【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『ハムレット』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『ハムレット』のあらすじ要約
- 作者紹介
- 名言
- 感想と考察
- 参考文献
タッチ⇒移動する目次
シェイクスピア:『ハムレット』のあらすじ内容を簡単に短くわかりやすく
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:悩める青年ハムレットを巡る悲劇
急死した国王に代わって、新たにその座についたのは、その弟のクローディアスでした。
しかもクローディアスは、先代の国王の妻であるガートルードと、すぐに結婚をします。
先代の国王とガートルードの子であったハムレットは、そのことを深く悲しんでいました。
あるときハムレットは、夜の城壁の近くで、父の亡霊と出くわします。
亡霊はハムレットに、「自分を殺したのはクローディアスだ」と語り、その自分の敵を討ってほしいと頼むのでした。
ハムレットはそれに応え、復讐することを誓います。
そこでハムレットはまず、事件の真相を探ろうとしました。
彼は旅の役者たちに、『先代の国王が殺害された場面』を芝居で再現してもらうことにより、クローディアスの反応を見たのです。
するとクローディアスはその劇を見て狼狽*していたため、ハムレットは確信しました。
「クローディアスは国王殺しの犯人だ」
しかし、それでもハムレットは、なかなか復讐を実行することができませんでした。
しかもハムレットは手違いによって、自分の恋人であるオフィーリアの父を殺してしまいます。
さらにそれによってオフィーリアはショックで混乱し、溺れ死んでしまったのでした。
ハムレットのことを邪魔に思っていたクローディアスは、この事件を利用しようと考えました。
まず父と妹を失ったオフィーリアの兄であるレアティーズを、言葉巧みに誘導し、ハムレットを憎むように仕向けたのです。
クローディアスの企みにより、ハムレットはレアティーズと剣の試合をすることになってしまいました。
レアティーズの剣に毒が塗られていることも知らず。
試合に臨んだハムレットでしたが、その試合はとんでもない展開となりました。
まずハムレットは気を抜いた瞬間に、レアティーズに毒の刃で斬りつけられてしまいます。
しかし、ハムレットはその剣を奪って刺し返したことで、レアティーズを殺しました。
さらに試合を見ていた王妃のガートルードも、ハムレット殺害のために用意されていた毒入りの酒を飲み、死んでしまったのでした。
最後にはクローディアスを殺すことにより、復讐を遂げたハムレット。
ですが、ハムレットもまた、毒が全身に回ったことにより、死んでしまうのでした。
(おわり)
ーーーーー
[用語の説明]
*狼狽:慌てふためくこと
ーーーーー
作者:ウィリアム・シェイクスピア
作者:ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616年)
17世紀はじめに活やくした世界演劇史上最大のイギリスの劇作家
(『学習人物事典』206ページ より)
(前略)人間の性格をほりさげてさまざまな人物を創造し、世界の演劇史上に大きな足跡をのこした。
(『学習人物事典』206ページ より)
イギリス出身の劇作家。詩人でもありました。
当初は俳優として活動していましたが、後に劇作家として活躍することになります。
『四大悲劇』の一つとして数えられる本作:『ハムレット』はじめ、『オセロ』、『マクベス』、『リア王』の存在は、世界的傑作として有名です。
なお、そんな本作は1600~1601年頃に発表されたと推定されています。
その他の代表作には『ロミオとジュリエット』や『ヴェニスの商人』、『ジュリアス・シーザー』など多数。
略歴
生い立ち
シェイクスピアは1564年にイングランド中部のストラトフォード・オン・エイボンで生まれています。
父親は裕福な商人で、町長にもなったことがあるといわれている。
母親もゆたかな農家のむすめだったので、シェークスピアは少年時代には、かなりめぐまれた生活をしていたものと思われる。
町のグラマー=スクール(日本の中学校にあたる)に入り、かなりきびしいつめこみ主義の教育を受けたが、13歳のときに父親がなくなったため、くらしが苦しくなり、そのために上の学校に進学することができなくなった。
(『学習人物事典』206ページ より)
18歳となった1582年には、シェイクスピアは年上のアン・ハサウェイと結婚。3人の子供をもうけています。
しかし、やがてシェイクスピアは妻子を故郷に残したまま、ロンドンへと出ていくこととなりました。
成功
ロンドンに出て何をしていたのか、はっきりわかっていないが、1592年には劇作家として活やくしていたという事実が明らかになっているので、おそらく劇場にやとわれて、まず俳優となり、それから劇作家にかわったのだろうと考えられている。
(『学習人物事典』206ページ より)
そしてシェイクスピアはそれ以後のおよそ20年で、37編の戯曲と数編の長詩、1609年には叙情的な名作を集めた『ソネット集*』を書いています。
*ソネット集:ソネット形式の詩を集めたもの。ソネットとは、西洋の詩の形式の一つであり、14行の詩句から成り立っている。イギリスのものは4・4・4・2という行分けになる
作風の変遷
シェークスピアの37編の戯曲がいつ書かれたものか、はっきりしない。
しかし、ふつうには4つの時期に分けて考えられている。
(『学習人物事典』206ページ より)
第1期(1590~1595年)
第1期(1590~1595年)は習作時代で、未熟だが、わかわかしい情熱にあふれ、喜劇・悲劇など、いろいろな分野に手をそめている。
代表作に『リチャード3世*』『ロミオとジュリエット』がある。
(『学習人物事典』206、207ページ より)
*リチャード3世:1593年に初演されたシェイクスピアの悲劇。薔薇戦争の末期、残忍な方法で甥のエドワード5世から王位を奪ったヨーク家のリチャード3世が描かれた作品
第2期(1596~1600年)
第2期(1596~1600年)は『真夏の夜の夢』『ベニスの商人』など、悲劇のけっ作がつぎつぎと生まれ、シェークスピアの人間を見る目がいちだんと深まった時期でもある。
また悲劇『ジュリアス=シーザー』もこの時期の作品である。
(『学習人物事典』207ページ より)
第3期(1601~1609年)
つづく第3期(1601~1609年)は悲劇の時代といわれ、『ハムレット』『オセロ』『リア王』『マクベス』の4大悲劇をはじめ、多くの悲劇を書いているが、このんで悲劇を書き、また喜劇を書いても、初期に見られた明るさや陽気さがすっかりかげをひそめてしまった原因はわかっていない。
(『学習人物事典』207ページ より)
第4期(1610~1611年)
第4期(1610~1611)はロマンス劇*の時代といわれ、晩年のしずかな心境が『冬物語』や『あらし』などの作品によくあらわれている。
(『学習人物事典』207ページ より)
*ロマンス劇:ロマンス物語に取材した戯曲のこと。ロマンス物語とは、様々な出来事の末、ハッピーエンドで終わるような、空想的かつのどかな内容を持ったもの
その他の成功
1594年以後は<内大臣一座>という劇団の座つき作者兼俳優として成功し、1596年には故郷に大きな屋しきを買い入れるほど、経済的にもめぐまれた。
内大臣一座が<グローブ座>という劇場を建設すると、そこをホームグラウンドとして活やく、劇団の幹部となり、グローブ座の株主として、かなりの財産をつくった。
(『学習人物事典』206ページ より)
「シェイクスピアとは何者なのか?」
なお、シェイクスピアの人物像をめぐっては、少なくとも18世紀頃から、とある議論が存在しています。
それは、「シェイクスピアとは一体何者なのか?」といった議論です。
このような議論が存在する理由はいくつもあります。
たとえば、シェイクスピアの人物像を特定する資料が少ないことや、シェイクスピアが平民の生まれだったとは思えないほど、当時の貴族文化が鮮明に反映された作品があることです。
『シェイクスピア=ベーコン説』の真相
そしてそんな疑問への答えとして、なかでも有力視されていた説が、イギリスの哲学者:フランシス・ベーコンとの『シェイクスピア=ベーコン説』でした。
イギリスの哲学者・政治家で、イギリス経験論の祖とされる。
名門の家に生まれ、12歳でケンブリッジ大学のトリニティ=カレッジに入学し、さらにグレイズ=イン法学院に学んで、弁護士の資格をとった。
23歳で国会議員に選ばれ、政治家・弁護士として活動を続け、52歳で司法長官になり、さらに最高の地位である大法官になった。
(『倫理用語集』200ページ ベーコンの生涯と思想 1561~1626 より)
ベーコンはシェイクスピアとほぼ同じ時代を生き、名門の家に生まれた教養のある人物としても知られていました。
よってそのような人物的背景のあるベーコンであれば、貴族文化を作品へと鮮明に反映させることはもちろん、シェイクスピア作品に見られる美しく教養ある戯曲をつくれたことへの説明も十分につくというわけです。
しかし、この説は後に初期の計量文献学*において否定されました。
両者が書いた文体には統計的に有意な違いは見られず、今では両者はまったくの別人であると結論付けられているようです。
*計量文献学:文章中の単語の数や種類、長さなどから、その文章の特徴を理解しようとする研究のこと
有識者たちからのシェイクスピア作品に対する批評
児童文学研究家:金原瑞人さん
児童文学研究家の金原瑞人さんは、シェイクスピア作の文学への社会的評価は、ロマン派の時代になってからより一層高まった傾向にあったことを、以下のようにご指摘されています。
文学的価値観などというものは、すべてがこの「好み」に左右されているわけで、たとえばシェークスピアも十八世紀から十九世紀にかけての古典主義の時代にはかなり不遇であったのが、ロマン派の時代になって一躍注目されるようになったのは有名な話だ。
(『童話学がわかる』144ページ より)
そしてこのような時代の変遷に伴うシェイクスピア作の文学への社会評価の変遷は、金原さんは今後も起こり得ることを次のようにたとえています。
現在こわもてしているシェークスピアも将来、もしかしたら品性下劣で下世話な劇作家として一蹴される時代がこないともかぎらない。
(『童話学がわかる』144ページ より)
『ハムレット』の名言「To be, or not to be, that is the question.」の日本語訳集【3つの解釈】
『ハムレット』といえば、世界的に有名な様々な名言があります。
なかでも作中に登場するハムレットの名言「To be, or not to be, that is the question.」はとても有名です。
とはいえ、この名言を巡っては、現在までに様々な日本語訳が存在しています。
そこでここでは、自分が目にしたさきの名言の日本語訳のなかから、印象に残った3つの訳をご紹介させていただきます。
<1>「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」
一つ目は「生きるか死ぬか…」という、『生か死か』を直接問うているかのような訳です。
自分個人の印象ですが、この訳は今までに最も多く目にしてきたような気がしています。
<2>「生きてとどまるか、消えてなくなるか、それが問題だ」
二つ目はさきの訳と比べると、『死』というフレーズが直接使われていません。
そのため、個人的にはさきの訳よりも万人向けの訳のようにも思います。
事実、この訳は自分が塾講師をしていたとき、とある児童向けの書籍でも使われていました。
<3>「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」
最後はさきほどまでの訳と比べると、より抽象的にも聞こえる気がする訳です。少なくともあらすじの文脈を知らないと、この訳が何を意味しているのかはわかりづらいかと思います。
個人的にはここでご紹介した3つの訳のなかでは最も万人向け、そして最も、言葉の解釈が読者に委ねられている表現な気もしました。
ーーーーー
不思議なもので、同じ言葉でも訳し方一つで、その言葉から受ける感じ方が変わることがあります。
とはいえ、自分としてはどの訳も味があるため、どれが良いかを選ぶのは迷ってしまいそうです。
シェイクスピア的にはどの訳が良いのでしょう。
「それが問題だ!」(言いたかっただけ)
『ハムレット』への感想と考察
最後は自分の感想と考察です。
多くの人の共感を呼んだ?
作中に登場する青年ハムレットは、特段、気高いわけではなく、英雄というわけでもありませんでした。
ですが、だからこそ多くの方が彼に共感することができ、ひいてはそれが作品の人気を高めた理由の一つになったのかもしれません。
長い(…気がした)
また気分を害されたら大変申し訳ないのですが…個人的には、「(ちょっと長い気が…)」と感じてしまったのが正直なところでした。
というのも、このページでご紹介させていただいたあらすじは要約になりますが、本来のあらすじは壮大そのものだからです。
オックスフォード大学で実際に出題された入試問題
とはいえ、本作の長さを指摘した事例は、イギリスの名門:オックスフォード大学の入試問題にもあります。
「『ハムレット』はちょっと長いと思いませんか?まあ、私はそう思いますが。」
実際に出題されたのは面接形式による問題で、次の通りです。
『ハムレット』はちょっと長いと思いませんか?
まあ、私はそう思いますが。
(『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題「あなたは自分を利口だと思いますか?」』232ページ より)
ケンブリッジ大学のジーザス・カレッジ出身でもあるジョン・ファーンドンは、この問題について、次のように話していました。
『ハムレット』は確かに長い。
シェイクスピア作品の中では断トツの長さを誇っている。
セリフは四千行近くもあるが、これは『テンペスト』と『マクベス』の約二倍だ。
ハムレット一人のセリフでも千五百行近くあり、それだけでシェイクスピアの最短の戯曲『間違いの喜劇』と同じくらいの長さだ。
学者たちは版にもよるという(シェイクスピアの戯曲はもともとは「本」の体裁を整えておらず、後世になって複数の版が編纂されたため、編者によってセリフなどが異なり、戯曲の長さもまちまちである)。
(『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題「あなたは自分を利口だと思いますか?」』233ページ より)
もちろんあらすじが長いことは悪いことではありませんし、そもそもこのオックスフォード大学の問題が何を意図して出題されたのかもハッキリとはわかりません。
とはいえ、オックスフォード大学のような名門の入試で取り上げられるということは、本作がそれだけ傑作であることの証拠でもあると自分は思います。
ーーーーー
ちなみにファーンドンはさきの入試問題文と本作について、次のような見解も示していました。
これは一瞬ショッキングなほど低俗な質問にも思われる。
『ハムレット』は古今無類の名作の一つ、まさに世界最高の劇作家による最高傑作であると広く考えられている。
こんなぞんざいな質問をするだけでも失敬だ。
しかし、この質問のおかげで、何世紀にも及ぶ賞賛を剥ぎ取って、一六〇一年頃に初演されたときに客席に座っていたふつうの、後にシェイクスピアが高遠な名声を得ることなど露知らぬ一観客としての目で、あるいは今の新人無名劇作家の作品を見る観客の目で『ハムレット』を見直すことができる。
(『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題「あなたは自分を利口だと思いますか?」』232、233ページ より)
ーーーーー
【シェイクスピア:『ハムレット』】あらすじ内容を簡単に短くわかりやすく【名言とともに】まとめ
シェイクスピアの名作:『ハムレット』は、父の敵を討とうとする青年ハムレットを巡る悲劇が描かれていました。
作中は様々な名ゼリフで彩られており、それもまた作品の魅力の一つであることに間違いありません。
また悩める青年ハムレットの心情には、共感できる方も多いのかもしれません。
参考文献
>>オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題「あなたは自分を利口だと思いますか?」
・Oleg Seletsky, Tiger Huang, William Henderson-Frost「The Shakespeare Authorship Question」