【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
名作:『ガリバー旅行記』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- ガリバー旅行記のあらすじ要約
- 「作者が伝えたいことは何だったのか?」
- 参考文献
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『ガリバー旅行記』の怖いあらすじ内容を簡単にわかりやすく要約
あらすじと作者紹介です。
物語:旅に出た船医:ガリバーの冒険記
小人の国:リリパット
私はイギリスの船医だ。
一六九九年、東インドへの航海中に嵐にあい、一人陸地に辿り着いた。
私は疲れてぐっすりと眠ってしまった。
目を覚まし、起きようとすると体が動かない。
手足も胴も、髪の毛までもが紐で地面に縛り付けられていたのだ。
さらに背が十五センチほどの小人たちに取り囲まれていた。
私は開放され、彼らの国:『リリパット』でもてなされる。
私は攻めてきた隣の小人国の軍艦五十隻を綱にくくって持ち帰り、リリパットを勝利に導く。
だが、敵を奴隷にしようとした王様と意見が対立し、見つけたボートでイギリスへと向かった。
巨人の国:ブロブディンナグ
一七〇三年、嵐で船が漂着*し、私だけ取り残される。
そこは背が十八メートルもある巨人の国だった。
私は見せ物にされた後、王妃に買われる。
そんな私のことを見た王様は驚いていた様子だったが、すぐさま私のことを気に入り、イギリスの政治について問うてきた。
そこで私が大砲の話をすると、王様は次のように言った。
「お前たちのような虫けらが、よくそんな残酷なことを考え、平気でいられるな。そんな発明は人類の敵だ。悪魔の仕業に違いない」
三年目、大ワシに連れ去られ、帰国。
そこではすべてが小さく見えた。
またリリパット国にでも来たかのように。
学者の国:ラピュタ
一六〇六年、私は海賊に襲われ、小船で一人海に流されたが、空飛ぶ島:『ラピュタ*』に助けてもらう。
ラピュタの人々は、いつも考えごとをしているので、正気に戻るための『たたき役』を従えていた。
彼らは数学と音楽以外には関心がなかった。
私は空飛ぶ島の領土の島々をめぐった後、日本のエド、ナガサキ*を経由し、イギリスへと帰った。
『ガリバー旅行記【ラピュタの章】』のあらすじ【空飛ぶ島ラピュータで風刺されていたもの】
馬の国:フゥイナム
一七一〇年、私は海賊によって陸地に置き去りにされた。
そこは馬の国だった。
この国では馬が知性を持ち、主導権を握っていた。
人間は『ヤフー*』と呼ばれ、野蛮で下等な存在だった。
馬の主人に、私が戦争について説明すると、次のように言われた。
「なるほど。乱暴なヤフーに知恵が加われば、そんなひどいことをやりそうだ」
みな親切で美徳を備えているこの種族を、私は尊敬し幸せだった。
だが私は、ヤフーと同一の存在とされ、馬の国から追放される。
私は無人島を目指したが、ポルトガルの船に助けられてしまう。
一七一五年、帰国。
私は今、飼っている二頭の馬と話をする時が、一番の幸せである。
(おわり)
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[用語の説明]
*漂着:ただよい流れて、岸にたどり着くこと
*ラピュタ:想像上の空飛ぶ島。宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』のモデルとなった
*エド、ナガサキ:江戸(現在の東京都)、長崎のこと
*ヤフー:検索サイト『Yahoo!』の語源といわれる
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作者:ジョナサン・スウィフト
作者:ジョナサン・スウィフト(1667~1745年)
イギリス出身の作家。随筆家であり詩人でもありました。
本作:『ガリバー旅行記』は1726年に発表されています。
アイルランドのダブリンに生まれ、乳母と伯父の家で育てられました。
ダブリン大学を卒業後は、政治家:テンプルの秘書となります。
後に古典や歴史などに興味を持ち、政治問題にも深い関心を寄せるようになりました。
その後は一時的に牧師になっていますが、2年ほどでまたテンプルの元に戻っています。
1699年以後は政界と結び付き、イギリス二大政党の一つだったホィッグ党のため、政治論を執筆。
反対党のトーリー党に移ってからは、ダブリンの聖パトリック寺院の首席司祭(僧職)になっています。
作風:『風刺』
スウィフトが残した作品の多くは、人間や社会、政治などが『風刺*』されていることに特徴があります。
*風刺:欠点や罪悪などを遠回しに批判すること
本作:『ガリバー旅行記』でも、当時のイギリスの政治や社会が風刺されていました。
当時の貴族社会や政治悪を書物を通して批判しようとしたスウィフトは、1704年キリスト教会内部の争いを風刺した『桶物語』と、学問の世界を風刺した『書物合戦』を書いて評判になった。
(『学習人物事典』230ページ より)
その他の代表作には『穏健なる提案』など多数。
『ガリバー旅行記』が伝えたいこと【2つの考察】
「作者が『ガリバー旅行記』で伝えたいことは何だったのか?」の考察です。
結論からいうと、大きく分けて2つあります。
物語への理解を深める参考にしていただければと思います。
<1>人間の凶暴さや残酷さ、醜さへの批判や皮肉
まずは『人間の凶暴さや残酷さ、醜さへの批判や皮肉』です。
ガリバー旅行記では、人間が持つであろうとされる負の側面が、風刺という形で痛烈に批判されています。
特に馬の国の話では、そんな人間の醜さが最も強調されていました。
実世界では人間が調教することがある馬に、「人間は野蛮で下等な存在(ヤフー)である」と呼ばれていることは、皮肉以外の何ものでもないでしょう。
しかもガリバー旅行記は実在する生き物がモデルの中心となっているため、架空の生き物はほとんど登場しません。
このことも本作がリアルな世界への直接的な批判、皮肉であることを強調しているかのようにも感じられます。
<2>多様性への理解
とはいえ、ガリバー旅行記は、見方を変えれば『多様性への理解』の物語だとも見えなくはありません。
ガリバー旅行記は全編に渡って人間への批判、皮肉が描かれています。
ですが、その一方で物語に登場する国にはそれぞれの問題があり、そこで暮らす人や生き物たちは、それぞれが異なる価値観を持っていました。
このことは、『性質に類似性はあれど、その性質はそれぞれが異なっている』との意味を持つ『多様性』に通じています。
そのため、「作者はこの物語を通じて多様性を描き、その理解を読者に促したかったのでは?」とのような意図も、もしかしたらあったのではないかとも感じました。
もちろんこのことは自分の個人的な考察…というか妄想に過ぎないかもしれませんが…少なくとも本作は、多様性への理解に思いを馳せる題材にはなり得そうです。
『ガリバー旅行記』の考察
最後も本作:『ガリバー旅行記』にまつわる考察です。
ですが、ここでの情報はさきほどとは違い、作者の意図などは特に考察していません。
『小人』の歴史
まず本作には小人の国:『リリパット』での出来事が描写されていました。
白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の池田美桜さんは、そんな『小人』について、次のように解説して下さっています。
人間に似た姿形をした、矮小な超自然的存在。
伝承文学から創作文学まで世界各国の文芸作品で語られるが、その属性・機能・起源・大きさ等は多種多様である。
とくにヨーロッパの文芸作品に多くみられ、それらは近代以降の日本人の小人像形成に多大な影響を与えているものの、少彦名命や一寸法師など、日本でも古くから独自の小人が語られてきた。
現代の作品では『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる)、『床下の小人たち』(M・ノートン)他。
(『童話学がわかる』163ページ より)
またその他で小人が登場する有名作品には、『白雪姫』や『ニルスのふしぎな旅』などが知られています。
『ガリバー旅行記』の怖いあらすじ内容を簡単にわかりやすく要約「伝えたいこと」まとめ
旅に出た船医:ガリバーが、訪れた国々で不思議な経験をする物語でした。
個人的には物語をどの角度から見るからによって、見え方が大きく変わる作品だとも感じています。
示唆に富んだ名作です。