後の行動から、私はロボが冷静さを欠いていることに気づく。
そこで私はブランカの匂いや足跡も利用して、大量の罠を仕掛けた。
するとロボがとうとう罠にかかった。
ロボは必死に抵抗した。しかし、どうにもならない。
生け捕りにして連れていった。
私は鎖でつながれたロボの前に肉と水を置いた。
しかし、ロボはそれに見向きもせず、ただ遠くの草原を見つめていた。
翌朝、ロボは眠るように死んでいた。
私はロボの鎖を外し、ブランカの死体の隣に並べた。
カウボーイは言った。
「おめえが会いたがっていたブランカだぞ。また、いっしょになれたんだ」
(おわり)
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[用語の説明]
*ロボ:スペイン語で『オオカミ』を意味する
*ブランカ:スペイン語で『白』を意味する
*連れ合い:行動を共にするパートナーのことで、ここでは妻を意味している
*長吠え:犬などが声を長く引いて吠えること
*カウボーイ:牧場で働く人のこと
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作者:アーネスト・シートン
作者:アーネスト・シートン(1860~1946年)
イギリス出身の博物学者であり動物文学者であり、動物画家。作家としても有名。
イギリスの港町:サウスシールズに誕生。
しかし、シートンが6歳のとき、父親が事業に失敗したため、シートンはカナダに移り住んでいます。
その後、一家はオンタリオ州のリンゼイで森と農場に囲まれた開拓者の生活を始めましたが、後にトロントへと移りました。
シートンはリンゼイでの大自然のなかの生活がわすれられず、高校生のとき病気になると、リンゼイの知人の農場に静養に出かけた。
(『学習人物事典』201ページ より)
高校卒業後はオンタリオの美術学校で絵を勉強。
それからはイギリスのロンドンにあるロイヤル・アカデミー美術学校に入学しています。
ですが、ここでもまた病気になり、カナダに戻ることとなりました。
その後、シートンはニューヨークへ行き、挿絵画家となった一方、カナダへも行って動物たちを観察。
動物観察記録をつけたり、詩を創作するなどもしました。
1898年には、シートンはそれまで自身が書き溜めていた動物物語をまとめた『わたしの知る野生動物』を出版。
ベストセラーとなり、その後、次々と動物物語を出版することとなりました。
作品:『シートン動物記』
シートンの動物物語集の総称。
シートンの観察と調査にもとづく物語がほとんどで、動物たちへの愛情にみちあふれている。
(『学習人物事典』201ページ より)
本作:『狼王ロボ』も、この動物の生態を描いた『シートン動物記』の一編であり、シートン自身が体験したオオカミ狩りをもとに書かれた創作物語となっています。
ニューメキシコ州を舞台にした、『わたしの知る野生動物』に収録されている巨大なオオカミの物語『オオカミ王ロボ』や『灰色グマの伝記』などのけっ作がある。
(『学習人物事典』201ページ より)
なお、白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の佐々木 由美子さんは、『動物物語』という言葉の解説のなかで、シートン動物記のことを次のように話されていました。
動物を主人公や題材とした物語の総称である。
人間の言葉を話すか否かによって大きく二つに分類される。
前者は『ピーター・ラビット』(B・ポター)や『たのしい川辺』(K・グレアム)などに代表される。
後者は『シートン動物記』(E・T・シートン)のように動物の生活を中心に展開するものや『ジャングルブック』(R・キプリング)のように人間の成長に焦点を合わせたもの、人間と動物が相互に影響し合う世界を描くものがある。
(『童話学がわかる』165ページ より)
活動:アメリカ=ボーイスカウト団の初代団長
それからはアメリカ合衆国に定住して、年をとってからも森や野山を歩くのが大すきで、インディアンの生活を理想とした。(中略)
そのような生活を子どもたちに教えようとして、かれが始めた運動がアメリカ=ボーイスカウト団のもととなり、50歳のとき、シートンはその初代団長となった。
(『学習人物事典』201ページ より)
『狼王ロボ』への感想
感想です。
動物の物語でありながら、共感できる物語でした
『狼王ロボ』は、狼を中心としたあらすじです。
とはいえ、そこで描かれていた狼の生態は、集団で群れ、自尊心を持ち、愛情を持って行動する姿でした。
その生態は、どこか私たち人間にも通ずる部分があった気がします。
そのため、この動物記は動物の物語でありながら、読んでいて人として共感できる物語でもありました。
個人的には、動物愛護の理解にも一役買いそうな物語であるとも感じました。
『狼王ロボ』あらすじ内容を簡単にご紹介【シートン動物記】まとめ
シートン動物記の一編:『狼王ロボ』は、狼たちの生態はじめ、その知恵深さが印象的に描かれていました。
しかし、そこで繰り広げられていたのは私たち人間にとってもどこか馴染みのある、同じ生き物としての姿だった気がしてなりません。