【『名作』一覧】童話や文学、戯曲など【海外と日本の有名作品集】
童話:『青い鳥』のご紹介です。
あらすじは読み聞かせができるようにまとめています。参考にして下さいませ。
- 『青い鳥』のあらすじ要約
- 「伝えたいこと」の考察と解釈
- 作品にまつわる雑学
- 参考文献
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【『青い鳥』のあらすじを簡単に要約】チルチルとミチルが見つけた本当の幸せ【童話】
まずはあらすじと作者紹介です。
物語:幸せの青い鳥を見つけるため、不思議な世界を冒険する
あるとき、貧しい家庭の兄弟であるチルチルとミチルのもとに、魔法使いのおばあさんがやってきました。
「ここに青い鳥はいないかい?病気の孫を治すために、どうか探してきておくれ」
そう言うと、チルチルに大きなダイヤモンドのついた帽子をかぶせました。
「いいかい。ダイヤを回すと、物の本当の姿が見えるよ。ほら!」
すると、犬や猫や光、水、火、パン、砂糖など、家中の物の中から、精霊たちが出てきました。
チルチルとミチルは鳥かごを持って、精霊たちと青い鳥を探す旅に出ました。
最初に訪れたのは『思い出の国』です。
そこには、死んだはずのおじいさんとおばあさん、妹と弟たちがいました。
二人はそこで青い鳥を見つけましたが、その国を出ると、すぐに黒くなってしまいました。
『夜の宮殿』、『森』、『墓地』と二人の旅は続きます。
ですが、青い鳥は見つかりません。
『幸せの花園』では、二人は色々な幸せと出会いました。
『何も知らない幸せ』や『お腹が空かないのに食べる幸せ』、『太りすぎの幸せ』
そして、『あなたのおうちの幸せ』です。
「僕のおうちにも幸せがあるの?」とチルチルは驚きました。
「ええ、たくさんいますよ。あなたが見ようとしないだけで、健康な幸せや綺麗な空気の幸せ、冬の火の幸せ…他にもたくさん」
そして、お母さんの魂である、『子供を愛する幸せ』にも出会いました。
最後に訪れたのは、『未来の国』です。
宮殿の中は、この世のものとは思えない青い色に輝き、そこには生まれる前の子供たちがいっぱいいました。
でも、青い鳥は見つかりません。
「もうお別れです。私たち精霊は、沈黙に帰らなければなりません」と光が言います。
「いやだ!ずっと一緒にいて!!」とチルチルとミチルは言います。
すると光は、「私は、月の光にも、ランプの光にも、あなたの明るい思いつきの中にも、どこにでもいます。あなたに話しかけていますよ」とやさしくキスをしました。
「二人とも!もう起きなさい!」
突然、お母さんの声が聞こえます。
二人が目を覚ますと、そこはおうちでした。
でも、不思議と前よりキラキラと輝いて見えます。
チルチルが、ふと鳥かごを見ると、なんとそこには青い鳥がいました。
「なんだ…僕たち、ずいぶん遠くまで探しに行ったけど…青い鳥は、ここにいたんだね」
チルチルは大切なことに気づきました。
(おわり)
作者:モーリス・メーテルリンク
作者:モーリス・メーテルリンク(1862~1949)
ベルギー出身の詩人であり劇作家。
1908年に発表された本作:『青い鳥』は、世界的に有名な作品となりました。
同年にはモスクワ芸術座で初演もされています。
なお、メーテルリンク自身はそんな本作:『青い鳥』のことを、「夢幻的であるが、けっして幻想的ではない」と評していたようです。
作者はこの作品について「夢幻的であるが、けっして幻想的ではない」といっている。
(『学習人物事典』467ページ より)
メーテルリンクはベルギー西部のガン*で生まれた後、サント=バルブ高等中学で宗教教育を受けました。
*ガン(Ghent)は『ヘント』、または『ゲント』とも呼ばれている
その後、ガン大学に進学。
父親が弁護士だったこともあり、メーテルリンクは大学では法律を勉強していました。
将来は家業を継ぐつもりだったようです。
しかし、24歳のときにメーテルリンクは大学を辞め、パリへ出ます。
パリでの経験は、メーテルリンクの作風に大きな影響をもたらしたとされています。
作風:象徴的演劇の第一人者
パリに出て、象徴主義詩人たちと交際して大きなえいきょうを受けた。
最初の詩集『温室』にそれがよくあらわれている。
この詩集と同じ主題を戯曲にうつして『マレーヌ姫』を発表し、これが出世作となった。
(『学習人物事典』467ページ より)
その後『ちん入者』『ペレアスとメリザンド』『モンナ=バンナ』『青い鳥』などの戯曲をつぎつぎに発表し、象徴的演劇の第1人者になった。
(『学習人物事典』467ページ より)
評価:『ノーベル文学賞』を受賞
1911年には『ノーベル文学賞』を受賞しました。
人物:神秘思想への高い関心
(前略)夢見がちな少年だったかれは、このころからスウェーデンボルグらの神秘思想にひかれ、死について深い関心をもつようになった。
(『学習人物事典』467ページ より)
少年時代からの神秘的傾向はますます深くなり、エマソンなどの思想家から多くのえいきょうを受けた。
こうして、人間がもつ内部生命を知ることを学んだかれは、その内部生命と万物がかよいあうと確信して、それを日常生活に実現することを理想とした。
このような思想の遍歴を『貧者の宝』『英知と運命』でつづった。
(『学習人物事典』467ページ より)
『青い鳥』が伝えたいことは何だったのか?【2つの考察と解釈】
では、「この童話:『青い鳥』の作者であるメーテルリンクは、本作を通じて一体何を伝えたかったのでしょう?」
参考文献を元に、そのことを考察しました。
結論は2つです。
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注:ここからの情報は自分独自の考察や解釈も含まれます。
あくまで一つの参考にして下さいませ。
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<1>『本当の幸せは身近なところにある』
まず一つ目は、本作:『青い鳥』の作者:メーテルリンクは、『本当の幸せとは、遠くではなく、ごく身近なところにある』ということを伝えたかったのではないか…との考察です。
理由を順にお伝えさせていただきます。
青い鳥の正体とは『幸福』
まず前提として、この物語における青い鳥の正体とは、『幸福』でした。
チルチルとミチルというおさない兄弟が、幸福の象徴である青い鳥を求めて、過去の国、夜の国、未来の国とめぐり歩くが、どうしても手に入れられない。
しかし、じつはその青い鳥は自分のいちばん身近なところにいたのだという物語を一夜の夢のなかでくりひろげたもの。
(『学習人物事典』467ページ より)
チルチルとミチルが幸福の青い鳥を求めて旅にでるメーテルリンク(M.Maeterlinck 1862~1949)の小説。
(『倫理用語集』21ページ 青い鳥 より)
そして本作の最後ではそんな幸福(≒青い鳥)が、遠いどこかではなく、身近なところで見出されて幕を閉じています。
チルチルが幸福の正体を目の前の青い鳥に重ねる描写がそれです。
そのため、以上のことが、本作では『本当の幸せ(≒青い鳥)とは、遠くではなく、ごく身近なところにある』ということが描かれていた…と考察できる理由です。
<2>『幸せには様々な形がある』
とはいえ、それと同時に本作では、『幸せには様々な形がある』ということも示唆されていた…とも自分は考察します。
なぜなら、本作ではチルチルとミチルが旅した先々で、様々な幸せの形が描かれていたからです。以下がその例の一部になります。
- あなたのおうちの幸せ
- 健康な幸せ
- 綺麗な空気の幸せ
- 子供を愛する幸せ
よって以上の<1>、<2>をまとめると、自分は本作には、次のようなメッセージが込められていたと考察します。
本当の幸せとは、誰にとっても身近なところにありながらも、その答えは一つではない
だから、幸せは誰かに押しつけられるものではないし、尊重されることが大切
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白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の阿久津斎木さんは、本作の世界観を、『ユートピア(Utopia)』の一つであると考察なされています。
Utopia=どこにもない国。
ありえないからこそ、人が求めてやまない理想郷となる。(中略)
また幸福を求めてさまざまな国を旅する、夢幻的な戯曲『青い鳥』(M・メーテルリンク)もここにあげたい。
(『童話学がわかる』167ページ より)
もちろん現実には、誰にとっても幸せな世界を実現することは、とても難しいことだと思います。無理に等しいかもしれません。
ですが、少なくとも本作で描かれていた国々の人たちは、たしかにそれぞれがそれぞれの幸せを見出していました。
そして、もしそんな世界が現実に存在するとしたら、それは阿久津さんの言うように、ユートピア(理想郷)といえるのかもしれません。
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『青い鳥』にまつわる雑学
続いては本作:『青い鳥』にまつわる雑学的な情報です。
『青い鳥症候群』の由来になった
『青い鳥症候群』とは、『「今よりもっと良いものがあるはずだ…!」などと根拠のない幸せ(つまり青い鳥)を追い求め続ける心理』を表す言葉です。
チルチルとミチルが幸福の青い鳥を求めて旅にでるメーテルリンク(M.Maeterlinck 1862~1949)の小説。
ここから、どこかにもっと自分にふさわしい仕事や人生があるはずだと思い込み、職業を転々とかえる青年を「青い鳥症候群」と呼ぶ。
(『倫理用語集』21ページ 青い鳥 より)
一種の心理現象に近いですが、本作の『青い鳥』は、この言葉の由来となっています。
【心理現象一覧】面白い有名な心理現象の名前と意味大全【心理学を大学で勉強した自分が徹底調査】
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なお、上記でご紹介させていただいた『倫理用語集』のなかでは、この『青い鳥症候群』の具体例が次のように解説されていました。
高校→大学→会社という受験勉強のレールの上を、明確な目的をもたないままに歩んできた青年にみられることが多い。
(『倫理用語集』21ページ 青い鳥 より)
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チルチルが兄でミチルが妹
また作中に登場するチルチルとミチルは兄弟ですが、チルチルが兄でミチルが妹になります。これも補足までに。
『青い鳥』を考察して得た周辺情報
最後は本作:『青い鳥』を考察して自分が知り得た周辺情報です。
今回の考察にまつわる内容ではあるものの、冗長になるのを避けるため、最後に補足として残させていただくことにしました。これも参考までに。
『ユートピア』とはそもそも何か?
さきの考察では、『ユートピア』という言葉が登場しました。
この言葉は元々、イギリスの政治家:トマス・モアが使いだしたといわれています。
ユートピアという言葉は、モアが最初に用い、ギリシア語のウー(無)とトポス(場所)に由来し、どこにもない理想の国という意味である。
(『倫理用語集』190ページ ユートピア より)
モアは『ユートピア』という名の次のような本を書き、当時のイギリス社会を批判したことで知られています。
私有財産制度のない平等な理想社会を描いたトマス=モアの主著。
(『倫理用語集』190ページ ユートピア より)
ユートピア文学は非現実的か?
では、「ユートピア文学は理想主義的なのでしょうか?」
まず『ユートピア文学』の定義が定かではありませんが、白百合女子大学大学院児童文学専攻(当時)の阿久津斎木さんは、本作もこれにあてはまるとしています。
そのことも踏まえた阿久津さんの考察は以下の通りです。
理想主義的で現実性に乏しいのは、ユートピア文学の宿命かも知れない。
また幸福を求めてさまざまな国を旅する、夢幻的な戯曲「青い鳥」(M・メーテルリンク)もここにあげたい。
(『童話学がわかる』167ページ より)
上記の内容は、明確に本作のことを指しているわけではありませんし、断言されているわけでもありません。
とはいえ、ユートピア文学が現実性に乏しいことを示唆しています。
一方、本作の作者:メーテルリンクは、作者紹介のところでもご紹介させていただいた通り、本作のことを、『夢幻*的であるが、決して幻想的ではない』と評していたとのことです。
作者はこの作品について「夢幻的であるが、けっして幻想的ではない」といっている。
(『学習人物事典』467ページ より)
*夢幻:儚いことのたとえ
【『青い鳥』のあらすじを簡単に要約】伝えたいことの考察【チルチルとミチルの幸せの童話】まとめ
童話:『青い鳥』は、幸せについて考えさせられる物語でした。
純粋に物語そのものに魅力がある作品であることはもちろんですが、幸福の価値観などを再考する教材にもなり得そうです。
そのことからも子供だけでなく、大人にとっても価値ある名作です。